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「今も報復が心配」元裁判員、心の傷深刻 工藤会「声掛け」事件の初公判

西日本新聞 9月18日(日)9時38分配信

 福岡地裁で16日に開かれた裁判員への声掛け事件の初公判。検察側が読み上げた被害者の元裁判員女性2人の供述調書から、声掛けによって裁判員たちが受けた心理的負担は重く、公正な審理が保てない状況に追い詰められていたことが明らかになった。被害者は「今も報復が心配だ」と証言しており、心の傷が深刻なことがうかがえる。

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 声掛けしたとして、裁判員法違反罪に問われているのは特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系の元組員楠本利美被告(40)と会社員中村公一被告(41)。

 調書などによると、同会系組幹部の審理を終え、福岡地裁小倉支部近くのバス停へ歩いていた女性2人に中村被告がバイクで接近。「(組幹部の)同級生やからよろしくね」「あんたらの顔は覚えとるけね」と声を掛けた。2人は中村被告を工藤会関係者だと思い、うち1人は「『あっ』と絶句した」と供述している。

「現役のヤクザだと思った。」

 2人がバス停に着くと、今度はオールバックの髪形にサングラス姿の楠本被告がいた。女性は「『こっちにもいる』と暗い気持ちになった」。楠本被告から「あさって(次の審理日)も来るんやろ」と声を掛けられ「現役のヤクザだと思った。待ち伏せされるんじゃないかと恐怖を感じ、『はあ』とどっちつかずの返事をした」(女性)という。

 初公判で積極的に証人に質問をしていた女性2人だったが、2日後の第2回公判で傍聴席に再び楠本被告を確認。「工藤会に嫌がらせをされないかと恐怖が勝り、質問できなかった。他の裁判員も声掛けを知っていて、一様に質問しなかった」と振り返る。

 2人は第2回公判時に、裁判所側に被害を申告。5月30日に辞任を申し立て、6月7日に解任された。「工藤会関係者に顔を覚えられ、不利な判決を出せば報復されると怖かった。身の安全を考え、辞任を申し立てた。悔しくて、残念だ」。女性の1人はこう語ったという。

裁判員声掛け事件

 福岡地裁小倉支部で今年5月、特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系組幹部による殺人未遂事件の初公判の審理を終えた裁判員2人に、傍聴していた幹部の知人2人が「(被告を)よろしく」などと声を掛けた裁判員法違反事件。支部は予定していた判決日を取り消し、裁判員と補充裁判員計8人のうち5人が辞任した。組幹部の裁判について支部は裁判員の除外を決定し、裁判官のみで実刑判決を言い渡した。声掛け事件を受け、最高裁は裁判員の安全確保を徹底するよう全国に通知。ほとんどの地裁・地裁支部が送迎や付き添いなどの対策を始めた。

西日本新聞社

最終更新:9月18日(日)9時38分

西日本新聞