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SIEJA 盛田 厚プレジデントに訊く“プレイステーション4の戦略”【TGS 2016】

ファミ通.com 9/16(金) 21:32配信

 2016年9月15日(木)から9月18日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の 東京ゲームショウ 2016(15日・16日はビジネスデイ)。初日となる15日に実現した、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(以下、SIEJA)プレジデント 盛田 厚氏のインタビューを掲載する。(聞き手:週刊ファミ通編集長 林 克彦)


●タイトルが揃ったからこそ、ハードの施策が打てる
林 いよいよ東京ゲームショウ2016が始まりましたが、その前にSIEJAさんのカンファレンスでいろいろな発表がありましたよね。プレイステーション 4の層の厚さと広さを感じましたが、まずはカンファレンスの感触からお聞かせください。

盛田 おっしゃっていただいた通り、プレイステーション 4は、タイトルが足りないところから始まったので、とにかくタイトルを揃える活動をずっと続けてきました。ここにきて、ユーザーの皆さんが欲しいと思う、我々が必要としていたタイトルがほぼ出そろったと思っています。それが今年の年末商戦のタイミングだったので、本体の価格を下げることを決断・決行し、ここで勝負をかけようと。こうして勝負をかけられる状態になったことをうれしく思いますね。新型PS4のあの価格設定は、我々もマジックプライスだと思っています。

林 今年の最初のインタビューで、「今年できることは、すべてやる」とおっしゃっていましたが、まさにそれを具体化したのが、今回の値下げであり、プレイステーション 4 Proの発売というわけですね。あの価格の決定や施策については、社内でもかなり議論があったのではないですか?

盛田 もちろん議論はありました。

林 これもすべて、PS4を普及させる、ユーザーに買ってもらうためにはどうすればいいかを考えた結果としての、今回の施策であると。

盛田 プレイステーションというのは、ハードだけの施策で何とかなるものではありません。これまでもそうでしたが、あくまでタイトルが揃ったからこそ、ハードの施策が打てるわけです。そういう意味では、今回はタイトルが揃ってきたという実感を感じ取ることができたので、施策を打つ決断ができたという言いかたが正しいと思います。

林 なるほど。ただ、その一方で、タイトルの延期がありましたよね。

盛田 すみません。

林 いえいえ(笑)。もちろん、“クオリティーを上げる”という開発の都合ですから、やむを得ない部分でもありますが……。

盛田 延期というのは、ビジネスをやっている者にとっては残念ではありますが、せっかく出すからには、待っていただいている方や楽しみにしている方がいる中で、ただ間に合わせるために出すものではないとも思います。作っている方たちが、自信を持てる、満足できるクオリティーになっていないのに発売するというのは、やりたくありません。

林 わかりました。ところで、本日(2016年9月15日)は、『ペルソナ5』や『ウイニングイレブン2017』といったビッグタイトルの発売日で、ここから年末、そして来年の3月までラインアップが揃っていますよね。それこそユーザーがうれしい悲鳴を上げるくらいだと思いますが、その手応えは感じられていますか?

盛田 ようやくバラエティーに富んだタイトルがたくさん出てくるという状態になっていくと思いますので、今年の年末以降は、すごく手応えがあります。これだけ揃ったからには、言い訳無用でがんばるしかないと思います。ここまで来たら、あとは走るだけなので、むしろつぎの手を考えながら走らなくてはいけないところまで来られたかなと思います。


●PS VRは“一家に一台プレイステーション”を実現する可能性を秘めたテクノロジー
林 来月10月には、いよいよプレイステーション VRが発売されます。PS VRの手応えはいかがですか?

盛田 すごく手応えがあります。手応えがありすぎて、予約をしてもすぐに完売という状況が続いて、申し訳なく思っております。この盛り上がりは、しばらく続くと思っていますので、そういう意味での手応えは感じています。今年やらなくてはいけないのは、やみくもに売れればいいというのではなく、早く購入された方たちが遊んだときに満足していただける、そして人に自慢したくなる。そういう状態にしなければならないと我々は思っていますので、ハードウェアはもちろんですが、タイトルやコンテンツの楽しさという意味でのクオリティーを担保しないといけないですね。

林 いまの時点でも、そういう雰囲気は感じますし、コンテンツもちゃんと揃ったなという印象がありますね。

盛田 ありがとうございます。

林 新型PS4が発売され、その後にはPS VRがあって、さらにはPS4 Proも控えていますよね。SIEJAとしては、販売戦略的にどのように舵を切っていくのかも気になります。

盛田 最終的に判断されるのはユーザーの皆様なので、どのように受け止められるかというのはユーザーの皆様の判断を待つしかありませんが、我々の中ではすごくハッキリしていて、PS4をいかに拡大していくかというのが、ふたつのラインアップ(PS4 Proと新型PS4)の意味です。とにかくタイトルが揃いましたので、買うかどうか悩んでいた人に買っていただけるようにするためのマジックプライスを、新型PS4では実現させました。そして、これはいままでやってこなかったことですが、世の中の環境は、昔とは大きく変化していて、PCやスマホは、ほぼ1年ごとにアップグレードしていますよね。

