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日本電産の買収阻止?  ルネサストップに就いた因縁の人物とは

ニュースソクラ 9月15日(木)12時0分配信

米半導体企業買収した呉社長

 経営状態が常に話題になってきたルネサスエレクトロニクスが米半導体製造のインターシルを買収すると発表し、市場に驚きがひろがった。買収対象とみられてきたルネサスが買収する側に回ったからだ。だが、半導体国内最大手のルネサスをめぐっては、水面下での戦いがまだまだ続いている。

 ルネサスによる買収価格は32億1900万ドル(3219億円)で、インターシルは全株買い上げにより完全子会社化される。2017年6月を目処に買収は完了する予定だ。
 
 ルネサスは日本最大手の半導体メーカー。主に車載半導体に力を入れている。今回の買収は電気自動車(EV)や自動運転システムなどで需要が増える同分野のさらなる強化を目指したものだ。買収先のインターシルの車載半導体事業は成長著しい。現在、わずか13%にとどまっている同事業の売上高に対する占有率は将来的には20%を超えると言われている。またドイツ銀行によると、インターシルの省エネ技術をルネサスの半導体に導入すれば、これまで以上に電気自動車のバッテリー消費を抑えられるという。

 ルネサスでは今年6月に呉文精(くれ・ぶんせい)氏(60)が社長兼CEOに就任した。呉氏は東京大学法学部卒で日本興業銀行(現みずほ銀行)出身。米ゼネラル・エレクトリック(GE)系の金融子会社社長、日産の中核子会社であるカルソニックカンセイ社長を歴任している。2008年にカルソニックカンセイ社長に就任してからは「プロ経営者」と評され、手腕を発揮してきた。現在、同社が過去最高利益を更新し続けているのも「その道筋は呉氏がつけたといって過言ではない」と同社幹部は語る。

 その後、日本電産の創業者である永守重信氏の後継者として迎えられ、経営者としてのキャリアを積み上げるはずだった。しかし、呉氏はわずか2年余りで日本電産を去ることになる。「けんか別れではない。新しい世界で成功してもらいたい。」永守会長兼社長はこのように語り見送った。

 東洋経済によると、呉氏は事業本部長として関わっていた家電産業事業の収益性改善に苦しんだようだ。「ひととおり事業を理解して、現場が限界近くまで頑張っていることがわかってしまうと、それ以上、無理を言えないタイプだった。自分の思っていた経営がなかなかできないことと課せられた数字責任の間で板挟みになっていたように見えた」と日本電産グループの関係者は語る。この結果、結果至上主義の永守氏の期待に応えられず、2015年9月に日本電産を去ることとなった。

 日本電産の永守氏というと「1日16時間労働」「元旦の午前中を除き365日働く」などの言葉が表すように業界きっての辣腕社長である。1973年、28歳の時にわずか4人で日本電産を立ち上げ、現在は従業員数世界15万人の一大企業に育て上げた人物。71歳となった現在も「モーレツ経営者」として知られている。永守氏はここ6年で15の企業と事業を傘下に収め、「爆買い」「買収王」とも呼ばれている。会社規模でも2015年にグループ全体の売上高が1兆円を突破し、ニュースソクラのインタビューで「2030年に10兆円の売上高を目指す」と語っている。これまで買収は海外の企業が中心であったが、今年に入ってルネサス買収に乗り出し「諦めない。ほしい企業は必ず買う」と買収を公言していた。

 呉氏が日本電産を去って9か月後、同氏はルネサスのトップとして経営者に返り咲いた。ルネサスの買収を目指す永守氏とかつての後継者候補で現ルネサス社長の呉氏。呉氏の人事は、ルネサスの最大株主の産業革新機構の会長で、自動車メーカー出身の志賀会長が主導したとみられる。経済産業省や自動車メーカーは日本電産が自動運転の鍵となる半導体を握ることに警戒感を抱いている。因縁の相手をルネサスのトップに据えることで、勢いを増す日本電産に釘を刺す狙いもあるかもしれない。

 この買収によってルネサスの株価は値上がりを見せ、前日比13円高(+2.16%)の616円で取引を終えた。かつての部下の動きによって、日本電産のルネサス買収の動きは封じられたのか、活発化するのか。これからが見ものだ。

ニュースソクラ編集部

最終更新:9月15日(木)12時0分

ニュースソクラ