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社説[やんばる国立公園]保全と活用の両立図れ

沖縄タイムス 9月15日(木)7時35分配信

 国頭、大宜味、東の3村にまたがる「やんばる国立公園」が15日、全国33番目の国立公園として正式に指定される。生物多様性に富むやんばるの森は、沖縄が世界に誇る宝である。国立公園指定を地元3村とともに喜びたい。

 国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がり、世界でここにしか生息しないヤンバルクイナやノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなど4500種を超えるといわれる貴重な動植物が息づく。

 それだけではない。波の浸食でできた石灰岩の崖やマングローブもこの地域の自然の多様性を示すものだ。

 面積は陸域1万3622ヘクタールに海域3670ヘクタール。県内では西表石垣、慶良間諸島以来の国立公園である。

 やんばる国立公園はユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界自然遺産登録に向けたステップであり、自然保護強化策の一環でもある。

 環境省はやんばると西表島、奄美大島と徳之島の4地域を「奄美・琉球」として、早ければ2018年の世界自然遺産登録を目指している。やんばる国立公園のうち脊(せき)梁(りょう)部を中心に陸域の特別保護地区と第1種特別地域の計5217ヘクタールを推薦したい考えだ。

 「亜熱帯の森やんばる-多様な生命(いのち)育む山と人々の営み」がやんばる国立公園のテーマである。これからもわかるように、世界自然遺産に推薦したいエリアと、林業や農業を営む住民の生活圏が近接しているのが特徴だ。従来通り規制を受けずに林業などができるかはっきりせず、自然保護と住民の持続的な活用のバランスをどうとるかが課題である。

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 国立公園化を契機に、知名度が全国区となり、豊かな自然の中で癒やしを求めて多くの観光客がやんばるの森を訪れる可能性がある。

 自然保護と同時に適正な利用を推進することも国立公園の大切な要素だ。自然に包まれて生物多様性を体全体で実感する。エコツーリズムの醍(だい)醐(ご)味(み)である。このためには、資質の高いガイドが求められる。地元の人を優先して育成すれば地域振興にもつながり、一石二鳥である。

 山や川、森ごとにルートづくりと具体的なルールを決めることも重要だ。環境に与える影響を最小限にとどめるよう利用者数を制限することも考慮に入れていい。

 3自治体と県、NPO、国は協力して独自のルールづくりを急ぐべきだ。

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 世界自然遺産登録に向けて懸念されるのは隣接する米軍北部訓練場の存在である。オスプレイの爆音のみならず、離着陸時の排ガスや下降気流、低周波音が動植物に与える影響が心配される。

 遺産登録の手続きでは国際自然保護連合(IUCN)の現地視察がある。IUCNはこれまでジュゴンやノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全を求める勧告を日米両政府に出している。

 国立公園の面積が狭すぎると環境団体は指摘する。やんばるの貴重な動植物を一体的に守るためには北部訓練場を全面返還させ、世界自然遺産登録を目指すべきだ。

最終更新:9月15日(木)7時35分

沖縄タイムス