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熊本地震5カ月 石垣崩落 修復めど立たないが・・・ 念願のミカン出荷へ 熊本市西区

日本農業新聞 9/15(木) 7:00配信

 復興への歩みは止めない――。温州ミカンの生産量が九州一を誇る熊本県が、熊本地震に負けず今年も出荷シーズンを迎えた。熊本市では地震と豪雨で園地の石垣が崩壊、被害を受けた園地は2000カ所を超えた。いまだ修復が進まない園地もあるが、産地は20日の初せりに向け、最後の仕上げに余念がない。地震発生から5カ月を迎えた14日、産地は「がんばるけん熊本」を合言葉にブランドミカンの再起を誓う。

 収獲を間近に控えた園地で、極早生ミカン「肥のあかり」がうっすら黄色に染まってきた。「何とかやっと、ここまできた」。熊本市西区河内町面木地区で温州ミカン1.5ヘクタールを栽培する田尻道人さん(78)が5カ月間をこう振り返った。いまだに余震が続く中、妻の節子さん(77)と最後の仕上げ摘果をする。

 4月16日の最大震度6強の本震に、梅雨の豪雨が重なって田尻さんの園地を支える石垣17カ所が崩落。被害が最も激しい所では3メートルほど積み上げた石垣が崩れ、隣の農家の園地まで土砂が流れ込んだ。

 修復費用は膨大だ。国や市からの補助金を活用しても1カ所修復するのに300万円掛かる。費用を工面する見通しが立たない中、再び大雨が降れば二次災害の危険性も潜んでいる。

 それでも「ミカンをやめられん」(田尻さん)のは2年前に戻ってきた息子に、継いでほしいというかすかな望みがあるからだ。「ミカン産地を衰退させたくない。若手のためにも、農業をどぎゃんかせんとね」と歯を食いしばる。

 400人の部会員を束ねるJA熊本市柑橘(かんきつ)部会青年部長の片山博文さん(45)も「地震の中でも、植物は成長している。人間が落ち込んでばかりはいられない」と前を向く。片山さんの園地も、地震後の豪雨で土砂崩れが起きた。

 背中を追いかけてきた父親を6年前に亡くし「肩を並べられるように必死でやってきた。地震があっても、何があってもミカンを守っていく」覚悟だ。「今年は梅雨が早く切り上がり、乾燥していたため、こくがある。食べてもらうのが一番の励みになる」と片山さん。

 今シーズンは青年部として首都圏に出向き、販促にも参加する。

1300店で販促強化

 熊本市は、県内の温州ミカン生産量の半分を占める。市によると9月現在、被災農家は399戸、石垣が崩壊した園地は市内で2154カ所、被害面積は約2ヘクタールに上る。

 16日から集荷が始まり、20日には東京や大阪各市場で初せりがある。JA熊本果実連によると出荷量は例年並みの3万6200トンを計画。県産ミカン販促に向け、試食宣伝を昨年より100店舗多い1300店舗で実施、復興に力を入れる。

 JA熊本市河内支店の岡本久博支店長は「農家の苦労をずっと見てきた。丹精したミカンを全国に届けたい」と意気込む。(木原涼子)

日本農業新聞

最終更新:9/15(木) 7:00

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