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<映画>ハイヒール革命!主演の真境名さん「なんでも白黒つけたがりすぎ」 性同一性障害ポップに描く

毎日新聞 9月16日(金)11時29分配信

 ◇型破りなドキュメンタリー 濱田龍臣さんが思春期演じる

 サンタさんにお願いしたいのは、セーラームーンのおもちゃだった--。男性として生まれ、女性として生きる真境名(まじきな)ナツキさんを描いた映画「ハイヒール革命!」が17日、東京都渋谷区のヒューマントラストシネマ渋谷など全国で順次公開される。真境名さんのドキュメンタリー部分と、俳優の濱田龍臣さんが思春期の真境名さんを演じるドラマ部分が交錯する異色作だ。性別に違和感を覚えながら、家族や友人に支えられて乗り越えてきた真境名さんに話を聞いた。【中嶋真希】

【真境名さんからメッセージ】

 --なぜ、ドキュメンタリーを撮ることに?

 真境名さん プロデューサーの益田祐美子さんと、映画にも出てくる彼が知り合いで、一緒にごはんを食べたのがきっかけ。会ったその日に「彼女、ニューハーフなの? 映画にしたらおもしろそうね」って。飲みの席のお世辞でしょと、「本当ですね、映画になったらすごいです」って軽く流していたのに、2回目にお会いした時に「で、映画のことなんだけど」って、もう具体的な話が動き出しているの。「うっそー」って。こんなご縁あるんですね。

 --今年7月まで10カ月間、ニューハーフのアイドルグループにも入っていました。

 真境名さん 六本木のバーで働いていたころの同僚が地下アイドルをやっていて、「おもしろい人を探してるから、良かったら入ってくれない?」って。その時、ちょうど彼と同居して主婦みたいな生活をしていたし、楽しそうだなって。あんたの頼みなら聞くわよって、それがきっかけ。

 アイドルにあこがれはあったけど、自分がやるなんて思ったこともなかった。映画をきっかけに、8月から芸能事務所に所属することになって、やっぱりこれも縁よね。

 ◇映画に出て、つらい過去が消化された

 --映画では、お母さんが真境名さんを「女の子」と認めてくれて、一緒に戦う姿が印象的でした。

 真境名さん 母は早い段階で認めてくれて、友達も受け入れてくれて、中学では3年から女子の制服を着て、高校には女子として通って……。苦労していないと思われがち。映画を見ても、私って、自由に生きている感じが取れますよね。私自身も奔放に生きてきたつもり。だけど、それでもつらいことはたくさんありました。

 でも、そういうつらい出来事も、この映画を撮ってもらったことによって消化できたと思います。あのままだったら、永遠に腐っていくのを見ていくしかなかったのかなって。でも、映画になったことで、その思いがちゃんと土に還っていった気がする。

 --お母さんが認めてくれたのは運が良かったからなのか、自分自身の努力によるものなのか。どちらだと思いますか。

 真境名さん 家族から認めてもらえなくて、周囲ともうまく接することができないという話を聞くと、私は恵まれていたとは思います。母は認めてくれて、兄も戸惑いながらも受け入れてくれた。こんなふうに映画にもなった。母のおかげで今があると思います。

 --親が認めてくれないという人は、どうすればいいのでしょうか。

 真境名さん すごく突き放した言い方になってしまうけど、ほかの人の悩みはわからない。「性同一性障害」「ニューハーフ」って十把一からげに思われているけど、それぞれにいろんな考え方、生き方がある。それって、「女性」をひとくくりにできないのと同じ。だから、説教臭くアドバイスなんてできないなって。

 でも、もしアドバイスするとすれば、卑屈に考えるんじゃなくて、こういうふうに生まれたことに意味があるんだと思える強さを持つことが大事だと思います。幕が上がっちゃったら、演じるしかないでしょ。

 --映画を見ると、男でも女でも、どっちでもいいじゃないかと思えてきます。

 真境名さん だって、13人に1人はLGBTだっていう統計(電通ダイバーシティ・ラボの2015年調査)があるらしいですよ。みんな、言ってないだけ。昔は、ゲイだったり、レズビアンだったりする人が、なんで結婚しないのって押しつけられて、世間体を守るために結婚していたんじゃないかなって思います。

 --性的少数派に当てはまらなくても、男っぽい女性、女性よりの男性もいます。

 真境名さん そう! みんな、なんでも白黒つけたがるでしょ。明らかに白、明らかに黒なんて、少ない。「セクシュアルマイノリティー」って言葉がある時点で、根本には差別があるんだなって思っちゃう。そういう言葉がない時代が来たらいいのに。

 ◇私の役が濱田君でいいのかしら

 --濱田龍臣さんが、真境名さんがだんだん女の子になっていく転換期を自然に演じていました。

 真境名さん かわいいですよねえ。私の役が濱田君でいいのかしら?

 --どことなく似ていました。

 真境名さん え、本当ですか?それ、監督やスタッフさんにも言われて……。そんなこと言って濱田君のファンに怒られないかしら。

 --真境名さんと濱田さんが、作品の中で共鳴していました。

 真境名さん 初めて会った時、彼は子供のころから大作に出演して度胸はあるけど、根はすごく繊細なタイプという印象を受けた。少ししか話していないのに、私という人間をあそこまで捉えてくれていた。先生に怒られて「チッ」って顔をするのとかね、本当に、私だなって。でも、「似てる」なんて言い過ぎだわあ。

 --パステル色の映像など、ドキュメンタリー映画とは思えないほどポップに仕上がっていました。

 真境名さん ドキュメンタリーって暗くなりがちだから、ポップな感じでできたらいいよねって監督とお話をして、こういう形になりました。監督が、「何色が好き?」って聞くから、「私はピンクが好き」って。そうしたら、衣装が「ピンク縛り」になっちゃった。ピンクの小物は好きでも、ピンクのお洋服ってほとんど持ってなかった。やだ、どうしようって、あわてて買いに行ったりしました。

 元々は、すべてドラマにしようという構想もあったみたい。でも、私を演じてもらうのって難しいことだと思うし、私のことは私にしかわからない。「私が出てしゃべるほうが、説得力がある」って伝えたら、ドキュメンタリーになりました。でも、全部濱田君がやったほうが良かったわって思われちゃったりして。

 --最後に、これから見てくれる人にメッセージを。

 真境名さん 同じ悩みを抱えている方はもちろんのこと、そうじゃない方にも、勇気を持って、つらいことに立ち向かってもらえたらいいなって思います。そんなすごいメッセージ性を持ってるわけじゃないけど、映画を見て、そういうふうに言ってくださる方が多いんです。人生の「革命」って、誰にでも起こりうること。映画を見て、それぞれの革命を見つけてもらえたらいいなって思います。

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 ◇真境名(まじきな)ナツキさん

 1987年8月26日、東京都生まれ。本作で映画デビュー。男性の体で生まれながら、心は女性という「性同一性障害」を抱えながらも家族の理解を得ながら成長する。しかし、社会の常識との違和感は拭えず、中学生時代に起こした「革命」がメディアでも紹介され話題に。2016年映画「ハイヒール革命!」で主役として映画デビュー。現在は女優・タレントとして活動。

最終更新:9月16日(金)16時17分

毎日新聞