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<重度重複障害>輝く書 指導受け才能開花 別府の支援学校

毎日新聞 9月17日(土)16時18分配信

 大分県別府市の県立別府支援学校石垣原校で、肢体不自由など複数の障害がある重度重複障害の生徒たちが書道に取り組んでいる。教えているのは、同校書道教諭、原田美樹さん(44)。生徒の中には、障害のために一度は教育を猶予されながら、40、50代で「勉強がしたい」と修学し、書道に出合って才能を開花させた人もいる。

 同校に隣接する西別府病院で入院生活を送る、脳性まひの平川正義さん(57)もその一人。「就学猶予制度」で義務教育を免除されたが、中学の卒業資格を取得し、2012年4月に同校の高等部に入学。3年生の時に担任になった原田さんの勧めで書道を始めた。

 寝たきりのため、右の手のひらと手首の間に挟んだクリップで筆を固定し、画板の紙に書く。最初は1センチほどの細い線しか引けなかったが、1年間の練習の結果、筆運びが早くなり、手を動かせる範囲も広がった。集中できる時間も長くなり、発熱などで体調を崩すことも減ったという。

 話すことができない平川さんは、世話になっている看護師に作品を贈り、文化祭のステージでは自分が行きたい気持ちを込めて「海外旅行」と書いた。「みんなの『すごいね』『ありがとう』という言葉が本人のやる気につながった」と原田さん。高校生の書道展で入賞し、昨春の卒業後も校舎や病院に多くの作品が飾られている。

 今春、高等部を卒業した脳性まひの羽田野徳幸さん(43)も原田さんに書道を学んだ。同校の玄関には「笑 げんきになれ」という羽田野さんの書が掲げられている。やはり話ができない羽田野さんは「僕は何もできないけれど、僕の笑顔で、皆に元気になってほしい」という思いを書で表現したという。

 原田さんは志願して同校勤務が3回目になる。20代で臨時講師として初めて着任し、障害を持つ生徒たちへの指導にやりがいを覚えた。「書はわずかな力しかなくても、思いを表現できる。学校で、生きがいを見つけてもらえたらうれしいし、それが書ならばさらにうれしい」と語る。

 指導のかたわら自らも修練を続け、今年6月には「第40回記念毎日女流書展」(毎日新聞社、西部毎日書道会主催)で最高賞の文部科学大臣賞(近代詩文書)に輝いた。原田さんが師事した毎日書道会審査会員の荒金大琳さん(69)は「障害がある子との出会いを大切にするように教えてきた。彼らや彼女らにしかできないことを見つけてあげるのが書道家の使命だ」と話す。【安部志帆子】

 ◇毎日書道展九州展は21日から大分県立美術館で

 荒金さんが実行委員長を務める「第68回毎日書道展九州展」は21~26日、大分市の大分県立美術館である。今回は全国から3万3463点が出品され、九州展では九州・山口の受賞作など986点を展示。一般500円、大学生以下無料。

最終更新:9月17日(土)16時18分

毎日新聞