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【内田雅也の追球】手放した魔力と奇跡 月も球場も味方にするプレーを

スポニチアネックス 9月16日(金)9時9分配信

 ◇セ・リーグ 阪神6-8DeNA(2016年9月15日 甲子園)

 阪神はミスが失点を呼ぶ自滅だった。今季開幕から続く悪循環を断ち切れないでいる。

 「本当に多いな」と敗戦後、ヘッドコーチ・高代延博が言った。この夜の敗戦投手ランディ・メッセンジャーは失点7だが自責点は2。長くリーグ最多のチーム非自責点(つまり失策絡みの失点)は65点に上る。「どこのチームもミスはあるんだが、ウチはそれが失点になる確率が高いよね。もちろん、しっかり守れば、それですむことなんだが……」

 原口文仁の後逸(1回表=記録は暴投)、北條史也の悪送球(5回表)、陽川尚将の邪飛目測誤り(7回表=記録は失策)がすべて失点につながった。以前も書いたが、20世紀初めの大リーグのように「四球も投手のエラー」とすれば、岩田稔の連続死四球(8回表)も痛かった。

 試合中盤から雲に隠れていた中秋の名月が顔を出した。満月の日は劇的な試合が多いと、加瀬清志『プロ野球満月伝説』(東京書籍)にある。満月の魔力は<人の心をかりたてて、自分でも考えられないような行動をとってしまう満月の不思議な力>という。この夜は十五夜だが、満月ではない。ただし、満月の前後でも力が及ぶそうだ。

 だが、阪神は魔力を力に変えられなかった。北條のミスは本塁はギリギリのタイミング。記録は野選と見たが、失策(悪送球)がついた。高代は「あれを(安全に)一塁に投げられていたら困りもの。いい球ならアウトなんだ。だから記録員は正しいよ」と話した。なるほど、プレーも公式記録員もプロなのだ。同じミスでも、レベルは上がっている。

 野球場は奇跡が起きる場所と言われる。作家ジョン・アップダイクは<すべての野球ファンは奇跡を信じる。問題はいくつまで信じることができるかだ>と書いた=『アップダイクと私』(河出書房新社)所収『ボストンファン、キッドにさよなら』=。

 スタンドには「残り試合、全部勝て」とボードを掲げた男性がいた。50歳代だろうか。彼はまだ奇跡を信じている。中日と並んで同率最下位に落ちた今も信じている。

 いや、残り9連勝など、奇跡のうちに入るまい。魔力や奇跡を自ら手放すようなプレーさえしなければ、月も野球場も味方してくれよう。目を見開き、息を吸い込み、ラストスパートをかけねばならない。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

最終更新:9月17日(土)3時4分

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