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ハッキング集団「ShadowBrokers」と沈黙のNSA (6) メディア越しに激突するアメリカとロシア

THE ZERO/ONE 9月15日(木)12時22分配信

最後に、ロシアと米国が現在どのような動きを見せているのか見てみよう。Shadow Brokersの事件発生から半月ほどが経過した9月1日、プーチン大統領は改めて「DNC(米民主党委員会)のハッキング事件」への関与を否定する発言を行った。

彼のコメントについて説明する前に、まずはDNCのハッキング事件に関するアップデートをしたい。事件の概要については以前にも記したが、あれから2ヵ月の間に、いくつかの新しい展開が見られたからだ。

その後の「DNCハッキング」

今年6月、DNCのサーバーが外部からの侵入を受けたとき、DNCと当局者たちは「ロシア政府による諜報活動」と断定した。その翌日、GUCCIFER 2.0を名乗るハッカーが「これは私が単独で行った犯行である」との声明を発表し、盗んだファイルの一部を提示した。このときGUCCIFER 2.0は、「すでに主要な数千点のファイルやメールはWikileaksに提供している。彼らは近いうちに公開するだろう」とも記していた。

その翌月の7月22日。WikiLeaksは、DNCのサーバーから漏洩したと思わしき約2万通のメールと8000以上の添付ファイルを、「Hillary Leaks」シリーズの一部としてオンラインで公開した。

ここで公開されたデータは、「米民主党の中心人物7人」の受信ボックスから得たものだとWikiLeaksは説明している。特に面白いのは、彼らがバーニー・サンダースを潰してヒラリー・クリントンを推すための策を練っていたことを示す数々のメールだろう。それらの内容は、かなり過激だ。たとえば同委員会の最高財務責任者ブラッド・マーシャルが送った「No shit(そんなことは分かってんだよ)」という表題のメールには、次のような記述がある。

「ケンタッキー州とウエストバージニア州で、『あなたの信仰は?』と彼に質問してもらえるよう、誰かに頼めないだろうか」

「彼は無神論者だろう。彼が無神論者であることが判明すれば、少しは違った結果になりそうだ。南部バプテスト協議会のメンバーが多い私の票田の人々は、『ユダヤ人』と『無神論者』の間に明確な境界線を引くだろう」

無神論者のユダヤ人、という大統領候補者は極めて珍しい。ここに記された「彼」がサンダースのことを指しているのは明らかだ。そして驚いたことに、このメールの送り先となった3人には、DNC委員長のデビー・ワッサーマン・シュルツも含まれていた。

サンダースの熱心な支持者たちは元々ヒラリーを毛嫌いする傾向が強く、サンダースが敗北宣言をしたあとも「トランプかヒラリー、どちらかのタカ派に投票せよとは何たる地獄か」と嘆く声は多かった。そのような状況で、「民主党が最初からサンダースを潰そうとしていた情報」の暴露は、さらなるヒラリー離れを誘発する恐れがある。厳しい非難に晒されたシュルツ委員長は、WikiLeaksがデータを公開してからわずか2日後の7月24日に辞任を表明した。それは民主党全国大会の開幕前夜というタイミングでもあった。

このように、DNCのハッキング事件は「民主党のスキャンダル」の話題に発展し、大統領選に混乱をもたらした。そしてヒラリーとの不仲が知られるWikiLeaksのアサンジは、ハッキング事件で盗まれた情報を活用し、ますますヒラリーに不利な情報を流している。

一方の米国当局は、再びロシアの非難を開始していた。シュルツが辞任を表明した翌日の7月25日、FBIは「どのようにしてDNCのサーバーが侵害されたのか」の調査を続けると共に、「この侵害は、ロシアがトランプに利益をもたらすための事件か否か」についても捜査していると語った。つまりFBIは、DNCのハッキングが「プーチンと犬猿の仲のヒラリーより、プーチンに友好的なトランプを米国大統領にすることを望んで行われた侵害ではないか」という、より具体的な動機も視野に入れた捜査を始めていた。

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最終更新:9月15日(木)12時22分

THE ZERO/ONE