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任天堂「マリオ」への期待感と足下の不安要素

ZUU online 9/17(土) 10:40配信

「マリオ」がiPhoneにやってくる。米アップルが9月7日に開いた新製品発表会で、任天堂がiOS向けに「スーパーマリオ」の新作を12月に配信することを発表した。同時に、腕時計型端末「アップルウオッチ」が位置情報ゲーム「ポケモンGO」に対応することも明らかにした。

この発表を受けた任天堂は8日、株式市場の主役に躍り出た。一時、2万9200円をつけ、「ポケモンGO」で沸いた7月19日の3万2700円に次ぐ水準まで回復した。その日の引け値は、2万7955円の3260円高、13.2%の上昇だった。

7月に「ポケモンGO」が発表されてから株価が急騰、その後に任天堂が発表したポケモンGOによる同社の業績への影響は限定的との発表から、株価が大きく下げたのは記憶に新しいだろう。

今回発表された新作「スーパーマリオラン」は、同社にどのような影響をあたえるのだろうか。

■任天堂「スマホシフト」の背景

iPhone7の機能が事前予想通りだったこともあり、サプライズを独り占めしたのが「マリオ」だ。発表会には、「スーパーマリオシリーズ」や「ゼルダの伝説シリーズ」などの産みの親として知られる、宮本茂氏もゲストとして登壇した。

任天堂はこれまでスマートフォンをプラットフォームとしたゲームを出さず、ゲーム専用機向けに集中してきた。スマートフォンの爆発的な普及によって新たなモバイルゲーム市場が生まれたが、マリオやポケモン、ゼルダといった世界的に愛されるキャラクターがスマホゲームで姿を見せることはなかった。

同社の経営陣は、モバイル市場への進出がゲーム専用機の売上を侵食することになる、と主張していた。そうして新しい市場の拡大に取り残されることになり、任天堂は2014年までの3年間に渡って赤字を計上、株価は50%近く下落した。

しかし、株主からの強い要求もあり、ようやく昨年になりDeNA <2432> との提携を発表し、モバイル市場への参入、及び、知的財産をライセンス供与することを決めた。その結果、誕生したのがポケモンGOであり、スーパーマリオランだ。 ついに、任天堂のスマートフォン戦略が本格始動した。

■任天堂の挑戦と「スーパーマリオラン」への期待

今回、スーパーマリオランの同社の業績への貢献度合いは、ポケモンGOよりも高くなるとみられている。任天堂とDeNAが直接開発したゲームということが大きく、大きな収益の寄与が見込めるとの期待から今回の株価上昇に繋がった。コンテンツ制作は任天堂、サーバー関連はDeNAが担当し、収益は役割分担に応じて分配される。

スーパマリオランの配信以降も同社の動きは見逃せない。日本において、任天堂とDeNAが提携したモバイル市場参入は、「Miitomo」から始まった。日本では2016年3月、欧米では4月にリリースされた任天堂初のスマホアプリである。リリースから約一か月で、世界1000万ユーザーを突破している。

今回スーパーマリオランが市場投入されることにより、 今年秋ごろのリリースを予定したいた「どうぶつの森」「ファイアーエムブレム」が、来年3月までに延期されることになった。17年3月までに「5タイトル程度」としていた投入計画を4タイトルで確定した。任天堂の挑戦は、ゲームファンでなくても期待出来るだろう。

■足元はまだ赤字体質 今後の課題は?

同社が7月27日に発表した、17年3月期の第一四半期(4-6月)の決算は、為替差損の計上を背景に、245億円の最終赤字となった。17年3月期通期予想は、純利益が前年比2.1倍の350億円となる見通しだが、為替の社内レートを1ドル110円、1ユーロ125円に設定しており、現状1ドル102円台(9月16日現在)で推移していることを考えると厳しい状況は続きそうだ。

また、任天堂の経営陣が懸念していたスマホ向け市場と既存ゲーム機市場の棲み分けについても大きな課題も残る。

任天堂のPER(株価収益率)は会社予想で92.90倍(9月16日現在)とやや過熱感を帯びている。DeNAは業績予想を出していないため、実績PERで44倍だ。

同社への期待感が特別高いにしても、ソニー <6758> の52倍、米マイクロソフトの26倍、米ゲーム大手エレクトロニック・アート(EA)の22倍を考えると、決して安くはない水準まで買われていることがわかる。

今後、任天堂が大切に育ててきた知的財産をどのようにマネタイズしていくのか、任天堂の動向から目が離せない。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

最終更新:9/17(土) 10:40

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