ここから本文です

<1面コラム>伊豆の海で巡り合ったクジラ

伊豆新聞 9月17日(土)14時40分配信

 十数年前、伊東市の富戸港からイルカ・ウオッチングツアーに同行し、漁船で城ケ崎沖合を巡った。イルカは現れなかったが、やや離れた場所で何かが潮を吹いた。近づくとマッコウクジラだった

 ▼体長約13メートル。大きな頭頂部を海面に出し近づいてきた。興奮を抑えつつカメラのシャッターを切っていると、「プシューッ」という音とともに潮を吹き、頭からかぶった。噴気孔から空気を吐き出す時、肺の中の空気が一気に冷やされ霧状になると、後で知った

 ▼クジラは漁船を警戒することもなくゆったりと周りを泳ぎ、船の下をくぐった。危険は感じなかった。時折尾びれを見せながら、大島方向に姿を消した

 ▼アラスカの壮大な自然界を撮影し続けた写真家・星野道夫さんが、取材中に不慮の死を遂げてから20年が過ぎた。特にザトウクジラが大きくジャンプする写真に引かれた

 ▼星野さんは講演集「魔法のことば」(文春文庫)で、友人とのボート旅でザトウクジラに出合った様子を語る。東京に戻った友人は「忙しい生活を送っている瞬間、アラスカの海でザトウクジラが跳び上がっているかもしれない。そう思えることがうれしい」のだ、と。城ケ崎沖で巡り合ったクジラの姿が重なる。

最終更新:9月17日(土)14時40分

伊豆新聞