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伊藤園や中古車販売のIDOMが総力戦で挑む変革とは?

ITmedia ビジネスオンライン 9月16日(金)7時25分配信

 かつて企業では“一匹狼タイプ”の営業スタイルが大いに脚光を浴びた。しかしながら、ビジネススピードが早く、顧客ニーズが目まぐるしく変化する現在、営業担当者一人だけの力では立ち行かなくなっているケースは確実に増えているだろう。そこでバックヤード部門も巻き込んだ組織一体での営業アプローチが不可欠になりつつあるのだ。

 そうした中、ITmedia ビジネスオンライン編集部では8月25日、『組織一体でアプローチ! 「部門連携」と「仕組み」で大きく売り上げる“総力戦営業”』と題したセミナーイベントを開催。基調講演では、自動車の買取・販売会社であるIDOM(旧:ガリバーインターナショナル)の執行役員で、新規事業開発室室長を務める北島昇氏が登壇し、全社の力を結集した売り上げ拡大の新たな取り組みについて紹介した。

 IDOMという社名に変更したのは2016年7月。背景にあるのはマーケットが劇的に変化する環境をチャンスととらえて、今後ブランドや事業が多岐に渡ることを想定すると、その統括企業としての位置付けを明確にする必要があった。そこで未来へ挑戦していくという強い思いを込めて社名をIDOM(挑む)に変えたのだ。

 同社は1994年に福島県郡山市で創業。当時の中古自動車業界では、各社の担当営業が言い値でクルマを下取りしていたため、買い取り市場の透明化を目指したというのが同社のスタートである。1998年には通信衛星を介して自動車販売を行ったり、販売のマルチチャネル化を積極的に推進したりと、これまで挑戦と変革を合言葉にビジネスを伸ばしてきた。

 そうした中で今、2つの大きな課題に直面する。1つは日本での新車販売台数の低迷、もう1つは米Googleなどが開発する自動運転やUberに代表されるカーシェアリングサービスの登場である。

 「マーケットトレンドが所有から利用へ、また、ビジネスモデルが売る&買うから、貸す&借りる、さらには使うへと移り変わっています。こうした状況で当社はどうすべきかを考える時期が来ていたのです」(北島氏)

 そこで同社が目指すのが、クルマの情報とユーザーをつなぐプラットフォームになることである。同社の最大の強みはクルマに関する膨大な情報を持つこと。この既存アセットの活用が有効だと考えた。

 その実現に向けてIDOMでは既にいくつかの具体的な施策を打ち出している。1つが月額定額制の乗り換え放題サービス「NOREL」だ。これまで培った同社の商品調達力を生かし、クルマのサブスクリプションという新たなビジネスモデルを構築する。

 次に、クルマの個人間売買を行うアプリ「クルマジロ」である。代金のやり取りからクルマの輸送、名義変更まで煩わしい手続きをすべてIDOMが代行することで、買う側も売る側も余分な手間をとることなく取引できるようになるという。

 最後が、チャット形式のオンライン接客プラットフォーム「クルマコネクト」だ。店舗と同等の接客をオンラインでもできるようにしたもので、後追い成約率の向上にも役立つと考えている。

 重要なのは、これらの新サービスには、クルマ売買のプロであるプロパーの営業社員やIT系の中途入社社員など、さまざまな人材がかかわることで成り立っていることだ。「こうした部署横断型のサービスは経営陣しか決められないものでした」と北島氏は断言する。なぜなら、全社売り上げを伸ばす、市場シェアを大きくするというのは、一営業担当者の役割ではないからだ。「例えば、買い取り担当の現場営業マンが売上高を増やすためにCtoCサービスをやるべきだという発想は持たないでしょう」(北島氏)。

 同社の経営陣が英断だったのは、北島氏が新規事業を立ち上げる際に、現業を否定しても構わない、IDOMを外部パートナーの1社として見ても良いなどと明確に言われたことだという。「新しい事業に挑戦するには、それを許容する人事制度、組織の壁を壊していく環境が不可欠。当社にはそれがありました」と北島氏は力を込める。

 さらには社内のリソースだけにとらわれず、外部の優秀な人材は異業種であってもどんどん取り込んで、新しいアイデアを創出しようと積極的なのだ。まさに社内外を問わず、総力戦で次々と挑んでいるのがIDOMという会社なのである。

●部門を超えて連携する伊藤園

 「CSR(企業の社会的責任)の意味合いが大きく変わりつつある」――こう語るのは、セミナーの特別講演に登壇した伊藤園 常務執行役員 CSR推進部長の笹谷秀光氏だ。

 これまでCSRと言うと、慈善活動や寄付活動などが一般的だったが、こうした取り組みは企業の業績に大きく左右されてしまい、例えば、ひとたび収益が赤字に転落すれば持続するのは困難だ。そこで現在、企業はビジネスの本業を通じてCSRを推進するべきだというのが国際的な考え方になっている。実際、ハーバード大学経営大学院のマイケル・ポーター教授は社会的価値と経済的価値を同時実現する新たな経営戦略としてCSV(共有価値の創造)を打ち出している。

 では、企業はCSVをどのように進めればいいのだろうか。笹谷氏によると、価値創造のストーリーづくり、効果的・戦略的な発信、トップコミットメントと社内浸透といったポイントを抑えることが肝要だという。

 そうした中、伊藤園では「お客様第一主義」を経営理念に掲げ、全社員がこれを共有価値として持つように浸透させている。その上で取り組む事業の1つが茶産地育成である。

 現在、日本では農家の後継者不足や自給率低下などの問題によって茶園面積が減少している。これは伊藤園にとっても原料の調達面で課題であり、茶産地の支援が不可欠だった。そこで伊藤園では、農家に対して茶葉の全量買い上げ契約を結ぶことを決めた。さらには、荒廃農地も茶園として活用できるよう、そうした地域の育成にも取り組んでいる。このような伊藤園の茶産地育成事業は、同社にとって原料を安定調達できるだけでなく、農家の経営力強化、地域の耕作放棄地の削減にもつながっているという。また、茶殻の有効活用の一環として茶殻リサイクルシステムも実施している。こうした取り組みは世界的にも評価され、経済誌『フォーチュン』の「世界を変える企業50選」という特集で18位にランクされたという。

 伊藤園の強みは、CSV活動をあらゆる部門で推進している点である。上記に加え、例えば、製造・流通部門では環境配慮に向けたペットボトルの軽量化、マーケティング部門では、日本の伝統やお茶文化を普及するためのティーテイスター制度の導入と、自社だけのメリットにとらわれない取り組みを行っている。

 そしてまた、このような各部門での取り組みが他部門にも好影響を与えている。「茶畑から茶殻までと、バリューチェーン全体で物事を考えるようになった」と笹谷氏は話す。その結果、部門を超えた連携が広がり、新たなビジネスチャンスやイノベーションが生まれるようになったという。

 ジグゾーパズルのピースを繋げていくように、今では連携は社内から社外へとどんどん広がっていると笹谷氏。今後ますます「チーム伊藤園」の活躍が日本企業のCSVにも大きな価値をもたらしていくはずだろう。

最終更新:9月16日(金)7時25分

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