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“奇跡”は“必然”だった…155人全員生還の裏側を描いた『ハドソン川の奇跡』

dmenu映画 9/16(金) 11:30配信

そういうことだったのか、あの表情。クリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演の映画『ハドソン川の奇跡』を見ながら、7年半前に感じた違和感の理由が解き明かされていくようだった。

2009年1月、米ニューヨークで起きたUSエアウェイズ1549便の不時着水事故。155名を乗せた飛行機が離陸直後に全エンジン停止のトラブルに見舞われ、マンハッタン付近のハドソン川に不時着水したものだ。見慣れたニューヨークの景色のなかで、水に半分沈みかけている飛行機、極寒のなか救助される人々の姿、乗員乗客全員が無事であったというニュースに、だいぶ暖かい西海岸にいながら、身震いがするほどの興奮と希望を感じた。そしてその後、管制塔から近隣の空港に緊急着陸するよう指示されたにもかかわらず、自らの経験値と状況判断でハドソン川への着水を実行したという機長の姿が明かされるにつれて、人々の熱狂は最高潮に。サリー機長ことチェスリー・サレンバーガー機長は、瞬く間に英雄となった。

“Yes We Can”と“Hope”を掲げ、アフリカ系アメリカ人として初の大統領に就任したバラク・オバマ大統領の就任式を5日後に控えた時期。まるでその言葉を体現するかのような奇跡の報道に夢中になる一方で、メディアに引っ張りだこのサリー機長の顔に、動揺と困惑、ともすれば苦渋ともいえそうな表情が映ることに違和感を持ったことを覚えている。

サリー機長の側に立ち“後遺症”を体験

『ハドソン川の奇跡』は、メディアを見て熱狂していた私たちが、反対にサリー機長の側に立ち、この生還劇とその“後遺症”を体験することを可能にした。「自分の仕事をしたまで」の自分が1日にして英雄と呼ばれるようになる違和感。家族と無事を喜ぶ間もなく、警備付きのホテルに缶詰めとなる窮屈感。タレントでもないのにフラッシュとスポットライトを浴びる圧倒感。まるで911同時多発テロの映像のように、機体がマンハッタンの高層ビルに衝突する白昼夢を見た直後に、事故について詳細なインタビューを受ける恐怖感。そして、管制塔の指示に従わず、独自で着水を実行したことに対する事故調査委員会の追求により、英雄は容疑者として扱われるように……。不時着以外の方法はなかったのか? 独自の判断で乗客たちを命の危険にさらしたのではないか? 執拗な尋問と繰り返される事故回避シミュレーションは、サリー機長とジェフ副操縦士、その家族を極限の精神状態に追い込んでいたのだ。

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最終更新:9/16(金) 11:30

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