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フォルクスワーゲン「ゴルフ GTI クラブスポーツ ストリート エディション」

Impress Watch 9月16日(金)0時0分配信

■トラック エディションとストリート エディションの違い

 最初に結論だが、GTI クラブスポーツを名乗る2モデル「トラック エディション」「ストリート エディション」の乗り味は大きく違っていた。先般、本誌でレポートしたトラック エディションから一転し、ストリート エディションは街中での走行フィーリングの向上はもとより、長時間の高速走行でも十分納得のいく仕上がりになっていた。

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 とはいえ、一見すると姿形からボディカラーに至るまで一緒だから「ホントなの?」と思われるのは無理もない。トラック エディションはニュルブルクリンクで記録を打ち立てた「GTI クラブスポーツ S」に準じた前輪駆動モデルで全国限定400台の特別仕様車。一方のストリート エディション(350台限定)はその名のとおりストリート、つまり一般公道での乗りやすさを向上させたモデルという位置づけだ。

 さて、そうなると気になるのが両モデルの違いだが、公式にアナウンスされた走行性能を左右する装備の変更点は以下の2点。

①19インチ→18インチへとインチダウン化されたタイヤ
②レカロ製スポーツシートから通常のGTIに準じたスポーツシート(表皮はストリート エディション専用)へと形状変更されたフロントシート

 このように活字で表現すればたったこれだけなのだが、この2点は、①路面との接点/②身体との接点というように、体感レベルを大きく左右する要因で、とりわけ乗り味に関しては大きな影響を及ぼすパーツだ。よって、2つの変更だけで両モデルの違いはディーラーでちょっと試乗しただけでもハッキリと体感できるまでに! 以下、具体的に紹介したい。

 まずは①について。こちらは前述したとおりホイール&タイヤサイズが違っていて、225/35 R19サイズのピレリ「P ZERO」から、ストリート エディションでは225/40 R18サイズのブリヂストン「ポテンザ S001」に変更された。サイズの上では偏平率を上げたストリート エディションがタイヤのエアボリュームが増えている分、乗り心地はマイルドになる傾向にあるものの、どちらもメーカーを代表するハイパフォーマンスタイヤであり、世界の名だたるスポーツモデルが純正装着を行なっているだけに基本的な性能は互角。

 筆者は以前、「P ZERO コルサ」を愛車に装着していたが、P ZEROはそこから公道でのパフォーマンスを向上させたモデルで、ハイパワーSUVなどへの装着も考慮されている。そのため、ピレリ同士で比較すればP ZEROの方がトレッド面のあたりは若干ながら滑らかだ。対してポテンザS001はどうか。キャラクターとしてはフェラーリ「458 イタリア」などに純正装着されるなど、ポテンザシリーズ切ってのドライ&ウェット性能を両立させているが、一方でブリヂストンのプレミアムラグジュアリーラインである「REGNO」シリーズに採用されている「サイレントACブロック」構造を用いることで、ダンピング性能を向上させている。すなわち「ハイグリップでマイルド」、これがポテンザ S001の特徴だ。

 次に②について。上半身をしっかりと包み込み、下半身の無駄な動きを抑制するレカロ製スポーツシートから、ストリート エディションではGTIと同形状のシートに変更された。しかし、単に“GTIシート”になっただけでなく、シート表皮をアルカンターラ&ファブリックとすることでGTIから表皮の摩擦係数を向上させ、身体との密着度を強めるなど独自性も図られている。確かにレカロ製スポーツシートのクローズドコースにおける抜群のホールド性は魅力だ。しかし、トラック エディションのインプレッションで述べたように路面が荒れた公道では上下動の減衰がもの足りなかった。

 結果、「乗り味のうち上下動は終始激しく、視線を1点に集中させることには気を遣った」(原文ママ)という表現になったのだが、これにはもう少し説明が必要で、実はレカロ製スポーツシートの場合はスポーツ走行に必要な路面情報(例:グリップ感やアンジュレーションの有無)をしっかりと身体へと伝えるべく採用されていた。つまり、荒れた路面で身体が感じた“激しい上下動”は理にかなっていたともいえる。

■乗り味は大きく異なる!

 さて、ここまできて走行性能に大きな影響を与える①と②の結果からストリート エディションの立ち位置がお分かりいただけたと思う。そこで改めて、パワーユニットの解説と大きく変わった乗り味について具体的に見ていきたい。

 トラック エディションから搭載エンジン&トランスミッションに変更はなく、最高出力195kW(265PS)/5350-6600rpm、最大トルク350Nm(35.7kgm)/1700-5300rpmを発生する直列4気筒2.0リッター直噴ターボエンジンと6速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)の組み合わせ。トラック エディションの飛び道具であるブースト機能もストリート エディションに受け継がれている。

 おさらいだが、ブースト機能とは①3~6速の間で走行していて、②ドライビングプロファイル機能で「スポーツモード」、もしくはDSGのシフトモードを「S」側に入れている状態で、アクセルペダルを目一杯踏み込みキックダウンさせた際、約10秒間にわたって290PS/380Nmへと25PS/30Nmパワーアップするという専用装備。ブースト機能はその名が示すとおり、最大過給圧を一定条件下で上昇させる機構であるため、主にアクセルの全開領域で体感できる機能だが、たとえば都市道路における本線への合流シーンなどでは使用可能条件と重なりやすく、その意味では単なるスペックを飾る装備ではない。ストリート エディションでは高い実用性を兼ね備えていることも分かった。

 興味深かったのは、前述した①と②の変更によって、「アダプティブシャシーコントロール/DCC」で選択できる各モードの違いがよりハッキリとしたことだ。DCCでもっとも快適な仕様となる“コンフォート”を選択すると、“ノーマル”仕様からタイヤのサイドウォールの減衰力が向上したかのように身体に伝わる衝撃波形の角が丸くなる。しかもダンパーのピストンスピードが速くなる高速走行時にもそうしたマイルドな乗り味は保たれ、過大なピッチングが誘発されることがない。つまり、①による変更で路面との接点をマイルドにして乗り心地を向上させながら、ストリート エディションとなってもスプリングとダンパーをトラック エディションから変更しなかったことで、操縦安定性という観点での車両バランスはトラック エディション同様、高いポテンシャルを保っているのだと理解した。

「単なるネーミングを変えた販売手法か?」、などと失礼極まりない疑念を抱きつつストリート エディションの試乗に臨んだのだが(ホントにスミマセン)、乗り味にここまでの違いがあったことに心から反省した次第。それにしても、クルマそのもののポテンシャルもさることながら、目利きが選ぶと(タイヤやシートの変更だけで)こんなにも変わるものなのかと改めて勉強させられた。

Car Watch,西村直人:NAC,Photo:安田 剛

最終更新:9月16日(金)0時0分

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