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通勤は自転車、ランチは出雲そば――松江っ子エンジニアのIターンライフ

@IT 9月16日(金)10時20分配信

 こんにちは! 千葉県生まれのIターンエンジニア、「モンスター・ラボ」島根開発拠点のハスミンです。「ITエンジニア U&Iターンの理想と現実:島根編」第1回は、私たちが実践している屋外開発事例をご覧いただきました。今回は、仕事以外のIターンライフ@島根県松江市を紹介します。

【堀川めぐり、宍道湖などその他の画像】

●松江市の住宅事情

 松江市は、東京23区の92%ほどの面積に、文京区と同じくらいの人口20万人が暮らしています。人口密度が低いので、家賃はもちろん安いです。松江の市街地(意外と都会です)にある賃貸住宅の家賃は、東京の住宅地(中野区、杉並区当たり)の60%くらいではないでしょうか。

 注意しなければならないのは「ガス」です。都市ガスが供給されている範囲があまり広くなく、範囲内であっても古い建物には導入されていないことがあります。その場合は「プロパンガス」を使うことになります。東京で暮らす人はご存じないかもしれませんが、プロパンガスは非常にコストが高いのです。ここに注意して部屋を探してください。オール電化物件があればそれも良いと思います。

●松江市の通勤事情

 第1回で書いた通り、松江市はコンパクトな街ですから、職住近接であり、通勤は非常に楽です。

 モンスター・ラボ島根開発拠点4人の通勤時間は、自転車で5分が2人、自転車で10分が1人、バスで15分が1人です。全員が徒歩でも帰宅できます。中野区や杉並区から中央区のオフィスまで通う場合、満員電車で1時間近くかかりますよね。私もそうでした。

 このように恵まれた通勤事情を実現できるのは、私たちが全員Iターンであり、自由に居住地を選択できたからです。同様にIターンする人なら誰でも可能だと思います(Uターンであれば実家に暮らすなどの制限が加わるかもしれませんが)。

 島根は冬になると雨が多く、自転車には乗りづらくなります。そこで、公共交通機関で通勤することを少し考えてみましょう。

 松江市では普通、電車は通勤の選択肢に入りません。なぜなら松江駅からひと駅離れたら、そこは別の街です。電車が街と街をつなぐ交通であるのに対し、路線バスは1つの街の中を走るので、有力な通勤手段です。

 本数が少ないだろうとお考えになるかもしれませんが、複数路線が乗り入れるバス停の近くに住めば、朝夕の時間帯は十分便利です。しかし最終バスの時間が早いので、なるべく徒歩可能圏内に住むことを考えてください。オフィスの立地など複合的な要因で便利/不便利が決まるので、移住後しばらくしてから便利なところを見つけて引っ越すのを前提に最初の住居を選ぶのが賢明でしょう。

●自動車と運動不足

 上述の通り公共交通機関は「すごく便利」というわけでもありませんから、「自動車」を持っていると行動範囲がぐっと広がります。松江中心部から自動車で30分くらい走れば、温泉やきれいな海や国宝に指定されている神社などバラエティに富んだ場所に行けます。

 自動車のある生活に慣れてしまうことの引き換えに払う代償、それが「運動不足」です。地方での生活は運動不足になりがちであると聞いてはいましたが、真実でした。

 私は東京に住んでいたころ、週1回のヨガ、週2回の水泳、晴れた日は自転車で往復16キロ通勤という健康生活を営んでおりました(とはいえ都会暮らしのストレスを相殺するぎりぎりの生活ではありました)。島根では食べ物がおいしいことと、水泳プールの少なさ、あまりにも恵まれた通勤事情、週末には日帰り温泉や釣りやコンサートや各種イベントに自動車で出掛けるのが楽し過ぎるために、運動不足が深刻です。

●お買い物と銀行

 お買い物好きな人が松江市に移住したら、少し困るかもしれません。お洋服好きなおシャレさんは特に。

 私は服に無頓着なのであまり困りませんが、それよりもヨドバシカメラのような家電量販店がない方がつらいです。秋葉原や大阪日本橋のようなPC・電子パーツショップもありませんし、自作PCマニアやラジオ工作少年が楽しめる街もありません。Amazonなどの通販はもちろん便利ですが、手にとって商品を選びたいというニーズを満たせません。

 この辺は割り切りが必要だと思います。もしもあなたが、お買い物大好きな20歳代エンジニアだとしても、30歳をすぎたら意外とそうではなくなるかもしれません。ご自身のここ数年間の消費行動を一度冷静に振り返り、地方都市でも問題なく暮らせそうかを考えてみてください。

