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働く者たちの“オアシス” 健さんも歩いた「角打ち」通りに行った

qBiz 西日本新聞経済電子版 9月15日(木)11時15分配信

 おでんのダイコン50円、レンコンの串揚げも50円。値段は昭和から据え置き。かつて銀幕スター高倉健さん(享年83)も歩いたJR折尾駅(北九州市八幡西区)そばの堀川沿いの通りには、30ほどの角打ちや小料理屋が並ぶ。「鉄都」として栄えた街だけあって、労働者の疲れを癒やす酒場がちらほら。ここもその一角だ。そんな“オアシス”を、4人の経営者が歩いた。一息入れたい思いに労使は関係ない。ここでの肩書はみんな左党である。

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■マツコも「残したい」酒店

 平日の午後4時半。折尾駅東口に、中小企業の社長たちが集まった。いずれも本拠は福岡市。同じ経営者団体のメンバーだ。

 当然、飲み屋の看板はまだどこも明かりがついていない。取材と称して同行したものの、真っ昼間から飲みに行くと思うと、やはり後ろめたい。

 通りを下校する高校生が行き交う。約600メートル離れた東筑高校の生徒たち。健さんの後輩である。隣町(福岡県中間市)出身の健さんは、駅を利用し、川沿いのこの通りを歩いて通学した。

 案内役は4人の社長のうち、コールセンターを経営する島田昭規さん(52)。自宅が近く「ここの魅力を伝えたい」と今回のツアーを企画した。

 最初に向かったのは、有名な「高橋酒店」。最近、マツコデラックスのテレビ番組で「新3大・後世に残したい角打ち酒屋」と紹介され、注目度がアップした。

 実は、健さんも来店したらしい。4代目店主の高橋匡一(まさかず)さん(49)によると、父真一さん(84)が東筑高で健さんの後輩。健さんは高校卒業後のある日、店でジュースを飲んで帰ったことがあるという。

■時間軸が“あいまい”な店

 コンクリート作りの外観は一見、普通の酒屋。しかし、一歩中に入ると、時間軸があいまいになる。

 1918(大正7)年創業。壁に掲げた木製の看板は、横書きで「ルービ ヒサア」と赤い字で書いてある。右から読めば、「アサヒ ビール」。横書きを右から記した戦前に、タイムスリップしたかのようだ。

 隣には色あせたポスターが。うつろな瞳でワイングラスを持つ若々しいジュリー(沢田研二さん)だ。その“美貌”は、高度成長期の歌謡ショーの世界へ誘う。棚には、「製鉄所」と書かれた大きなとっくりまであった。

 夜勤明けの製鉄マンが朝から飲みに来ていた名残で、店は午前9時から開く。

 ここで、異変に気付いた。壁の時計の針だ。午後5時を回っていた。

 ん?ここは駅から300メートルほど。集合した午後4時半からは、まだ10分ほどしかたっていないのに…。

 店内には角打ちを楽しむ6~7人の常連客。そのなかでも年配の男性客が教えてくれた。

 「ここはな、時間が20分進んどるったい(進んでいる)」

 首の後ろまで真っ赤だ。日ごろは「工場で働いとる(ている)」というが、この日は「休み」。「俺ら、いっつも深酒で遅くなるけ(から)、早めに家に帰ってね、ちゅー(という)店の気配りたい(です)」と説く。酔っぱらうと時計の針が進んでいることを忘れるらしい。

 われわれは軒先のテーブルに鎮座し、冷ややっこ(100円)や焼き鳥(150円)をつまみにラガービールで乾杯した。飲み物は、店の冷蔵庫から取り出すセルフサービス。代金はその都度払う。1時間ほど飲み、代金は割り勘で1人600円だった。

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最終更新:9月15日(木)11時15分

qBiz 西日本新聞経済電子版