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サンマがなぜ高値に?中国&台湾の乱獲に台風が追い打ち 水産庁は中国に違法操業の根絶を求めるが…

産経新聞 9月18日(日)15時45分配信

 秋の味覚サンマが、昨年に続き今年も高値で販売されている。台湾や中国など近隣国・地域の漁獲急増などで日本の漁獲量が減少しているところに、今シーズンは8月下旬以降、北海道に相次いで接近・上陸した台風が追い打ちをかけた。水産庁は中国に違法操業の根絶を要求しているが、中国はサンマに代わる新たな“標的”も見つけたようだ。秋の味覚をめぐる攻防は、緊迫の度合いを高めている。(高橋裕子)

 ■「目黒のさんま」にも影響

 「お客さまに高いって言われるけど、いいものはそれなりの値段になる。漁業者は『追っかける魚がいない』と言っている。台風続きで漁に出られなかった影響も大きい。自然相手だからどうしようもない」。東京・築地の鮮魚店、斉藤水産の斉藤又雄さん(60)はこうぼやいた。

 同店では3尾1000円で販売。大型のものは1尾600~800円で、例年より5割程度高いという。

 落語「目黒のさんま」ゆかりの東京・目黒で居酒屋「駒八・目黒さんまセンター」などを運営する駒八(港区)の八百坂(やおさか)仁代表も「以前より小ぶりのサンマが増えた。その割に仕入れ値は下がっていない」と指摘する。

 今季は生サンマが市場に入荷されず、刺し身の提供を見送った日もあった。地元恒例の「目黒のさんま祭り」でも例年、岩手県宮古市から数千匹を調達していたが、4日に開かれた今年の祭りでは宮古産だけでは足りず、北海道からも手配したという。

 東京都中央卸売市場の北海道産生サンマの卸売価格最高値(9日~15日)は1キロ当たり3240円。高値とされた昨年同時期よりは安いが、5年前と比べると1・7倍、10年前と比べると実に2・1倍にも跳ね上がっている。

 ■大型漁船で根こそぎ持ち帰り…

 水産研究・教育機構によると、日本のサンマ漁獲量は平成20年の約34万トンをピークに減少傾向を見せており、27年は約11万トンにまで落ち込んだ。一方で台湾の漁獲の伸びは大きく、25年に約18万トンとなって以降は日本を上回り漁獲量世界一に躍進。3年連続で世界一となっている。24年には中国も参入し、26年には約8万トンの漁獲量となっている。

 台湾などの漁船は日本の北海道東沖から三陸沖のEEZ(排他的経済水域)のすぐ外側の公海で操業。1千トン超級の大型漁船で長期間漁場に留まって大量に漁獲し、冷凍設備を備えた運搬船が持ち帰る。EEZ内で数十トンの船が操業する日本のやり方とは桁違いだ。

 水産庁の担当者は、「台湾などでは日本ほど生サンマにこだわらない。冷凍ものを大量に市場でさばくので価格も安いのだろう」とみる。

 水産庁は昨夏、これまで国際的なルールがなかったサンマなどの資源管理を議論しようと「北太平洋漁業委員会(NPFC)」を設立。中国、韓国、台湾など7カ国が参加し、委員会への漁船の登録や、29年に漁獲量の上限を決めるまで漁船を急激に増やさないことなどを取り決めた。

 だが、会合以降も日本に近い公海で左舷と右舷で異なる船名を表記する中国船など「国内にも登録されていないような違法船が平然と操業している」(水産庁)ことが確認され、今年8月の会合では、中国に違法船を根絶するよう求めている。

 「サンマは日本人にとって欠かせない重要な魚。今後も提供できるように締め付けるところは締め付けていきたい」。水産庁の担当者は力を込める。

 ■新たな“標的”は食卓の万能選手

 しかし、目を光らせなければならないのは、サンマだけではない。

 8月下旬、東京都内で開かれたNPFCの会合では、議論の焦点はサンマではなく、焼いてよし、しめてよし、煮付けによしと、食卓でオールマイティーな活躍をするマサバだった。

 25年の時点で中国漁船によるマサバの漁獲量はゼロだったが、27年には80隻の漁船により約13万5千トンの漁獲があるなど急拡大しており、資源への影響が懸念される事態となっているためだ。

 水産庁によると、会合では、漁獲量の上限を決めるまで、漁船の許可数を増やさず抑制に努めることで合意した。だが、中国は、資源量の減少が科学的に証明されていないことを理由に、サンマに続きマサバの規制にも反対。日本が当初目指した漁船増加の「禁止」などの義務規制にまでは踏み込めなかったという。

 そもそも「中国は正確な漁獲数をNPFCに申告しているかも分からない」(水産庁関係者)のが現状で、合意に実効性があるかは不透明だ。

最終更新:9月18日(日)17時49分

産経新聞