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【シネマの小箱】渡辺謙、脱王様!無精ひげで“漁協のオヤジ”になりきる

スポーツ報知 9月16日(金)15時3分配信

 俳優の渡辺謙(56)が主演する映画「怒り」(李相日監督)が17日に公開される。芥川賞作家・吉田修一氏の人気小説が原作。八王子で発生した夫婦殺人事件の犯人と疑われる前歴不詳の3人の男と、その男と出会った千葉、東京、沖縄の3組の人物たちを描く。李監督とのタッグは3年ぶりとなる渡辺は、千葉の漁協組合で働く男の役。ブロードウェーで演じた威厳たっぷりの王様のオーラを消し去って臨んだ作品への思いを聞いた。

 2013年公開の「許されざる者」でタッグを組んだ李監督と渡辺。北海道での過酷な撮影を経て絶大な信頼関係を築き、今作の出演も迷いなく決めた。

 「『なんかあったら何でもやるよ』って話はしてたので、(監督が)原作を持ってきた時には、軽い気持ちではないですけど『ああ、次はこういうのがやりたいんだ』と」。陰惨な殺人事件にまつわる重く、深い群像劇。「読み始めた途端に『こんな面倒くさいのをやるのか』という感覚はありましたよね(笑い)。でも、それをどうやっていくのか興味はありました。やる、やらないの返事なんてお互いになくて『いつから?』みたいな感じでしたね」

 千葉の漁協組合で働き、妻を亡くした後は、男手一つで娘の愛子(宮崎あおい)を育ててきた槙洋平役。役作りのため漁協を訪ねた。

 「もっと漁師みたいなイメージがあったんですよ。“海の男”みたいなね。でも気持ち、柔らかい人たちで、船が出ない時はデスクワークをしたりとかね。仲介業者なんで、準公務員みたいな感じでやっている方が多かったですね」

 フォークリフトを運転する資格も取得した。

 「大変でしたよ。4日間、毎日8時間。最初の日は講習を受けて、残りの3日間は実技。ちょうど台風が来ててね。3日間、ずーっと雨の中でやってましたね」

 千葉編の撮影は昨年9月25日にスタート。ボサボサの髪に、無精ひげで“漁協のオヤジ”になりきった。直前の7月まで米ニューヨークでブロードウェーミュージカル「王様と私」に出演し、威厳たっぷりのスキンヘッドの王様を演じていたのとは180度違う役どころだった。

 「1か月弱ぐらいお休みをいただいて、夏休み明けに衣装合わせをやったんですけど、漁協の帽子をかぶった途端に漁協のオヤジになりましたね。だから、そういう意味では王様が抜けるのも早かった。でも(舞台で)全身を使って表現するみたいなところから、何も表現しないみたいなところに引きずり込まれたんで、そこのギャップは大きかったですね。『何もいらないです、何も見せてもらわなくていいんです』って感じで、そうそう、李相日はこれだったと。体をシューッと縮こませていくところはありましたね」

 作品は先日の第41回トロント国際映画祭でも大きな反響を呼んだ。

 「自分が見るのは2回目だったんですけど、2回目の方がインパクトが強くてね。李相日がこんなふうに変わったんだってことに驚いたんですよ。1回目では気がつけなかったのね。あの人が持ってる根っこの優しさというか、人間らしさの部分が本当に今回は出たんだなと思って、それは驚きもあり、喜びもありという感じでした。観客と一緒にそれを体感できて、喜びは深かったです。文化や言語の違いは割とあっさり乗り越えられる映画なんじゃないかなって気がしましたね」

 今月16~24日にスペインで開催されるサン・セバスティアン国際映画祭のコンペティション部門にも出品。日本作品初の最優秀作品賞受賞に期待がかかる。

 「欧州の方が、さらに日本人の感覚に近いところがあるので、より近く思ってもらえると思いますね」

 今回、改めて李監督の魅力を肌で感じた。

 「僕らが作品を作る中で悩んでるレベルは、外見とか外枠的なところではなくて、もっと(役の)心の中心みたいなところなんですね。だから演じている役の心が揺らいだり震えたり、迷ったりする部分が、そのままお客さんに伝わると思うんです。単純にお話が楽しかった、衝撃的だったっていうだけじゃなくて、本当に心を揺さぶられちゃうんで、ちょっとみんな言葉を失うと思うんです。そういうのを撮れる監督はなかなか珍しいし、それが魅力でもあり、特権でもある。僕は日本映画の宝だと思ってるから、彼が飽きない限りは一緒にやり続けたいと思います」

 ◆怒り 八王子で陰惨な夫婦殺害事件が発生する。被害者のものと思われる血で書かれた「怒」の一文字と、逃亡を続ける犯人。1年が経過しても有力情報が得られない中、千葉、東京、沖縄で前歴不詳の3人の男が浮かび上がり、それぞれに距離を縮める3組の登場人物たちは「信じる」「疑う」という対極の感情の間で揺れる。渡辺のほかに森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡ら豪華キャストが出演。

最終更新:9月16日(金)17時53分

スポーツ報知

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。