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霜田NTDがリオ五輪総括を実施。オーバーエイジの選考は「A代表の監督をリスペクト」した結果

SOCCER KING 9/16(金) 23:07配信

 1勝1分け1敗の成績でグループステージ敗退に終わった8月のリオデジャネイロ・オリンピック。大会終了から約1カ月が経過した16日、日本サッカー協会の霜田正浩ナショナルチームダイレクター(NTD)がJFAハウスでメディアに向けて五輪代表チームの大会総括を実施した。

 失点につながる致命的なミス、ボールを奪い返す能力の不足、試合の入り方を含めたゲームコントロールの問題など、ピッチ内における力不足が見られたが、やはり今大会におけるピッチ外のマネジメントという点で気になったのが、「オーバーエイジの人選」と「FW久保裕也(ヤングボーイズ/スイス)の招集失敗」だろう。この2点に関して霜田NTDが見解を明らかにした。

 まずは興梠慎三(浦和レッズ)、塩谷司(サンフレッチェ広島)、藤春廣輝(ガンバ大阪)が選ばれたオーバーエイジについて。彼ら3人がフル代表の主力ではなく、しかも、塩谷と藤春が失点に絡むミスを犯してしまったため、人選の是非について議論の的となっていたが、霜田NTDは「欲を言えばキリがないですけど、大きな選択肢の中から現場の希望も含めて、この3人が最良だった」とポジティブな見解を示した。

「大きな選択肢」というのは、オーバーエイジを選出する上でいくつかの制約や条件があったということ。その制約や条件の一つがA代表との兼ね合いだったという。

 前回のロンドン・オリンピックで日本の最終戦となった3位決定戦が行われたのは8月10日で、ワールドカップ・アジア最終予選が組まれていたのは1カ月後の9月11日だった。ところが今回は8月20日に決勝があり、10日後の9月1日にワールドカップ・アジア最終予選が予定されていため、「A代表の監督からすれば、『最終予選に使いたい選手は勘弁してほしい』という考え方は日本サッカー界としても大事なこと。A代表の監督(の意見)をリスペクトしないといけない」。さらに「もちろんA代表の監督とオリンピックの監督が直接、この選手が欲しい、この選手は勘弁してほしい、こういうリスクがあるから辞めよう、このリスクだったらチャレンジしていい、という話し合いをずっと行ってきた」と意見のすり合わせがなされていたことを強調した。

 また、選考をさらに難しくしたのが、ケガ人の状況だった。とりわけ守備陣では、奈良竜樹(川崎フロンターレ)、岩波拓也(ヴィッセル神戸)、松原健(アルビレックス新潟)、室屋成(FC東京)、山中亮輔(柏レイソル)と主力選手が次々と離脱し、「直前にケガ人が出て、層が薄くなったポジションもあって流動的だった」。さらに前回のロンドン・オリンピックとは異なり、今回はFIFAが代表チームによる選手の拘束を認めなかったため、海外でプレーする選手の招集が困難となった。その一方で「Jクラブには『オーバーエイジも含めて3人はお願いします』という話を了承してもらっていた」ため、候補選手は海外組ではなく、国内組に絞られていった。

 また、「残りの15人とちゃんとできるかどうか」も条件の一つ。23歳以下の選手たちによって、すでに2年半の月日をかけてチームは作り上げられているわけで、そこにいきなり飛び込んでうまくやっていけるのかどうか、あるいは逆に、受け入れる側が萎縮しないかどうかも、選考の重要なポイントだった。

 こうして今大会のオーバーエイジはA代表の主力でなく、日本国内でプレーし、DFを中心に層の薄いポジションを埋められる選手で、23歳以下の15人ともうまくやれるといった条件が揃い、その中で選ばれたのが、興梠、塩谷、藤春の3人だった。

「何も条件がない中で、あの選手にすれば、この選手にすればというのは本当に簡単なんですけど、そこに至るまでの経緯と、いろんなリスクや可能性を探りながら、関係者同士がコミュニケーションを取って進めてきた点に関しては、この3人で良かったと思っています。この3人が活躍をしてベスト4に入っていれば良かったと思いますけど、サッカーはそんなに甘くないということです」

 続いて、久保の招集失敗について。前述したように、今回のリオデジャネイロ・オリンピックではFIFAが代表チームによる選手の拘束を認めなかったため、選手がオリンピックに参加できるかどうかの主導権は完全にクラブにあった。それでも事前交渉によって久保派遣の約束をヤングボーイズから取り付け、「3時間後には(久保が)飛行機に乗る状況までこぎつけた」が、そこでヤングボーイズ側でFWの負傷が発覚し、急きょ久保の派遣を取りやめる事態になった。

 久保の欠場に関して霜田NTDは「本人にも現場にも申し訳ないと思っていますし、強化をやってきた人間としては責任を感じています」と話した一方で、問題を解決する方法として「FIFAに対してレギュレーションに関して訴えていくしかない。そう思っている国もたくさんいる」と語り、オリンピックの出場国と連係を取って、FIFAに働きかけていくことの重要性について説いた。

 この問題に関しては、FIFAが代表チームの拘束力を認めない限り、根本的な解決にはならない。仮に代表チームの拘束力が認められなくても、選手がクラブとの契約条件に「オリンピック出場を優先させる」という条項を入れることができれば、オリンピックへの参加が可能となる。とはいえ、有益とはならない条項を認めるクラブは、なかなかいないだろう。

 選手とクラブとの契約において、例えば「ケガをした際、日本で手術を受ける」という条項を契約に盛り込んでいる選手は多いという。ただし、それは「日本のドクターとなら日本語でコミュニケーションが取れるし、リハビリもしやすい。それはクラブにとってもメリットだから認めてくれる」というわけだ。

 また、韓国は今回、A代表の主力であるFWソン・フンミン(トッテナム/イングランド)を招集している。これに関して霜田NTDは、韓国の成人には兵役の義務があるが、サッカー選手の場合はオリンピックでメダルを獲得したり、ワールドカップでベスト4に進出したりすれば兵役が免除となる背景から「実際に盛り込んでいるかどうかは知らないですが」とした上で、「クラブとしても、ここでメダルを取れれば2年間の兵役に行かせないで済むというメリットがある」と、オリンピックへの派遣が契約に盛り込まれていた可能性について示唆した。

 ただし、日本人選手の場合はクラブにメリットがないため、契約に入れるのは難しい。だから「出場国が協力して、ロンドン大会のように大会期間中だけでもいいので強制力を発してください。そうでなければオリンピックでのサッカー競技のクオリティが上がりませんよ、とFIFAへ働きかけることが大事」なのだ。

 4年後のオリンピックは地元・東京での開催となる。悲願のメダル獲得に向けてリオデジャネイロ・オリンピックの教訓を生かすのはもちろん、JリーグとJクラブ、日本サッカー協会がしっかりと連係を取り、活動日数を増やすなど、強化においても最大限の努力がなされることを願いたい。

文=飯尾篤史

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最終更新:9/16(金) 23:07

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