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加藤紘一氏合同葬 山崎拓氏が明かした秘話「9条が日本の平和を守っているんだよ」

産経新聞 9月15日(木)15時57分配信

 9日に77歳で死去した加藤紘一元自民党幹事長の自民党・加藤家の合同葬が15日、東京・南青山の青山葬儀所で執り行われ、かつて加藤氏と「YKKトリオ」を結成した山崎拓元党副総裁が弔辞を読み上げた。弔辞の要旨は以下の通り。

 9月10日夕刻、君の訃報に接し、正直、覚悟はしていたものの、ついにその日が来たかと深い悲しみに襲われました。一昨年6月、ミャンマーの旅から帰国後、病床にあると聞いて、いくたびかお見舞いに行こうと試みましたが、面会謝絶とのことで果たせず焦燥の思いでした。

 とりわけ僕はこの2年ほど前から講談社からの勧めで「YKK秘録」の出版を思い立っておりましたので、その記述の内容について主役である君の了解を得る必要があり、その機会がなかなか得られず困却しておりました。結局、もう一人の主役である小泉純一郎君をはじめ、拙著の登場人物のどなたにも了解を得る礼を欠いたままの出版となってしましました。この機会に改めてお許しを請います。

 僕はこの本の中で、僭越ながら「YKK時代」を勝手に称しましたが、「YKK」というネーミング自体が君の発案であり、今の政界には見られないような躍動感のあるYKK時代というものがあったとすれば、それは全て君の書いた脚本を君自身が演出したものであります。僕など脇役の一人としてひたすら追随しただけであります。

 若手政治家約90名を集結させたグループ新世紀の結成や小選挙区制度導入反対など、YKKの連帯による政治行動はときの政治にダイナミズムを与え、いやが上にも国民の政治に対する興味と関心を惹起したことは間違いありません。まさに君の政治的レガシーの一つであると思います。

 君と僕は1972年12月10日投票の第33回総選挙で初当選した36名の仲間とともに同期の桜です。君とは年齢が近いこともあってすぐに仲良くなりました。君は東大法学部卒業、外交官試験に合格した、たぐいまれなる秀才です。一方の僕は、早稲田大学で柔道三昧の学生生活を送った、文字通りの体育会系出身でした。われわれ2人の結びつきは材質の異なった合板のように、かえって強靱な友情が生まれたのかもしれません。僕が3歳年長でしたが、僕は君に兄事しました。君は僕より常に先行しました。内閣官房副長官、防衛庁長官、自民党政調会長、自民党幹事長。全て先輩として手ほどきしてくれました。

 僕が中曽根(康弘)内閣の官房副長官を拝命したときです。君は僕に対して「総理大臣随行の外遊の際には、主要国首脳会談後の同行記者団に対するブリーフィングの役割は、決して外務官僚に任せてはいけない。党人派の副長官はえてして面倒くさがって自分でやろうとしないが、君は自分でやらないといけない。少しやばいと思うかもしれないが、大事なことが国民に伝わらないおそれがあるし、君の政治家としての訓練にならないよ」とアドバイスされました。

 僕は君のように語学が達者でないので自信がありませんでしたが、当時まだ48歳なのに補聴器まで買って、その役割を全うできるように努めましたよ。君の語学力は抜群で、英語力のみならず、中国で北京大学の学生に1時間にわたり北京語で講演したと聞きました。その事実も含めて、君が日中友好の同心に努めた功績は誠に大きいと確信しております。

 2年前、君がミャンマーに旅発つ直前に天ぷらそばを食べましたね。そのとき、僕はずっと懐疑的に思っていたことを思い切ってききました。それは「君は本当に憲法9条改正に反対か」という問いでした。君は「うん」と答えました。「一言一句もか」と、またききました。「そうだよ。9条が日本の平和を守っているんだよ」と断言しました。振り返ってみると、これは君の僕に対する遺言でした。まさに日本の政界最強最高のリベラルがこの世を去ったという思いです。

 最後に、いわゆる加藤の乱については「あれは一度も止めなかった僕が悪かった。すまん」と言うほかはありません。少し長くなりましたが、しかし少しも言い尽くしていません。わが国に健全保守勢力を築く君の後進が育つことを祈りつつ、かつ、まな娘・鮎子代議士が大成されることを期待してお別れの言葉といたします。

 親愛なるコウちゃん、いずれ近い将来、君のいるところに行くことになります。また酒を酌み交わし、君が得意な歌を存分に聴かせてください。さようなら。

最終更新:9月15日(木)16時2分

産経新聞

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