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盲導犬男性のホーム転落死 「右手で胴輪」が意味することは?

THE PAGE 9月16日(金)19時10分配信

 東京メトロ青山一丁目駅で、盲導犬ユーザーがホームから転落した8月15日の死亡事故は、ショッキングで痛ましい事故としてマスメディアで報じられた。そこで同様の事故を防止するための改善策として論じられているのは、「ホームドアの設置」といった鉄道事業者側の環境整備、そして、周囲の人たちの「声掛け」の必要性という“社会の優しさ”だ。しかし、これらは、いずれも視覚障害者の歩行をめぐる周辺環境の問題であり、事故の直接的な原因を追及する見解は表に出てきていなかった。

【写真】「盲導犬を正しく理解して」使用者団体が声明を発表した背景とは?

 そんな中、盲導犬育成団体の一つ、公益財団法人「アイメイト協会」の塩屋隆男代表理事は「ハーネスの持ち替え」が事故を招いたと指摘する。警察の捜査や防犯カメラの映像から、亡くなった会社員品田直人さん(55)は、転落時にハーネス(盲導犬の胴輪状の持ち手)を右手で持ち、自身が線路側・犬が内側を歩く形でホームの際を歩いていたことが分かっている。これは何を意味するのか? 塩屋代表理事に詳しい話を聞いた。(内村コースケ/フォトジャーナリスト)

団体で違う盲導犬の定義

 アイメイト協会は、国内に11ある独立した盲導犬育成団体の一つで、最も古い歴史を持ち、最大の実績(これまでに育成した使用者と犬が最多の1300組余。現在の実働数もトップ)を誇る。他の10団体が「盲人を導く犬」を表す「盲導犬」という呼称を用いているのに対し、人が指示を出しながら犬も自主的な危険回避の行動を取って歩くという「共同作業」の実態にそぐわないと、目の役割を果たすパートナーという意味合いの「アイメイト」という独自の呼称を用いている。

 アイメイトの訓練と使用者への歩行指導のノウハウは、1957年に初の国産盲導犬・使用者を送り出した創設者の塩屋賢一氏が、ゼロから独自に確立したもので、その後にできた国内他団体とは一線を画するものだ。そこで、本稿では以降、「アイメイト」と「盲導犬」の区別を明確にするため、アイメイト協会の犬を「アイメイト」、他団体の犬を「盲導犬」と記す。品田さんは、地元の公益財団法人「北海道盲導犬協会」の盲導犬ユーザーだった。

 なぜ、育成団体間の違いにこだわるかというと、単なる呼称のみならず、団体によって盲導犬の定義そのものが違っており、できることの水準やユーザー(使用者)の条件も異なるからだ。つまり、「アイメイト」とA協会の「盲導犬」では、見た目は同じラブラドール・レトリーバーであっても、同列に語ることはできない。

 例えば、アイメイト協会は使用者を全盲者に限っており、アイメイト歩行を「全盲者が晴眼者の同行や白杖の併用なしで犬とだけで単独歩行できる」と定義して、訓練・歩行指導を行い、この水準に達したペアにのみ「卒業」を許している。その一方で、協会によっては、逆に全盲者を対象としていなかったり、「白杖との併用」や「晴眼者の同行」を推奨していたり、慣れた通勤路などの限定された場所を歩くことを集中して教えているケースもある。

 そして、“日本の盲導犬の父”と言われる塩屋賢一氏の長男でもある隆男氏が、今回の事故の原因だと指摘する「ハーネスの持ち替え」の問題は、まさにこの「団体間の違い」に関わってくる話でもあるのだ。

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最終更新:9月16日(金)22時16分

THE PAGE

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