ここから本文です

視覚障害男性転落死1カ月 進まぬホームドア設置

産経新聞 9月15日(木)7時55分配信

 ■パラリンピックに向け「声かけ」でおもてなし

 東京メトロ銀座線の青山一丁目駅(東京都港区)で視覚障害者の会社員、品田直人さん(55)=世田谷区=がホームから転落死した事故から15日で1カ月。国土交通省は鉄道業者らとともに再発防止策の検討を進めるが、「万全の解決策」とも言われるホームドア設置の歩みは遅い。障害者団体は「東京パラリンピック開催時には、来日する障害者を“声かけ”でおもてなしできる国になろう」と呼びかけている。

 悲惨な事故は、月曜日の帰宅ラッシュ時に起きた。品田さんは盲導犬、ワッフルとともに、幅約2・9メートルのホームを移動。徐々に線路側に寄って行き転落した後、列車にひかれ、“欄干のない橋”と呼ばれるホームの犠牲になった。

 「ホームドアさえあれば助かったはず」。事故後に現場を視察した東京視覚障害者協会の役員、山城完治さん(60)は唇をかんだ。東京メトロでホームドアがあるのは、全179駅中85駅だ。

 国交省は8月26日、鉄道業者らと対策検討会議を開催。東京メトロが「ホームドアの早期設置」を表明するなど対策強化を誓った。

 国交省によると、1日に10万人以上が利用する全国251駅のうち、ホームドアが設置されているのは3割にとどまっている。「1駅当たり数億~十数億円」というコストと乗り入れ線の列車規格の違いが、大きなハードルだ。

 6日には、JR東日本がドア部分が広く低コストな新型ホームドアを横浜線町田駅に試験導入すると発表するなど前向きな動きもみられる。国と自治体が3分の1ずつ設置費用を補助する制度もあり、国交省は予算を増額する方針だ。

 一方、日本盲人会連合のアンケートでは、視覚障害者が必要と考える防止策(複数回答)は「ホームドアの設置」が90%と最も多いが、「周囲の人の声かけ」を望む意見も63%に上った。同連合が8月20日に出した声明ではハード面のほか、駅監視員の配置や乗客の声かけ啓発も求めた。

 「東京パラリンピックでは選手や観客など多くの障害者が来日する。障害者や高齢者に遠慮なく声をかけるおもてなしをできるようになれば」と話すのは、同連合の藤井貢組織部長(63)。事故後、健常者からの声かけは10倍ほど増えたといい、日本が「障害者に温かい国」として世界に記憶されることが東京パラリンピックのレガシー(遺産)となる可能性を示唆した。

最終更新:9月15日(木)8時11分

産経新聞