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〈コラム〉コンテンツ制作は今後も稼げるのか

Impress Watch 9月16日(金)7時20分配信

 オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。

 前回掲載した“演奏者やダンサーにも権利がある”の続きとして、今回は“〈コラム〉コンテンツ制作は今後も稼げるのか”というテーマを解説する。

■〈コラム〉コンテンツ制作は今後も稼げるのか ワイヤード誌編集長のクリス・アンダーソンが2009年に出版した世界的ベストセラー『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』は、フリーミアムという言葉を世に知らしめた1冊で、非常に面白い本です。

 クリス・アンダーソンが紹介した『情報はフリー(無料)になりたがる習性を持っている』という指摘は、デジタル化やネットワーク化がコンテンツビジネスの今後にどのような影響を及ぼすのかを的確に表現しているように思います。

 この本を読んで刺激を受けたオタキング・岡田斗司夫さんと、知財専門の弁護士である福井健策さんとの対談を本にした『なんでコンテンツにカネを払うのさ?』も、今後のコンテンツビジネスを考える上で面白い1冊です。岡田斗司夫さんは、この本の中でこんなことを言っています。

現時点で、どうしてプラットフォーム提供側がコンテンツホルダーやクリエイターを囲い込めているのか? その理由を極端に単純化すれば、プラットフォーム提供側が「この条件をのんでくれたら、お金をあげるよ」と言い、コンテンツホルダーやクリエイターがその条件に対して魅力を感じるからでしょう。これが、コンテンツビジネスにおける契約の本質ということになります。じゃあ、もしクリエイターが「お金なんていらない。コンテンツはタダで出しちゃうよ」と言い出したら、どうなると思いますか?

 つまり、今はまだプラットフォームによる囲い込み戦略が有効ですが、クリエイターが食べていける手段が他にあればコンテンツを無料で発信できるので、いずれ囲い込み戦略は崩壊するだろうと予測しているのです。

 問題は、クリエイターが食べていける手段とは何か? という話になります。作品のクオリティでも、プロとアマとの境界が薄れつつあります。無料で公開して広告で収益を上げるモデルも、きちんと稼げている人はまだ限られています。同じ本の中で岡田斗司夫さんは、こんなことを言っています。

無料で小説を書く人、無料で映像を作る人、無料で音楽を作る人がこんなにも世界にはいる。そんな世界において、コンテンツで金を取ろうなんてことは無理に決まっています。

 実際のところ、無料で楽しめる作品は世の中に溢れています。そういう状態の中で、本やCDといったパッケージに対価を払ってもらうのは至難の業です。だから、本やCDの売上は落ち続けています。ところが、ライブイベントの売上は逆に伸び続けているのです。世の中が、簡単には複製できない『体験』に対価を払う方向へ進んでいるということになるのでしょう。

 従来の著作権は、他人による情報の複製や流通を制限することで情報に貴重価値を持たせ、そこから対価を得る仕組みでした。情報の複製や流通に膨大なコストが必要なアナログの世界では、複製や流通を担うプレイヤーが非常に強い力を持っていたのです。コストを回収するため、複製や流通を担うプレイヤーにも大きな対価が支払われていました。一定以上の売上が見込める作品を中心に複製・流通され、マイナーな作品はうち捨てられてきました。

 劣化しないデジタルコピーがクリック1つで作られ、ネットワークによって瞬時に世界の裏側まで届けられるようになったことで、マイナー作品にも光が当たる可能性が出てきました。

 漫画家の鈴木みそさんは、1人のクリエイターが1,000人の村(つまり1,000人のファン)を育てられれば、今後も食べていけるだろうと予測しています。膨大なコストが必要な商業流通では、1,000部程度の売上では関係者全員を食べさせることはできません。ところが、1人のクリエイターが1,000人のファンから直接お金をもらえるなら、クリエイターだけは食べていけるというわけです。

 デジタル化やネットワーク化は、コンテンツを生み出すクリエイターの存在価値を高める一方で、複製や流通だけを担っていたプレイヤーの存在価値を薄めていると言えるのではないでしょうか。

■次回予告

 今回の続きとして次回は“パクられる前に自衛しよう”というテーマを解説する。

原著について

『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)

クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!

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窓の杜,鷹野 凌

最終更新:9月16日(金)7時20分

Impress Watch