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<EU離脱>保守党内で主導権争い「何も決まっていない」

毎日新聞 9月16日(金)21時34分配信

 【ロンドン矢野純一】欧州連合(EU)からの離脱を決めた国民投票を受けて7月に発足した英国のメイ新政権は、EUとの離脱交渉の開始時期や交渉方針を明示していない。与党・保守党に政策提言するなど強い影響力を持つロンドンのシンクタンク「ボウ・グループ」のベン・クイニー代表は「閣僚間や省庁間で主導権を巡って綱引きが起きており、何も決まっていないのが実情だ」と話す。

 メイ首相は、離脱交渉でEUの単一市場へのアクセスを維持して経済上のメリットを確保する一方、EUの基本原則の移動の自由は受け入れず、移民を抑制すると強調する。しかし、EU各国は英国の都合の良い主張に反発。メイ氏は夏休み明けの7日の議会でこの点を問いただす野党議員の質問に「英国にとってベストな取引をする」と繰り返し、新たな方針を示せないでいる。

 クイニー氏は、メイ氏がそれぞれ新設したEU離脱省、国際貿易省と、外務省の3省間に加え、大臣間で「縄張り争い」が起きており「どの省が離脱を巡る方針を主導するのかも決まっていない」と話す。EUとの交渉開始時期については「来年1月か2月」と考えるが、大幅に遅れる可能性もあるという。

 政府が方針を示せない、もう一つの理由として、主要閣僚も含めた保守党内の意見の相違も挙げる。メイ氏も含め下院(定数650)で単独過半数を占める保守党議員(329)の半数以上は残留を支持した。「党内で離脱・残留両派に割れているうえに、離脱派内でも移民の制限と単一市場へのアクセスのどちらを優先するかで意見が割れている」と指摘。「メイ氏が大まかな方針を発表しただけでも、政治的に不測の事態に直面する」という。

 メイ氏は離脱交渉の方針や、いつ離脱交渉を始めるかについて議会の承認を得ないとしている。メイ氏の説明に納得しない保守党議員が増えれば、議会の承認を求める動きが広がる。さらに議会の承認が必要となれば、議会での議論が収まらず混乱に拍車がかかるという。

 クイニー氏は、メイ氏の立場について「とても脆弱(ぜいじゃく)だ」とする一方、「演説内容を他人に書いてもらう人物ではなく、全ての状況を把握しており、目の前に迫っている戦場のことも知っている」と説明。焦点は「メイ氏が、意見が異なる人もまとめ上げるカリスマ性を発揮できるかどうかだ」と話す。

最終更新:9月24日(土)19時21分

毎日新聞