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<金融庁新指標>地銀本業 6割赤字予測 25年3月期

毎日新聞 9月15日(木)21時41分配信

 金融庁は15日、地方銀行などが企業にどれだけ役立っているかを評価する新指標(ベンチマーク)を公表した。金融庁は、2025年3月期には6割の地銀が本業の融資などで赤字に陥ると試算。新指標を活用して起業支援や事業再生などの取り組みを促し、地域経済の活性化に貢献し、収益基盤も安定した金融機関の育成を目指す。

 新指標は、経営が改善した取引先企業の数▽創業に関与した件数▽担保ではなく事業内容をみて融資した件数--など全金融機関共通の5項目と、経営方針などに即して選択できる50項目で構成。地銀、信用組合、信用金庫に16年3月期から毎年、自己評価してもらい、結果を自主的に開示させ、企業が融資姿勢を確認して取引先を選ぶ材料にする。金融庁は金融機関と評価結果を議論し、経営手法の改善などにつなげる。

 新指標を策定したのは、金融機関の収益モデルを改善し、地域経済の活性化につなげるためだ。人口が減る地方では、コストである預金が減るペースより、利益になる貸し出しが減るペースが速く、収益が低下する。金融庁は同日公表の金融リポートで、融資や手数料収入など顧客向けサービスが赤字に陥る地銀の比率が25年3月期には6割となり、15年3月期の4割から拡大すると試算した。

 旧来型の担保依存の融資では、資産は無いが技術やアイデアを持つ経営者の起業を支援しにくい。事業内容や成長性を考慮した融資姿勢への転換が求められているが、金融庁が企業を対象に行ったヒアリング調査では、担保依存からの脱却は遅れている。金融庁は、金融サービスの質を高めて地域経済の活性化を図る。

 ◇主なベンチマークと狙い

■取引先企業の経営指標など

 融資先のうち、経営指標が改善した件数や融資額をもとに、取引先の成長にどこまで役立ったかをチェック

■融資条件を変更した中小企業の経営改善状況

 経営不振に陥った地域企業の事業再生にどれだけ貢献しているか

■創業に関与した件数

 地域の経済活性化や雇用増につながる起業に貢献しているか

■事業内容などを評価して融資した取引先の件数や融資額

 担保依存の融資姿勢から転換しているか

 ◇「金融処分庁」から、「金融育成庁」への転換をアピール

 金融庁は新指標の作成を通じ、厳しい検査や処分で不良債権処理を進めた「金融処分庁」から、成長につながる融資を促す「金融育成庁」への転換をアピールする。地方経済の縮小が予想される中、地銀などのビジネスモデルを見直し、雇用の受け皿となる企業の育成につなげたい考えだ。

 金融行政は模索が続く。不良債権問題への対応が問われた1990年代後半以降は、融資先を厳しくチェックして金融ビジネスのルールをただすことを最優先した。その後は景気の底割れ回避に向けて中小企業金融を重視する局面もあり、いま問われるのは「経済や企業の持続的成長という究極的な目標」(森信親長官)に対応したビジネスモデルに地域金融機関を誘導することだ。業界再編による規模拡大の動きも一服する中、新指標の運用を通じて融資手法など経営の質を高める方向に軸足を置く。

 ただ、金融機関には「指標を使って経営に干渉しないか」という懸念も根強い。金融庁幹部は「指標は法律やルールではない。自主的な考えで経営改善を進めてほしい」と説明するが、「実際の融資現場は、金融庁の理想より複雑」(九州地方の銀行)との声も漏れる。金融機関も事業の目利きができる人材の育成などを進めているが、企業などから見ればその動きは緩慢だ。新指標に基づく官民対話がこうした流れを加速できるかが問われる。【松倉佑輔、小原擁、宮崎泰宏】

最終更新:9月16日(金)0時59分

毎日新聞