ここから本文です

焦点:世界の債券市場、変わる「潮目」 変動増幅の懸念も

ロイター 9月15日(木)18時35分配信

[東京 15日 ロイター] - 世界の国債市場が、不安定化している。日米欧の金融政策が転換点を迎えているのと見方が台頭。短期筋だけでなく、長期投資家も、これまでの長期金利低下が止まり、反転するのではないかと「潮目」の変化を感じ取り始めている。

リーマン・ショック以降、形成されてきた膨大なロングポジションが、市場流動性の低下する中で巻き戻されれば、売りを吸収できず、価格変動が増幅するとの懸念が広がっている。

<フラットニングに到達感か>

米10年国債利回り<US10YT=RR>は13日、一時1.7520%と3カ月ぶりの高水準に達した。過去1週間で23ベーシスポイント(bp)の急上昇だ。主因は投機筋によるフラットニングポジションの巻き戻しと、スティープニングの仕掛け売りとみられている。

「どこの債券市場でも、金融政策をテコにしたカーブ・フラットニングに到達感が出始めている」と、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主席研究員の廉了氏はみる。

長期金利がこれ以上は下がらないという受け止め方が広がった場合、グローバルな債券市場の流動性低下や、債券取引におけるシステム売買の浸透で、長期金利の上昇テンポに加速感が出てくる可能性があるという。

米連邦準備理事会(FRB)は2回目の利上げを模索、欧州中央銀行(ECB)は財政政策の重要性を強調し始めている。日銀はイールドカーブのスティープニングを検討しているとの見方が市場では多い。中央銀行が認めない金融緩和の「限界」を市場は見始めている。

米資産運用会社・ダブルライン・キャピタル<DBLTX.O>を率いる著名投資家ジェフリー・ガンドラック氏は、13日の講演で「私がこれまで35年運用の世界にいて学んだのは、マーケットに『絶対』はない、ということ。『金利は永遠に低いままで絶対上がらない』などと言われるが、それはつまり、金利上昇が現実に起きつつあると考えるべきなのだ」と話した。

<日本発のスティープ化圧力>

日本勢の外債売り越しも目立ち始めている。財務省によると、本邦勢は9月10日までの2週間に外国中長期債を1兆9341億円売り越した。

売り越しの背景は、トレーディングベースの益出しやロスカットに加え、ドル調達コストの上昇で、対外証券投資の採算性が悪化したことがある。ポジション圧縮に着手したこともあるが、一部の参加者は日本国債市場でカーブ・スティープ二ングが進んでいることも一因と指摘している。

また、日本国債の利回り曲線スティープ化の影響は、米株市場に波及しかねないとの声もある。SMBC日興証券・為替・外債ストラテジストの野地慎氏は、FRBが20─21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送ったとしても、日本発のベア・スティープニング圧力が米長期金利上昇を誘発。それが米国株安を促す可能性が残ると指摘する。

通貨スワップで有利に円資金を調達ができる海外勢は、マイナス金利の日本国債にも多額の投資をしてきた。

財務省によれば、海外勢による中長期債投資は、日銀が量的・質的緩和(QQE)政策を導入した2013年4月以降、累計で18兆円に達している。「こうしたポジションはいつでも売れるもので、(日本国債のベア・スティープニングの)トリガーになる可能性がある」と、三菱UFJR&Cの廉氏はみている。

<債券市場の「体力」低下>

一方、中央銀行による非伝統的金融緩和や金融規制の影響で、世界的に債券市場は流動性が低下している。債券市場が、これまでの買いモードから、売りモードに転換した場合、市場が極端な価格変動を伴わず、スムーズに売りを受け止める体力があるのか疑問視する声が市場参加者の間では聞かれる。

国債の市場流動性を測る指標として使われる回転率(売買高/発行残高)の低下は、特に米国債で顕著だ。リーマン・ショック前に250―260%で推移していたが、リーマン・ショックで110%台に急落、足元では80%台まで下がっている。

米国債の回転率低下の背景には、リーマンショック以降、経済対策のため財政支出が拡大し、分母にあたる国債発行残高が膨張。

その一方で、金融規制の厳格化でブローカーのポジションが急激に圧縮されたことなどで、分子の売買高が伸び悩んだことがある。

主要米銀では、流動性不足が国債価格を乱高下させ、市場の耐久力を脆弱にするため、何らかのイベントが発生した場合、危機的な状況を招くとの懸念が強まっている。

一方、日本では円債市場の流動性が低下するなかで、ファンダメンタルズからは説明困難な長期金利のマイナス圏突入が生じた。

このため市場がカーブ・スティープニングの方向で動きを始めた場合、「ファンダメンタルズで説明可能な範囲で利回り上昇が止まる保証はないと言える」(大手機関投資家ファンドマネージャー)と、この先の市場動向に神経をとがらせる参加者が増加中だ。

(森佳子 編集:伊賀大記)

最終更新:9月15日(木)23時2分

ロイター