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長谷川穂積9回TKOで35歳9カ月最年長王座奪取

日刊スポーツ 9月17日(土)9時52分配信

<プロボクシング:WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇16日◇エディオンアリーナ大阪

【写真】山中慎介7回TKOでV11 左ストレートに限界なし



 奇跡の復活だ。挑戦者の長谷川穂積(35=真正)が、鮮やかによみがえった。王者ウーゴ・ルイス(29=メキシコ)を9回終了TKOで破った。35歳9カ月の世界奪取は日本人最年長。国内で2番目に長いブランクとなる5年5カ月ぶりの王座返り咲きで、国内ジム所属選手5人目の3階級制覇も果たした。引退を勧める周囲を振り切り臨んだ2年ぶりの世界戦。45日前に左手親指を脱臼骨折するアクシデントも乗り越え、感動の勝利をつかんだ。長谷川の戦績は41戦36勝(16KO)5敗となった。

 超満員の観客が総立ちになった。ルイスが赤コーナーから立ち上がれない。レフェリーが、長谷川の右腕を上げる。勝った。苦悩の5年5カ月の時を越えて、よみがえった。「ここまで長かった」。言葉に詰まる。「負けたらスッパリ引退と決めていた。でも、勝とうと思っていた。勝てて良かった」。涙はない。喜びの笑顔が輝いた。

 9回だ。強烈な左アッパーを受けてぐらついた。ロープを背負って連打された。会場の悲鳴を背に、歯を食いしばった。体をくねらせ、左右の連打で猛然と逆襲。たまらず後退するルイスに左ストレートを打ち込んだ。絶体絶命のピンチから一気に形勢逆転。王者の右目は腫れ上がり、戦闘意欲を失わせた。

 世界戦に連敗した2年前に引退するはずだった。だが「死ぬ時に後悔する」と翻意。「心配してくれる人は皆、反対した」。元プロボクサーの父大二郎さん(60)には「ろれつが回ってない」「早くやめて安定した生活を」と何度も引退勧告された。

 WBCバンタム王者として10度防衛し、うち7度がKOとファンを魅了した。そんな男がノンタイトル戦で攻め込まれ、クリンチで逃れると拍手が起こる。左肘を痛め、右足首靱帯(じんたい)も断裂した。だが、やめなかった。「ボクシングが好きだし、僕のボクシング人生を全うしたいだけ」。2度と心が揺れないよう“鬼”にもなった。昨年末「もうやめてほしい」と強く訴える大二郎さんに、怒りをぶちまけた。6年前に母裕美子さんが亡くなってからも、強い絆で結ばれてきた。体を心配する父の思いは分かるが、耐え切れなかった。自分の人生を歩みたかった。

 「もう1度チャンピオンになる」。長谷川の強い意志は、アクシデントにもくじけなかった。8月初めの練習中に左手親指を脱臼骨折。すぐ手術した。「その時期が一番つらかった」。試合開催の危機にも「親指以外は元気。やります」。座薬を入れ、手術翌日から右手だけで練習。その右でリズムをつかみ、親指付け根にくぎとプレートが残る「魂の左」を導きだした。

 感動的な王座奪回に、会場のファンも心を奪われた。「穂積コール」が響く中、念願通り長男大翔(ひろと)君(13)と長女穂乃(ほの)ちゃん(10)をリングに上げた。世界戦に勝った時だけ許される儀式。自分より大きくなった大翔君には、抱きかかえられた。夢がかない「本当に幸せです」。苦しんだ歳月を乗り越えた長谷川の目に、極上の景色が広がった。【木村有三】

 ◆最年長世界王座奪取 長谷川の35歳9カ月は日本人最年長。06年に35歳0カ月でWBCフェザー級王座を獲得した越本隆志の記録を更新。女子は44歳7カ月でWBOアトム級王者になった池山直。世界記録は48歳2カ月でIBFライトヘビー級王座に就いたバーナード・ホプキンス(米国)。

<長谷川穂積アラカルト>

 ◆誕生 1980年(昭55)12月16日、兵庫・西脇市生まれ。

 ◆きっかけ 元プロボクサーの父大二郎氏(60)の影響で、小学2年でボクシングを始める。

 ◆プロデビュー 99年11月、4回判定勝ち。03年5月には14戦目で東洋太平洋バンタム級王座獲得。

 ◆日本のエース 05年4月に世界初挑戦でウィラポンを破ってWBC世界バンタム級王座獲得。1秒間に10発といわれる高速連打と、絶妙の間合いからのカウンターを武器に同王座を10度防衛。05、06、08、09年と4度年間MVPに輝く。

 ◆絶対王者の陥落 10年4月、11度目の防衛戦に敗れる。WBO世界同級王者モンティエルに、4回終了間際に強烈な左フックから連打を浴びTKO負け。悔し涙を流した。

 ◆最愛の母の死 10年10月24日に母裕美子さん(享年55)が、約4年間の闘病生活の末に死去。悲しみに暮れながらも同年11月、WBC世界フェザー級王座を獲得し2階級制覇。

 ◆サイズ 身長168センチの左ボクサーファイター。

 ◆家族 泰子夫人と長男大翔(ひろと)くん(13)、長女穂乃ちゃん(10)。

最終更新:9月17日(土)16時56分

日刊スポーツ