 ちなみに、アニメイトなら松江にもあります。

 もう1つ困るのが「銀行」です。松江市にあるメガバンクは、みずほ銀行だけです。三菱東京UFJ銀行などは支店がないだけでなく、ATMもありませんので記帳ができません(コンビニATMからの出金は可能です)。地元の銀行口座からしか引き落としできない公共料金もありますので、口座開設の検討をオススメします。

●出雲そばについて

 少々ネガティブな情報が続いたので、ここからはパラダイスな島根生活をお届けします。唐突ですが、読者の皆さんは「出雲そば」をご存じでしょうか。「西日本はうどん」と思い込んでいる人も多いようですが、島根県はそば文化圏です。出雲そばは、東京や信州のそばよりも(どちらかというと)黒っぽい、そば殻ごとひいた田舎そばです。

 出雲そばの典型的なメニューに「割子(わりご)そば」というものがあります。円形朱塗りの器が三段1人前で提供される冷たいそばです。

 私は東京に住んでいたころからそばが大好物で、更科そばよりも田舎そばが好きでした。移住してみたら松江にはおいしいそば屋がたくさんあり、今では平日のほとんどのランチでそばを食べます。

 松江のそば屋がどれだけハイレベルかは、ぜひググッて調べてください(私が書いた別の記事を発見するかもしれません)。

●宍道湖と松江城

 島根・松江の観光名所を幾つか紹介しましょう。

 夕日の美しさで有名な「宍道湖(しんじこ)」は松江市と出雲市に挟まれた、JR山手線ぐらいの大きさの汽水湖です。しじみの漁獲量が日本一、他にもシラウオやスズキなどが獲れる豊かな漁場です。水が近くにある生活の素晴らしさは、体験した人なら誰でも共感してくれるはずです。東京でも、一度多摩川の近くに住んだ人はなかなかよそへ引っ越さないでしょう?

 松江市の宍道湖畔はとてもきれいに整備されており、散歩にジョギングにドライブに最高です。湖を見ながら食事できる喫茶店などもあり、夏はリゾート地のようです。泳ぐ人はいませんが、ヨットやカヌーなどのマリンスポーツも楽しめます。

 次は「松江城」です。2015年に天守としては5番目の国宝に指定されました。お城だけではなく、お堀や武家屋敷の保存活用も全国に自慢できるものです。船でお堀をめぐる「堀川めぐり」は松江観光のハイライトでしょう。私は既に3回乗りました。この文化にいつでも触れられるのはとても幸運なことです。

●勉強会

 「島根にはエンジニアの勉強会がありますか?」

 U&Iターンに興味を持っているエンジニアから、しばしばこの質問を受けます。恐らく最頻出の質問です。いつも不思議でならないのですが、勉強会がないならU&Iターンしないのでしょうか? しないつもりなのかもしれませんね。でも、勉強会なら東京がダントツに多いのは自明ですよね? エンジニアとして勉強会をそんなに重視するなら、地方都市に移住しようとは考えない方がよいでしょう。

 でも、考えてみましょう。

 東京で開催される勉強会も含めて「それに参加しないと絶対に得られない知識やスキル」というのがどの程度あるでしょうか。たまにはあるかもしれませんが、大体はインターネットで得られる情報なのではないかと思います。ITエンジニアはどこでも働けます。どこでも勉強できます。勉強会があるかどうかを気にするよりも、その街はあなたが住むのに適した場所かどうかを見極めるべきです。

●エンジニアとつるんでないで街へ出よう

 詳しくは次回紹介しますが、松江にはエンジニアの立派なコミュニティーがあります。そりゃあります。勉強会だってあります。ぜひフル活用してください。

 しかし、U&Iターンするならば、島根の文化や山陰の自然をめいっぱい楽しんだ方が幸せになれます。ちょっと信じられないでしょうけれど、夏の海水浴場は「沖縄か!」というくらいきれいです。初心者でも魚が釣れます。冬は大山(だいせん)でスキーやスノボができます。日帰り温泉や歴史のある温泉街もあります。日本史好きなら「たたら製鉄」は必見です。

 Iターンで地方都市に移住するならば、その街を第二の故郷にしてください。Uターンならもともと故郷ですが、大人になってから眺める故郷は新鮮な景色かもしれません。

 「ITエンジニア U&Iターンの理想と現実:島根編」、次回は「結局のところU&Iターンなんて本当にできるの?」「どうやったらできるの?」「誰か手伝ってくれるの?」という疑問にお答えします。お楽しみに!

最終更新:9月16日(金)10時20分

@IT