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福島 教育旅行徐々に回復 事故前の7割に 震災学習メニューも

日本農業新聞 9月16日(金)7時0分配信

 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で旅行客が激減した福島県に、修学旅行や林間学校などの教育旅行で訪れる学校が次第に戻ってきた。県によると震災前の7割まで回復、教育旅行のメニューの中に震災学習を盛り込む動きも出てきた。受け入れが盛んな喜多方市では、再び生徒たちが福島に戻ってきてほしいと、農家や地域が一丸となって奮闘する。

 9月上旬、同市で農業を営む酒井喜好さん(74)の畑に、千葉県松戸市立第四中学校の生徒6人が林間学園の一環で訪れた。午前はブルーベリー畑に堆肥を散布。立ち上る湯気、むせ返る臭いにたじろぎながら3トンをまいた。午後はリンゴの葉摘み作業に取り組んだ。

 生徒の大薄綾人さん(14)は「福島イコール被災地というイメージが強かったが、ここには農業があるんだ」と笑顔を見せ、小栗優さん(13)も「福島って自然がいっぱいあって良い所だな」と声を弾ませた。

 昼食は妻のヨネ子さん(70)が自家野菜のカレーやサラダを提供。酒井さんは「作物の命を頂いて、自分の命を養っていることを分かってほしい」と思いを託した。

 震災前は「年に50回ほど農業体験を受け入れていた」という酒井さんだが、原発事故後は風評被害で受け入れはゼロに。「もう、受け入れは終わりかなと思った」

 風評被害が払拭(ふっしょく)されてきたのは2014年ごろから。農業体験などを受け入れるNPO法人喜多方市グリーン・ツーリズムサポートセンターや、同市観光交流課が、関東や東北の学校を中心に年間200カ所を訪れ、原発事故の影響はないことや、自然の魅力を根気強く説明し続けたことが奏功。酒井さんの所にも生徒が戻ってきた。同校の猪狩惠司校長は「歴史や自然、農業を学べる福島に、復興応援の気持ちも込めて訪れている」と説明する。

 ただ、依然として一部の保護者から理解が得られず、震災前の水準までには回復していないのが現状だ。センターでは年間約60校の教育旅行を受け入れていたが、原発事故後の予約は全て取り消しに。必死の巻き返しで昨年度は23校、今年度は10月までに25校が訪問を予定する。センターの小林孝雄事務長は「学校を訪問した効果が一定程度、表れてきた」とみるが、完全に回復するまでには至っていない。

 県観光交流課によると、14年度に県内600の施設・団体に宿泊した学校は約5200校。震災前(09年度)に比べ66%になっている。

 地域別に見ると、歴史や自然環境を生かした教育旅行の受け入れが盛んな会津地域は71%、いわき地域は震災学習を新たに盛り込んだことで受け入れは増え、震災前を超えて120%となった。(隅内曜子)

日本農業新聞

最終更新:9月16日(金)7時0分

日本農業新聞