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文化財の能面で上演 金沢能楽美術館、開館10周年

北國新聞社 9/16(金) 3:25配信

 金沢能楽美術館は10月の開館10周年に合わせ、所蔵する江戸中期の能面「中(ちゅう)将(じょう)」(金沢市指定文化財)を用い、加賀藩ゆかりの「来(らい)殿(でん)」を上演する。これまで同館所蔵の美術品を舞台で用いた例はなく、学芸員らが時間をかけて取り扱いなどを検証し、実現に至った。同館は、能面を能楽師がかけて舞う本来の形で「動態展示」し、「加賀宝生」を彩ってきた名品に親しんでもらう。

 同館は能楽に関する全国初の公設美術館として2006年にオープンし、加賀宝生中興の祖・佐野家の室町―明治期の伝来品(市指定文化財)を含む約300点の能面や装束を収蔵する。今回用いる能面「中将」も佐野家伝来の品で、裏には面打ちの名工「天(てん)下(か)一河内(いちかわち)」の焼印がある。

 所蔵品の舞台での使用については、開館当初から、地元能楽師らの要望があった。山内麻衣子学芸員は国立能楽堂での前例を調査し、能面を所有する市、同館の指定管理者である金沢芸術創造財団とも調整を重ねた。その結果、所蔵品の保存状態を確認した上で、収蔵庫のある館内で、学芸員が立ち会うとの条件で使用可能となった。

 上演される「来殿」は、非業の死を遂げた菅原道真の霊を主人公とする。加賀藩13代藩主前田斉泰(なりやす)と宝生流15代宗家宝生紫雪(しせつ)が「雷電」を改作し、前田家の祖神・道真を鳴る雷(いかずち)とするのをはばかって貴人の天満天神に変え、優美な早舞(はやまい)物にした。今回は半能形式で、高橋右任(ゆたか)さんが中将の面をかけ、後場を演じる。

 記念能は金沢能楽会の協賛で10月1日午前11時に同館で開演する。佐野由於(よしお)さんがシテの素謡(すうたい)「翁(おきな)」で幕を開け、藪俊彦さんの舞(まい)囃(ばや)子(し)「高砂」や、能村祐丞(ゆうじょう)さんの狂言「福の神」も披露される。金沢能楽美術館の吉野晴夫館長は「能面は本来、使ってこそ価値が発揮される。実際に能楽師がかけた時の味わいを楽しんでほしい」と話した。

北國新聞社

最終更新:9/16(金) 3:25

北國新聞社