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「朝からラーメン!?」 しょうゆベースに高加水の縮れ麺 福島の味を福岡で

西日本新聞 9月16日(金)12時23分配信

 ある日の午前7時。喜多方ラーメンを提供する「やっちゃんち」(福岡市中央区)には開店と同時に客が入ってきた。「朝からラーメン!?」と面食らったが「福島県喜多方市では“朝ラー”は普通ですよ」。そう話す店主、森康典さん(40)は福島県南相馬市生まれ。開店までの道のりは平坦(へいたん)ではなかった。

「朝に来てくれるのは、出勤前のサラリーマン、中洲で働く仕事帰りの人たちなどさまざまです」と語る森康典さん

 「とにかくラーメン好きで、地元、旅行先でも食べ歩いた。そして5年ほど前に古里で念願の店を出すはずだったんです」。2010年6月、親から継いだ会社をたたんで、ラーメン店を開く準備を進めていた。厨房(ちゅうぼう)機器を買いそろえ、味も研究し、レシピができた。不動産店からも連絡があった。「いい空き店舗が見つかった。明日見に行きましょう」。その翌日、東日本大震災が起きた。

 店どころではない。秋田、新潟、宮城県などを転々として避難生活を送った。福岡市に来たのは、先に避難していた知人から「暮らしやすい」と聞いたから。12年8月、「縁もゆかりもなかった」土地で新たなスタートを切った。

口に含むと動物、魚介だしのうまみが舌に染みていく

 喜多方ラーメンは、大正時代末期に中国から来た青年が屋台を始めたのが発祥とされる。九州で豚骨ラーメンが生まれたのは南京千両(福岡県久留米市)の1937(昭和12)年だから、その歴史は古い。しょうゆベースに、水分を多く含んだ高加水の縮れ麺が特徴だ。

 「福岡で喜多方ラーメンはあまりない。逆に良いかなって期待もありました」。移住後、福岡市の豚骨ラーメン店で働いたが、患っていた股関節の難病「特発性大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)症」が悪化し、1年半ほどで退職。「雇われの身なら同じことになる。失敗してもいいから、もう一度夢に挑戦したくなったんです」

 1年間は体調回復に専念し、15年5月にオープン。かつてのレシピを基に改良を重ねた。豚骨と鶏がらのスープは一晩寝かせる。翌日、鶏ミンチを加えることで、うま味を出すと同時に濁り、雑味を取り除く。麺も特注品だ。注文した支那そば(塩)は透き通ったスープ。口に含むと動物、魚介だしのうまみが舌に染みていく。柔らかい味ゆえ、平打ち縮れ麺の食感、風味もより一層楽しめた。これなら朝でも食べられる。

 “喜多方”を掲げ始めたのは昨年末のこと。あるイベントで福島から取り寄せた麺や材料で喜多方ラーメンを作ったのがきっかけだった。「最初は震災のこともあって前面には出さなかった。でも福島を知っている僕だから福島の味が作れると思えた。福岡に住んでいる福島出身の人にも頑張っているところを見せたいです」

西日本新聞社

最終更新:9月16日(金)12時23分

西日本新聞