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シンガポール沖に動かない船 乗組員も足止め 経営難で差し押さえられ

BBC News 9月15日(木)16時6分配信

アンドレアス・イルマー記者

韓国の裁判所に法定管理(会社更生法に相当)を先月申請した同国最大の海運会社、韓進海運が保有する船舶60隻余りが世界中の海上で足止めされている。仮差押えと入港拒否で身動きが取れなくなっているためだ。

そのうちの一隻、「韓進ローマ号」の船長と乗組員に取材した。

シンガポール近くを航行する数えきれないほどの数の船に紛れて、その巨大なコンテナ船はあった。同じような船と同様、小型ボートでは近づいても船上に誰かがいる気配は感じられない。

我々は韓進ローマ号に乗船して、どんな状況なのか取材しようとした。結果はノー、乗船許可は得られなかった。ただ、無線で乗組員と話はでき、連絡方法を手に入れた。

それ以来、船長のムン・クオンドーさん(36)とここ2日間、フェイスブックを使ってやりとりしている。ムンさんには、航海中ならあるような急ぎの業務がないため、メッセージを読んだり送ったりする時間はたっぷりある。ムンさんは、彼自身や乗組員たち、そして彼が「年取った貴婦人」と呼ぶ韓進ローマ号のことについて語ってくれた。

読者が私と同じならば、現代の貨物船の船長なるものがどんな見た目をしているのか、知らないだろう。なので、以下にムンさんがブリッジ内で撮影したセルフィーをお見せしよう。

韓進ローマ号がシンガポールに到着したのは先月19日。船上の誰もがいつも通りの入港になると思っており、航海が突然中断されるとは予想もしていなかった。

ここまで数カ月の航海はいつもと変わりなかった。南米からの通常の航路を終え、中東を目指す予定だった。シンガポールには一時的に寄港するだけのはずだった。燃料を補給し、生活物資を補充し、多少の貨物も引き受けるかもしれない――いつも通りだ。

彼らは会社が負債54億ドル(約5520億円)を抱え法定管理を申請していたと知らなかった。

「夜の9時20分ごろ、弁護士が海上保安官と一緒に船に乗り込んできた」とムン船長はその夜を振り返る。船は止められ、お金を少しでも取り戻したい債権者に差し押さえられてしまった。

「誰も事前に連絡してくれなかった」と話しながら、ムン船長は高ぶる感情を抑えるのに苦労していた。何が起きているのか全く教えてもらえなかったのだ。

ムン船長は船を停留させ待つよう指示された。それから2週間たったが、船がどうなるのか、また自分たちがどうなるのか、船長や乗組員たちが得ることができた情報はあまりない。

ムン船長は友人が持ってきてくれたシンガポールのSIMカードを使い、スマートフォンで外の世界と連絡を取ることができる。それが詮索好きなBBC記者であれ、友人であれ、同僚であれ、故郷の家族であっても。

ムン船長を気遣う妻と娘は韓国の釜山に住んでおり、連絡が来るのを心待ちにしている。

韓国のお彼岸「秋夕」で3日間の連休が始まる14日は特別な日だ。多くの人はその日に家族や親戚と過ごすとムン船長が教えてくれた。先祖を供養する宗教的に大切な日でもある。

ムン船長には重篤な状態にある高齢の祖母がいるそうで、秋夕に会えないのを船長は残念がった。

ムン船長は帰国許可と船長の交代を申請しているが、見通しは明るくない。船長はフェイスブックに、「足止めされた韓進ローマ号に乗りたい人は誰もいない」とのコメントに、悲しそうな顔の絵文字を付け加えた。

シンガポールのBBCオフィスからは、東岸沖に停泊する船の群れがはっきり見える。その中のひとつで、ムン船長はスマートフォンの画面に文字を打ち込んでいる。私たちがメッセージをやり取りしていると、シンガポールでよくある激しい雨が降り出した。「強い雨が好きなんです」、船長が海の向こうからネットを通じて笑顔を送ってくる。

もちろん、ムン船長だけが家や家族を恋しく思っているのではない。韓進ローマ号には24人の乗組員がいる。11人は韓国人、13人はインドネシア人だ。

21世紀の船員とはどんな見た目なのか、写真を送ってほしいと頼んだ。下の写真を見れば、メッセージを伝えるにはどうすればいいか船員たちがよく心得ていると分かるだろう。

(英語記事 The strange story of a seized Hanjin ship and its lonely crew)

(c) BBC News

最終更新:9月15日(木)16時6分

BBC News

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。