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小高へ戻る人のオアシスに...5年半ぶり理髪店「千代田軒」再開

福島民友新聞 9月16日(金)11時33分配信

 南相馬市小高区の理髪店「千代田軒」が22日、5年半ぶりに営業を再開させる。避難指示が解除されてから2カ月が過ぎ、来年には店の創業80周年を迎える中での新たな一歩。「帰還した人たちのオアシスのような場所として、古里が復興していく姿をここで長く見守っていきたい」。店主の松本篤樹(とくじゅ)さん(77)は息子、孫と親子3代で店に立ち、帰ってきた住民でにぎわう日が来ることを夢見る。

 小高小本校舎の程近く、まだ閑散とした住宅地にある店舗で15日、新しい洗髪台や椅子の搬入が行われていた。改装を担当する地元業者が出入りし、着々と開店準備が進む。

 悲願だった古里での営業。猪苗代町や同市原町区に避難を重ねる中、知り合いの中には避難先で店を構える人もいた。

 それでも松本さんが揺らぐことはなかった。「よそで商売しようとは思わなかった。避難した時から、小高に戻って店を再開させると決めていた」。避難先から店に通い、店内の掃除や植木の手入れは欠かさなかった。

 不安がないと言ったらうそになる。「5年もたてば避難先で行きつけの店もできる。帰還する人も少ないのに、どのくらい戻ってくれるか」。今後の客層は高齢者中心になると考え、車椅子に対応できる椅子や可動式の洗髪台、スロープを新設した。

 「千代田軒」は、松本さんの父親が修業先の屋号をもらい受けて創業。学校から近いため子どもから高齢者まで幅広い層の客でにぎわった。息子教夫さん(52)も同じ道を進み、妻登志さん(76)らと家族で地域に根差した営業を続けてきた。5年半の間に専門学校を出て修業を始めた孫龍馬さん(22)も修業後は店に立ち、親子3代で切り盛りする予定だ。

 開店日には常連の予約が入っている。「やっと、やっと始められる」。松本さん夫妻に笑みがこぼれる。「3月11日」。東日本大震災以来、自粛してきた松本さんの誕生祝いは、来年、解禁するつもりだ。「5歳年を取って、ようやく時間が動きだしたよ」

福島民友新聞

最終更新:9月16日(金)11時33分

福島民友新聞