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創業から12年、ヴァージンが目指す宇宙旅行はいつ実現するのか?

ITmedia ビジネスオンライン 9/17(土) 9:18配信

 宇宙旅行の実現をビジョンとして掲げ、華々しい注目を集めてきた米Virgin Galactic。2014年の試験飛行中に死亡事故が起きてしまったことで、計画は大きく頓挫(とんざ)し、表舞台からも消えた同社だったが、その後も不屈の精神で開発を続けて、再び帰ってきたのだ。

【カリフォルニア州にあるVirgin Galacticの施設】

 今回は、そんなVirgin Galacticのあくなき挑戦のストーリーを紹介したい。

●2014年の事故で失速

 Virgin Galacticは英Virgin groupの創業者であるリチャード・ブランソン氏が2004年に創業した宇宙ベンチャー企業だ。

 同じ年に米XPRIZE財団が主催する宇宙旅行のための宇宙船開発コンテスト「Ansari XPRIZE」(賞金:1000万ドル)が行われたのだが、その優勝チームである米Scaled Compositesから技術供与を受けて宇宙船「スペースシップ2」の開発を始めたのが、Virgin Galacticの創業の起源である。

 当初の計画では、2015年には宇宙旅行事業を始めるべくスペースシップ2の開発を進めて、55回におよぶ試験飛行を行った。さらに、2008年には世界初の商業宇宙港「スペースポート・アメリカ」(ニューメキシコ)の開港にも関与し、最初のテナントとして加わるなど、さまざまな活動をしてきた。

 しかしながら2014年10月、試験飛行中に副操縦士の誤操作などにより墜落死亡事故が発生。このことで計画は大きく頓挫した上に、米運輸安全委員会からも「誤操作による事故を防ぐ措置が十分でなかった」と指摘を受けるなど、大々的に報道ニュースが流れたことを記憶している人も多いだろう。

●後継機を開発、ジェフ・ベゾス率いる宇宙ベンチャーと競う

 しかしながら、ここで歩みを止めるVirgin Galacticではなかった。

 同社はその後も改良を続けて、事故から約16カ月後の今年2月にはスペースシップ2の2号機を初公開した。同機体は英国の物理学者、スティーブン・ホーキング博士により「Virgin Spaceship Unity」と命名された。

 同機は操縦士2人と乗客6人が搭乗できる有翼の宇宙船で、母機となる航空機「ホワイトナイト2」に持ち上げられて上昇、空中分離後にエンジンを噴射して、高度100キロメートル超の宇宙飛行を目指すという。

 今月9日には、初の飛行試験を米モハベ空港で実施。母機に取り付けられたまま、離陸から着陸までの約3時間強、最高高度1万5000メートルの飛行を行った。今回取得した各種データの分析を行った上で、次フェーズの飛行試験に移行するとしているが、現時点で商業サービスの開始時期は明確にされていない。

 最大のライバルは、この連載でも取り上げたことのある米Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏率いる宇宙ベンチャー・米Blue Originだ。同社は再利用ロケットの「NewShepard」を開発中で、Virgin Galacticと同じく高度100キロメートルまでの宇宙旅行実現を目指している。現在のプランでは、2017年にはテスト飛行士を、2018年には最初の顧客飛行士を送り込むと言われている。

●空中発射ロケットで衛星を打ち上げる

 Virgin Galacticは宇宙旅行だけでなく、小型衛星の打ち上げサービスも目指しており、空中発射ロケット「Launcher One」の開発を進めている。母機となる航空機にロケットを搭載して離陸、その後ロケットを分離、自由落下しながら第1段に点火して衛星を地球低軌道に投入する仕組みだ。この仕組みを使えば地上で点火するロケットよりもさまざまな射場で打ち上げられるという利点がある。

 母機にはホワイトナイト2が利用される予定だったが、昨年末にグループ会社の英Virgin Atlantic航空が運用していたボーイング747-400型機「Cosmic Girl」に切り替えることが発表された。同機体の搭載能力や航続距離などが母機には適しているという。現在、テキサス州にある施設で改修作業が行われているところだ。

●数億ドルの契約、ライバルも多数存在

 同社の発表によると、既に数億ドルの打ち上げ契約が結ばれているという。例えば、650機以上の小型衛星を活用して地球規模の衛星インターネット網構築を目指す米OneWebは、Virgin Galacticと39機の衛星打ち上げを契約している(なお、OnWebは欧Arianespaceとも約30回の打ち上げ契約を行っている)。

 今月中旬には、英Sky and Space Globalから4回の小型衛星打ち上げも受注した。同社は将来的に150~200機の超小型衛星による通信システムを目指している。この4回の打ち上げには複数の超小型衛星が同時搭載される予定だ。

 Launcher One自体は現在サブシステムと主要コンポーネントのハードウェア試験を実施しており、最初の打ち上げは2018年と発表されている。

 この分野にもライバルが存在する。従来、小型衛星は大型衛星との相乗りで打ち上げることも多く、打ち上げ時期や投入軌道が選びにくいという課題があった。そこで小型衛星専用の打ち上げロケットの開発が進められており、米Rocket Labや米Fireflyなど多くの企業がしのぎを削っているのだ。

 不屈の精神で宇宙ベンチャー市場の最前線に戻ってきたVirgin Galactic。宇宙旅行サービスの早期実現など、今後の飛躍に大いに期待したい。

(石田真康)

最終更新:9/17(土) 9:18

ITmedia ビジネスオンライン

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