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富岡にホテル、にぎわい創出へ 避難の渡辺吏さんら8人共同出資

福島民報 9/16(金) 10:50配信

 東京電力福島第一原発事故に伴い避難生活を強いられている福島県富岡町の男性8人が来年10月、共同で町内のJR富岡駅前にビジネスホテルを開業する。避難前まで町内でスーパーや飲食店、青果市場などを営んでいた。培ったノウハウを経営に生かし、町の魅力や復興状況を発信したいと意欲に燃えている。
 開業準備を進めているのは町内で食品スーパー「誠屋」を営んでいた渡辺吏(つかさ)さん(57)ら8人。渡辺さんが代表となり5月に共同で出資して運営会社を設立した。総事業費約8億8千万円のうち約3分の2を県のグループ補助金を活用し、残りは自己資金で補う。
 シングル66室、ツイン3室を備え、町が復興拠点に位置付けるJR富岡駅近くの曲田地区に設ける。料金設定などの詳細は今後詰める。敷地面積は約1200平方メートル。来月21日に起工式を行った後、来年1月に着工、9月の完成を予定している。
 渡辺さんは震災による津波で駅前通りにあった店舗兼住宅を失い、さらに原発事故で避難を余儀なくされた。平成24年4月から大玉村の安達太良仮設住宅に隣接する町商工会などが運営するスーパー「えびすこ市場」で店長を務めている。
 新天地で働く傍らでも町のことはいっときたりとも忘れられなかった。町で事業を再開したい-。思いは募るばかりだった。
 県内各地で避難生活を送っている40代から60代までの経営者と会合を開き、復興を加速させる事業に知恵を絞った。浮かんだのがホテル経営だった。渡辺さんは以前の仕事を生かして食材の仕入れなどを担える。富岡青果市場を経営していた林芳典さん(54)は食材の流通に精通し、飲食店「いろは家」を開いていた大河原宗秀さん(53)も包丁を握り、メニューのアイデアも豊富だ。それぞれの商売で築いた人脈も助けになる。「各自の強みを持ち寄れば魅力的なホテルになるはず」。一念発起して起業を決心した。
 町は来年4月の避難指示の解除を目指しており、解除後は町内への出入りが自由になる。ホテルを拠点に町の復興状況を見てもらい、にぎわいの回復に一役買いたい考えだ。
 渡辺さんは「町民自らが復興を目指して動きだすことに意義がある。経営を軌道に乗せ、将来を担う若い人に引き継いでいきたい」と力を込めた。

福島民報社

最終更新:9/16(金) 10:58

福島民報