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コンパクトシティー推進 非居住エリアの明確化を

産経新聞 9月18日(日)10時15分配信

 ■銀行や病院がなくなる

 「田中角栄ブーム」である。田中元首相といえば日本列島改造論で有名だが、そこで唱えた「国土の均衡ある発展」は実現しそうにない。

 内閣府がまとめた報告書「地域の経済2016」によれば、2030年度には全国の8割にあたる38道府県で、域内の供給力では需要を賄い切れなくなる生産力不足に陥るという。少子化に加え、若者の都会流出が進むことで生産年齢人口が減ることが主たる要因である。

 生産力不足は所得税や法人税といった地方税収の落ち込みに直結し、地方交付税への依存度を高める。それは地域間格差が拡大し、地方自治体の自立性が損なわれるということだ。報告書は、2030年度には地方交付税の総額が現在の1・5倍に膨らむと見積もっている。

 生産力が不足すれば、住民の暮らしに不可欠なサービスも維持できなくなる。報告書は三大都市圏を除く地方自治体について、施設や店舗が2040年時点でどれぐらい存続するかを予想しているが、百貨店の約4割、救急告示病院や有料老人ホーム、ハンバーガー店、税理士事務所、大学などは約2割の自治体で、存続できなくなる可能性があると推計する。

 人口規模が2万人以下になるとペットショップや英会話教室が、1万人以下では救急病院や介護施設などが、5千人以下になると一般病院や銀行といった日常よく利用するサービスの立地が困難になるという。

 ■ICTだけで解決せず

 こうした状況に対し、ICT(情報通信技術)に活路を求める意見は強い。インターネットを使った通販や金融サービスの普及は目覚ましく、医療分野などでも技術は格段に高まっている。

 だが、それだけで問題解決とはいかない。どんなに技術が発達しようとも人の手でなければできない仕事は残るだろう。少子化は患者の元に足を運ぶ医療スタッフやトラック運転手などの確保を難しくする。商品も実際に手に取らなければ、気に入ったものが買えないことが多い。

 ICT化の推進も重要だが、人口減少に対応するには人口集約を図るコンパクトな町作りが欠かせない。市街地を集約し、住民が暮らせるだけのサービスを維持する人口密度を保つのだ。行政の効率化にもつながろう。

 コンパクトな町作りといっても、駅前などの中心市街地に寄せ集めるばかりが方法ではない。一から開発計画を立てるわけではないので、地域内に多数の“拠点”をもうけ、公共交通機関で結ぶ「多極ネットワーク型」のほうが現実的であろう。

 高齢化が進むことを考えれば、コンパクトシティーは車がなくても用事が済むようにすることがポイントとなる。商業施設や公共施設、病院を計画的に再配置し、歩きたくなる町を目指すのだ。

 例えば、中心市街地は一般車の進入を禁止し、公共交通機関で移動するようにする。歩道を拡幅し、大きな広場も整備する。

 人々が自然と歩きたくなるような雰囲気の町ができれば消費が伸びるだけでなく、健康増進にもつながり医療費の削減効果も期待できよう。

 ■「市街地縮小計画」作れ

 コンパクトな町作りの最大のハードルは住民の合意形成である。住み慣れた土地を離れることに抵抗感を持つ人は少なくない。

 そこで、農地なども含め総合的な国土利用計画を立てられる法整備を提言したい。人口減少を織り込んだ「市街地縮小計画」を策定し、今後も人々が住み続ける「居住エリア」と、開発をしない「非居住エリア」とを、地域ごとに明確に区分けするのだ。

 居住エリアをコンパクトシティーの拠点とするイメージである。老朽化した公共施設は居住エリアで建て直す。宅地開発や新規店舗、道路や上下水道の補修も居住エリアを優先し、日常生活に必要なサービスを集約していく。

 居住エリアへの転居を決めた人々には、移転費用を支援する。一方で、非居住エリアに住み続けたいという人には“受益者負担”の考え方を導入し、公共料金や税金の負担増を求められるような制度も検討する。

 非居住エリアは、大型農業や新産業を生み出す集積地などに転じていく。

 居住地域の拡散を続ければ、結局は生活できなくなる土地が広がる。追い込まれる前に「戦略的な国土の活用」を考えるときである。(論説委員・河合雅司)

最終更新:9月18日(日)10時15分

産経新聞

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