林 確かにそうですね。

盛田 私たちも含めて、アップグレードするということに慣れてきたと思うんです。この環境の中で、PS4もハイエンドのモデルを出すというチャレンジを決めましたが、コアなユーザーの方たちがPS4とPCのゲームと比較して、PS4のゲームで遊ぶ機会が減少してしまうようなことを避けるために作られたわけです。PS4 Proはコアなファン層、新型のほうはもっと幅広い層に向けたものなので、この2タイプのPS4で上の層と横の層を拡大するというのが狙いです。そしてPS VRは、その両方をエンハンスする(強める、促進する)ためのものだと思っています。我々が長年ゲーム作りをやってきた中で、2Dから3Dになったことで夢がひとつ叶いましたが、ゲームの中に入れるという、もうひとつの夢をかなえるのがPS VRだと思っています。もちろん、さらなる技術の進化は必要ですが、ゲームがさらにおもしろくなるということを、しっかりと訴求していきたいですね。

林 そうなってほしいと思いますね。

盛田 VRには、ゲームではないコンテンツの楽しみが無限にあると思っています。たとえばゲーム機を買うなと言っていた奥様が、PS VRがやりたいからPS4を買ってもいいと言ってくれるような、ゲーム機以外の使いかたを訴求できますよね。我々が究極的に目指したいのは、“一家に一台プレイステーション”なので、それを実現するための可能性を持ったテクノロジーだと思っています。

林 だからこそ、先日のカンファレンスではゲームではないコンテンツにも力を入れるとおっしゃっていたわけですね。

盛田 そうです。

林 わかりました。あと、カンファレンスでは“PlayStation祭”についても語られていましたが、このイベントの意義や目的を改めてお聞かせください。

盛田 イベントに関しては、我々はずっとやってきましたが、やはりPS Vitaの“共闘学園”と『Minecraft』のイベントをやってきた中で感じたのは、みんなでゲームを楽しむとか、見る楽しみというのを訴求して、ゲームというものの楽しさを広げていくには、オンラインのこの時代だからこそリアルなイベントを立ち上げて、皆さんに場を提供していくというのは重要だと思っていまして、“PlayStation祭”を考えました。このイベントでやりたいことは、とにかくみんなに参加していただき、ゲームがうまい人はトップを目指して闘ってほしいし、うまくない人でもみんなでワイワイと楽しんでもらいたい。そして重要なのが、見ていて楽しいということです。単純な言いかたをすると、日本代表やオリンピックのときって、ものすごく盛り上がりますよね。自分のことではないのに、みんなが抱き合って喜んだり。そんな興奮を、ゲームで作れると思っていますので。

林 ユーザーにPSのファンになってもらって、そこでコミュニケーションが生まれてコミュニティになってほしいという、盛田さんの思いが伝わってきますね。その流れをくんでいるのがPS祭なのかなと。

盛田 ありがとうございます。まさにそういったことを“できないことが、できるって、最高だ。”というキャンペーンを実施するときに議論しました。我々が初代プレイステーションを導入するときは、誰もプレイステーションというものを知らないところから、プレイステーションというものを皆さんに知ってもらう、プレイステーションを広めるための施策を地道にやってきたわけですが、ある程度認知されたら、その後はタイトルやハードのプロモーションに特化していました。なぜゲームで遊ばなくなってきたのかを考えると、もう1回プレイステーションやゲームというものを、きちんと訴求・啓蒙していかないといけないのではないかという結論に至り、地道だけどやっていこうと決めたのが、“できないことが、できるって、最高だ。”のキャンペーンです。その流れでいくPS祭なので、まさにおっしゃっていただいた通りです。

林 でも、ワクワク感とか、お祭り感があっていいですよね。近所のお祭りに行くみたいな。

盛田 いろいろな場所でPS祭を実施していますが、地方でも同じようなことをやってくれたらいいなと思っています。

林 地方の商店街のイベントがPS祭でもいいと思いますし。大きい祭りや花火大会の会場でPSが楽しめるというのも、立派なPS祭ですよね。

盛田 そうなってくれると本当にうれしいですけどね。

林 最後に、ゲームファンの皆さんは、あまりのタイトルラッシュに頭を悩ませていると思います。でも、まだPS4を買っていない方もいます。そのすべての方に、メッセージをいただけますでしょうか。

盛田 ゲームで遊ぶことって、ワクワクするとか、楽しいという、とても単純なことだと思います。そこに意味を持たせようとすると、いろいろなことを考えたくなるんですけど、もう少し単純でいいと思っています。「ゲームで遊んで楽しかった」、「とてもワクワクした」といったことから学ぶことってあると思うので、そういう楽しさを多くの皆さんにも感じてもらいたくて、いろいろなタイトルを揃えてきたつもりです。まだ高いとおっしゃる方もいるかもしれませんが、お買い求めいただきやすい価格のモデルも出したつもりですので、買っていただいて、ゲームを楽しんでいただきたいです。そして、楽しんだら、その楽しさを人に伝えてほしいですし、家族や友だちと楽しんでほしいです。いま一度ゲームの楽しさを広げていきたいと思っていますので、皆さんに協力していただけると、楽しい世界ができるのではないかと。我々もがんばりますので、ぜひついてきてほしいですね。ゲームの楽しさというのは、アナログがデジタルになっただけで、変わっていないと思います。その楽しさを伝えていくというのがブレなければ、実現できると思っています。

林 熱いメッセージですね。ちなみに、来年の3月までのラインアップは見えていますが、それ以降、4月以降の戦略は練られていますでしょうか?

盛田 もちろん練っています。いまの流れの延長線上にあると思っていますので、そこに向かって走るための道を整備しているところです。

林 その手応えは十二分にありますか?

盛田 あります。手応えがあるからこそ、その先が重要になると思っています。

最終更新:9/16(金) 21:32

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