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SBS価格偽装「輸入米の影響ない」 整合性問われる

日本農業新聞 9月17日(土)7時0分配信

 政府が国家貿易で輸入する売買同時入札(SBS)米を巡る不透明な取引で、農水省が実態把握に乗り出した。輸入商社が卸売業者に支払う「調整金」と呼ばれるリベートが、SBS米の国内流通価格の引き下げにつながっているかどうかが、大きな論点。ただ、SBS米の流通価格は、米の需給情勢によっても左右されるなど多様な要素が絡むとの指摘もある。どこまで真相に迫れるか、注目される。

・真相究明どこまで 政府

 日本は、米をミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)として年間77万トン輸入するが、このうち10万トンは主食用米でSBS方式で輸入する。SBSは輸入商社と卸売業者など実需者がペアで入札に申し込む方法で、国を挟むが実質的には直接取引だ。

 政府は、SBS米を輸入業者から卸売業者に売り渡す際に、マークアップ(輸入差益)を上乗せしている。そうすることにより、業務用など低価格帯の国産米と同水準の値段で国内に流通するようにし、国産米への影響を抑えていると説明する。

 同省によると、国産のある銘柄の相対取引価格は2012年は1キロ268円で、13年は244円だった。

 一方、SBSで輸入した米国産のうるち精米短粒米の政府売り渡し価格は、12年は299円で13年は223円と、同じ価格帯で変動している。

・「みんな知ってる」 業界

 今回の不透明な取引で、こうした政府の説明が覆される可能性がある。価格偽装の構図はこうだ。例えば、輸入商社は国に1キロ150円で輸入米を売り、国は米卸に200円で販売する。輸入商社は実際に100円で調達して国に売る額との差額50円を「調整金」として米卸に渡す。この調整金の分を差し引けば、米卸は実質150円と、公表された落札価格より安く仕入れていることになる。そのため、実際に想定されるより大幅に安い価格で、市場に販売することも可能になる。

 調整金については米卸から「業界の商慣習」、「業界ではみんな知っている」との声も上がる。こうした中で農水省は、過去にSBS米の取引実績がある輸入業者およそ30社や、100社近い買い手側の卸売業者などを対象に、調整金のやり取りがあったかどうか、聞き取り調査に着手。「可能な限り多くの業者を調べ、農家の不安解消につなげたい」(農産企画課)という。

・影響特定には課題 調整金

 一方で「あくまで民間企業間の契約で、強制的には調べられられない。協力を求めていくしかない」(同)状況で、どこまで実態が把握できるかは不透明だ。

 仮に調整金の存在が確認できたとしても、調整金がSBS米の出回り価格にどう影響を与えているのか、特定するには課題は多い。例えば、ある卸が、SBS米を在庫として抱えて保管料がかさむのを避けようと、投げ売りする場合も考えられる。「値下がりの原因は調整金だとじかに証明するのは、簡単ではない」(米の流通関係者)との見方もある。

 政府は環太平洋連携協定(TPP)合意で、米国とオーストラリア向けに7万8000トンの米の輸入枠を設け、SBS方式を採用している。政府によるTPPの影響試算では、国産米への影響はないとしているが、米の主産地を中心に農家の不安は根強い。

 TPPの国会審議(26日召集)を控える中、調整金の存在がこれまでの政府の説明と矛盾する結果とならないか、生産現場への丁寧な説明が求められそうだ。

日本農業新聞

最終更新:9月17日(土)7時0分

日本農業新聞