ここから本文です

「DCコミックス」ジム・リーが語る、『スーサイド・スクワッド』のヴィランたちへの“共感”

cinemacafe.net 9月16日(金)18時30分配信

「1980年代後半か90年代に、マーベルが『AKIRA』を出版したと思うんだけど、それが素晴らしかったんだ。僕がマーベルで『X-MEN』という本を手がけているとき、とても影響を受けたよ。それから、『アップルシード』(作:士郎正宗)『ガンスミスキャッツ』(作:園田健一)『ゴン』(作;田中政志)が大好きで、最近『デスノート』を読み始めたよ。僕の子どもたちは、『ナルト』や『るろうに剣心』にも夢中になっていたよ」。

【画像】『スーサイド・スクワッド』フォトギャラリー

インタビューが始まると、日本からの取材陣である私たちに好きな漫画の話を始める。表情は終始笑顔、子どものような笑顔からは、漫画やコミックへのあふれんばかりの愛が感じられた。

シネマカフェが実施した『スーサイド・スクワッド』現地取材。最終回の今回は、「DCエンターテインメント」の共同発行人であり、コミックスのペンシラー(作画家)としても活躍するジム・リーのインタビューをお届けする。

韓国系アメリカ人であるジム・リーは、かつてはマーベル・コミックスにおいて「X-MEN」の新しい月刊シリーズを手掛けヒットを記録し、のちに自らのレーベルを立ち上げた経歴を持つ。その後、DCコミックスによるレーベルの買収を受け、同社にて数々のコミックスを担当。2010年には共同発行人として、スーパーマンやフラッシュ、ワンダーウーマンのコスチュームの刷新にも携わっている。

第1回目のレポートで紹介したクリエイティブ・チーフ・オフィサーのジェフ・ジョンズが、映画やテレビ、ゲームなどといったメディア側のクリエイティブを手掛けている一方で、ジムはコミックスの出版ビジネス全体を担当しているという。「ダン・デディオと僕が共同発行人なんだけど、僕らはエディトリアル・チームと出版するすべての本の予定を考えることや、編集長やほかのグループ・エディターたちとの仕事を含む、出版ビジネス全体を見ているんだ。それから、プロダクションやデザイン、プライシング、セールス、マーケティングも管理してる。『DCエンターテインメント』にはクリエイティブとビジネスの2つの構成要素があって、この2つを組み合わせることで、僕らのコミックを読者に届けることができるんだよ」。

ジェフ・ジョンズと共に2011年に「The New 52!」と呼ばれるDCユニバースの再編を行う新しいシリーズを開始したジムは、DCコミックスのスーパーヒーローチームである「ジャスティス・リーグ」のはじまりを描き、その際にキャラクターのコスチュームの刷新を行ったことでも知られている。映画『マン・オブ・スティール』においても、これまでのスーパーマンのイメージとは異なるコスチュームが話題を集めたが、ジムはコスチュームのリデザイン過程における“スクイント・テスト”(※squint 目を凝らして見るの意)について語る。「どんなコスチュームでも、デザインするときにガイドとなる指針として、僕はスクイント・テストのようなことをやるんだ。キャラクターのことをじっと目を凝らして見てみるんだよ。もちろん、もっとも重要な要素はキープしたい。それは一貫している。それはキャラクターたちの由来であり、歴史であり、コスチュームに反映されているからね。スーパーマンのようなキャラクターには、赤いケープがあって、ブルーのコスチュームじゃないといけない。でも、ほかの要素はもう少し重要じゃなかったりするんだ。例えば赤いパンツとかね。僕らが赤いパンツをやめたのには理由があったんだ。なぜなら、赤いパンツは1930年代後半の時代のことを示しているからだよ。サーカスのショーの強い男が、パンツをはいていたんだ。彼らは、彼らの胸の半分をカバーした布地と動物の皮のレザーのパンツをはいていて、それは当時をとても強く反映している。だから僕らは、赤いパンツは失ってもいい古いビジュアル要素だと感じたんだ。キャラクターの外見をアップデートするプロセスにおいて、そういった決断を下さないといけないことはたくさんあるんだ」。

先日刊行された、様々な作家によるハーレイ・クインのコミックスを集めたアンソロジー「HARLEY QUINN’S GREATEST HITS」にも参加しているジムだが、表紙を飾るハーレイ・クインをはじめとする『スーサイド・スクワッド』のキャラクターのコスチュームを見ると、映画版の衣装から大きく影響を与えているのがわかる。映画作品とコミックスの関係性についてジムは語る。「常にキャラクターがどのようにコミックに描かれているかということと、メディアでどのように描かれているかということの間には、いつも関係がある。それは、双方向的なんだ。アーティストとして、もし何かがクールに見えれば、『あのルックを使いたい』と思う。素晴らしく見えるものに影響されずにはいられないんだ。もちろん、それはコスチュームだけに限らないよ。ハーレイ・クインについて言うと、もちろん、映画の中で彼女がどう描かれていたかは、すでにコミックブックに影響を与えているんだ。ポニーテイルの左右が違う色になっていることかね。僕らは以前彼女をポニーテイルで描いたことがある。でも、そのときの彼女はブロンドの髪じゃなかった。だから、今回の映画は大きな変化だったんだ」。

