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賃金アップより安定志向、転職に消極的な日本-デフレ脱却の足かせに

Bloomberg 9月16日(金)11時2分配信

より良い賃金を求めて職を転々とする米国人に比べ、日本人は転職に消極的だ。賃金上昇から消費拡大への好循環を狙う安倍晋三政権にとって、日本の労働市場における雇用の流動性の欠如は頭痛の種。賃金アップより安定志向が強い慣習もデフレ脱却の足かせの1つになっている。

高齢化を背景に1億総活躍社会を目指す安倍首相は、働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置付け、同一労働同一賃金や、最低賃金の引き上げ、高齢者の就労機会の提供などに取り組む。しかし、エコノミストからは労働市場の活性化には雇用の流動性も必要不可欠との指摘もある。

一方、転職大国の米国。ブルッキングス研究所のゲイリー・バートレス氏は「より条件の良い仕事に転職できさえすれば、同じ仕事を続けるよりも早く賃金が上がる」と言う。しかし、日本での転職は米国と比べものにならないほど少ない。

日本では長年の慣習として企業が新卒者を起用し、定年退職まで雇用する終身雇用制が根強く維持されている。東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、こうした慣習の下では中途採用が制度としてなじまないと分析する。

その上で、「転職率の高い社会では、仕事ぶりや生産性、能力が適切に評価できる環境であるケースが多い」と指摘。日本では、情報が行き渡っておらず、生産性が賃金に適切に反映されない問題点もあるという。

日本の労働者はリスクを回避し安定志向-。2010年に日本で実施された「世界価値観調査」では、66%の回答者が冒険したり、リスクを負ったりしたくないと回答。11年の米国での調査では、38%にとどまった。昨年、シリコンバレーを訪れた安倍首相は日本のビジネスマンに一番必要とされるのはリスクをいとわない姿勢だと語った。

日本の労働者が仕事を辞める理由は、賃金よりも人事配置や長時間労働など職場の不満が目立つ。厚生労働省が実施した調査によると、前職を辞めた理由として賃金と答えたのは約10%にとどまった。米リンクトインが15年に実施した国際的な調査では、34%が賃金の不満を挙げているのとは対象的だ。

日本人は賃金アップも要求しない。昨年、自身も転職したばかりの武藤氏は、転職時に賃金交渉をする事例は少ないという。多くの転職者は会社側が提示した給与をそのまま受け入れている。より高い賃金を求めることを良しとしない習慣が、転職時の賃金アップにつながらない要因となっている。

日本の賃金の伸びはわずかだ。厚労省の7月の毎月勤労統計によると基本給などの所定内給与は前年同月比0.4%増にとどまった。日銀が目指す物価安定目標2%の達成には不十分だ。賃金が伸び悩む限り、個人消費は増えず、アベノミクスが好循環につながる道のりは遠い。

Connor Cislo, Kyoko Shimodoi

最終更新:9月16日(金)11時2分

Bloomberg