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10代の心の痛みを優しく受け止める秀作『聲の形』は人が生きていく上で必要な映画である

dmenu映画 9月17日(土)18時0分配信

アニメーション映画『聲の形』は、大今良時のベストセラー・コミックを原作に、思春期の少年少女たちの心の痛みや優しさなどを繊細に描いた青春群像劇である。聴覚障害をモチーフにしているが、そういったものを“感動のコンテンツ”として扱う類とは、当然ながら一線を画している作品だ。

小学6年生の石田将也は、クラスに転校してきた聴覚障害を持つ少女・西宮硝子に妙ないらだちを覚えていじめるようになり、やがてそれが行き過ぎて、硝子は転校。一転して将也はクラスの面々からいじめを受けるようになる。

それから数年後、孤独なまま高校生になった将也は、硝子と、そしてクラスの面々と再会する……。

制作はテレビ・アニメ「AIR」(05)「涼宮ハルヒの憂鬱」(06・09)「Free!」(13)「響け!ユーフォニアム」(15)などでアニメ・ファンから絶大なる支持を受け続けている京都アニメーション(通称・京アニ)。

監督は京アニに所属し、「けいおん!」シリーズ(09・10)「たまこまーけっと」(13)を演出してきた山田尚子。劇場用映画の演出は『映画けいおん!』(11)『たまこラブストーリー』(14)に続き、これが3作目となる。

少女たちの可愛らしさの奥にひそむ残酷さを隠さず描出

山田監督の作風は、登場する女の子を可愛く捉えることに腐心しながら、思春期の躍動を描いていくところにある。それは男性が偶像的に求め、時に性的要素まで期待させる少女性とは一線を画し、あくまでも同性から見据えた可愛らしさを掌握した上で、とことん追求したものでもあるのだ。

そして今回、山田監督はさらに一歩踏み込んだデリケートな部分に挑戦している。

原作漫画は差別やいじめの世界に真正面から向き合いつつ、複雑な10代の心理を巧みに捉えた集団劇として屹立している。映画化に際して山田監督は、その点を大いに汲み取りつつも、登場する少女たちそれぞれの可愛らしさの奥にひそむ“残酷さ”までも隠さず描出。

一方で、それゆえに悩み苦しむ彼女たちがいかに思春期の中で魅力的に映えているかまでも、見事に訴え得ている。

特に、将也にずっと片想いし、それゆえか硝子に対する嫌悪の念を隠そうともしない植野直花は原作でも人気キャラではあるが、映画はさらに彼女を引き立たせた構成になっている。

また今回は山田監督にとって初めて、少年が主人公となった作品であることにも注目したい。ここでは原作に即しながらも、異性の目から見据えた少年の繊細な心理があますところなく捉えられている。その点でも演出面での充実が嬉しい限りだ。

単行本にして全7巻の原作を、1本の劇場用映画としてまとめる作業は並大抵ではなかっただろう。結果として上映時間は2時間を超え(128分)、このあたり、山田監督とずっとコンビを組んできた脚本・吉田玲子の苦労がしのばれる。

原作クライマックスの鍵となる自主映画製作のエピソードをばっさり省いたのは英断ではあった。もっとも、そのために原作ほど描き切れていないキャラクターも出てしまったのは惜しまれるところだ。

とはいえ、原作ファンが愛してやまないエピソードの多くは、京アニならではの丁寧な作画を伴いながら、映画でもきちんとお目見えしている。

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最終更新:9月17日(土)18時0分

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