ペンシラーとしてジムは、『スーサイド・スクワッド』の中ではハーレイ・クインとワニの皮膚を持つキラー・クロックを描くのが好きなようだが、彼にとっての『スーサイド・スクワッド』の魅力は、登場人物であるヴィランたちへの共感なのだという。「『スーサイド・スクワッド』で僕が好きなのは、ヴィランである彼らは多くの意味でとても欠点だらけで、真実や正義のお手本であるスーパーマンとかよりも、もっとたくさん欠点がある僕たちに似ているところなんだ。でも、彼らはスーパー・ヴィランだからね、必ずしも彼らのことを100%応援するわけじゃないけど、映画の中で彼らは、ヒーローにならないといけない状況に置かれてしまう。それはとても興味深いチャレンジだと思う。だって、多くの意味でそれは人生と同じだからだよ」。

かつてはマーベルに所属した経歴も持つジムに、「マーベル・シネマティック・ユニバース」への印象を尋ねると、「彼らはシネマティック・ユニバースを持っているの? 知らなかったよ」と、いたずらっぽく冗談を言いながら、現在の立場からはライバルとも言えるマーベルへの敬意を語った。「僕はマーベルの大ファンだし、マーベル映画が好きなんだ。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は特によく出来ていたと思う」。そして、「DCエクステンデット・ユニバース」におけるザック・スナイダーが手掛けた『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』へ賛辞を述べる。「僕は『バットマン vs スーパーマン』が大好きだった。スーパーマンとバットマンが一緒にいると世界はどういうふうに見えるものになるかということを、とてもクールなやり方でザック・スナイダーは見せてくれたと思う。ゴッサムとメトロポリスを、お互いとても大きなベイを挟んだところに置くというのは、とても大胆だと思ったよ。それは、コミックではされてなかった設定だからね」。

「『スーサイド・スクワッド』のプレミアで、上映前にキャスト全員がステージに上がったんだ。そのときウィル・スミスが、『このチームは多分、大画面で映されたもっとも多様性のあるチームだ』と、とても雄弁に語っていたよ。それはとても興味深かった。誰もが共感出来るチームがいるというのはとてもクールだからね」。そうジム語るように、『スーサイド・スクワッド』では、人種やバックグランドを超えたキャラクターたちによるチームが描かれ、映画界における“ポリティカリー・コレクト”という言葉を超えた、自然で有機的な登場人物たちの結びつきが感じられる。それは、ジェフ・ジョンズも同じく語るように、DCコミックスが持つ“神話性”を表しているように思える。「僕にとってDCユニバースの魅力は、それが常に広がりをもって変化していることさ。DCコミックスの神話は、僕らみんなが熱望する理想や、善良であること、正義を表しているんだ。これらの理想のために立ち上がるヒーローたちがいて、正しいことのために喜んで闘う。僕はそれはとても重要なメッセージだと思う。特に、今日ではね」。

「コミックブックを読んで育った12歳の子どもだった僕にとって、決して想像できなかった世界に住んでいるように感じるよ。当時は誰もコミックブックを読んでいなかったからね」。いまやアメコミ映画の公開作が相次ぐ現状について、ジムは笑いながら話す。しかしながら、子どもの頃から彼をとらえて離さないコミックスの魅力は、一過性のブームとはまた異なる、時代を超えた物語を、映画を通して観客である私たちに再び教えてくれる。「コミックスがいまではポップカルチャーの土台になったということは、子どもの頃ファンだった僕らがずっと知っていたことを証明しているんだよ。それは、コミックスのキャラクターがとてもとてもパワフルだということさ。彼らが単に強いということだけじゃなくて、彼らが表しているテーマやアイディアもね。彼らは“正義のクルセイダー(※改革者の意)”なんだ。彼らは、僕らが熱望するゴールを与えてくれる、僕ら自身の神話の土台でもあり、ポップカルチャーの神話なんだ」。2020年まで公開作が続く「DCエクステンデット・ユニバース」が、映画界に新たな神話をもたらすことを期待したい。

『スーサイド・スクワッド』は全国にて公開中。

最終更新:9月16日(金)18時30分

cinemacafe.net

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。