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タクシー運賃引き下げ、運転手は戦々恐々 「初乗り410円」実験から1カ月

SankeiBiz 9月15日(木)7時23分配信

 国際的にも高いとされる東京のタクシー初乗り運賃について、距離を短縮して料金を引き下げる都内での実証実験が15日終了する。8月上旬の実験開始から1カ月余り。利用者には好評で、国土交通省は早ければ年内にも初乗り400円台のタクシーを認可する見通しだ。ただ「もうけが減るのでは」と、料金収入に応じて給料が増減するタクシー運転手には疑心暗鬼が広がっており、新料金の定着に向けた課題も見えてきた。

 8月上旬、JR新橋駅からタクシーで新橋演舞場に向かった80代の女性がメーターを確認すると、料金は「570円」。従来の初乗り運賃730円より160円も安かった。女性は「年を取るとタクシーばかりだから安くて助かります」と顔をほころばせた。

 女性が利用したのは、国交省が実証実験を行っている「初乗り410円」タクシー。15日まで都内の数カ所で実施する。現行で「2キロ730円」に設定されている東京地区(東京23区と武蔵野市、三鷹市)の初乗り運賃を「1059メートルまで410円」とし、以降は237メートルごとに80円が加算される。

 実証実験のきっかけは地区内の保有車両台数が8割を超えるタクシー会社が、4月から7月にかけて初乗り運賃を短くして料金を引き下げる内容の申請を相次いで行ったため。実証実験の運賃設定も申請内容が加味された。タクシー会社が初乗り運賃引き下げに前向きな背景には、業界の厳しい市場環境がある。

 2008年のリーマン・ショック以降にタクシー需要は低迷。航空や鉄道などの旅客市場が回復基調にある一方、タクシーの14年度の国内輸送人数は05年度比で3割近く減少した。業界は4年後の東京五輪に向け、「世界水準のサービス」を売り文句に訪日客需要を取り込む考えで、初乗り運賃引き下げは戦略の一環だ。

 実証実験の開始から1カ月が経過した段階では、利用者からは「また利用したい」との声が多く寄せられているという。実証実験に参加するタクシー大手の日本交通が実施したアンケートでは、利用者の3分の2近くが「タクシーの利用機会が増えそう」と回答した。

 ただ、これまでも近距離の利用客が少なくない中、初乗り運賃の引き下げで思惑通り利用者が増加し、最終的に収益増へつながるかは見通せないままだ。

 特に実入りに直結する運転手は戦々恐々という。大手タクシー会社役員は「運転手に引き下げを話したとき『それはないんじゃないですか?』が最初の反応」と打ち明ける。都内で営業する運転手の一人は「実質的に歩合制のドライバーには痛手。料金を変えるなら給与体系も見直してほしい」と漏らす。

 国交省は今後、実証実験の結果を踏まえながら審査を進め、年内にも初乗り400円台のタクシーが認められる方向だ。国交省幹部は「運転手が短距離の利用者でも気持ちよく乗せることができ、利用者が嫌な顔をされないかどうか。それが新料金が成功する鍵を握っている」と指摘、企業と運転手が“一枚岩”になることを求めている。(佐久間修志)

最終更新:9月15日(木)7時23分

SankeiBiz