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外国人の旅を応援する1泊3500円の温泉付きゲストハウス

朝日新聞デジタル 9月18日(日)9時10分配信

【ブラボー★NIPPON】

 源泉かけ流しの温泉にいつでも入れて、1泊3500円から。設備も値段も何とも魅力的なゲストハウスが2年前、神奈川県の箱根に誕生した。「海外からやってきた人たちが、もっと日本を旅しやすくなるように」。はじまりは、旅好きの1人の男性のそんな思いだった。
 箱根登山電車の終着駅、強羅駅から歩いて3分ほど。長い上り坂の途中に「HAKONE TENT」(TENT)の看板が見えた。広々とした玄関の奥には、杉の1枚板を使ったバーカウンターや小上がり風のコーナーがあり、宿泊客が朝食をとったりしながらくつろいでいる。「ここはもともと旅館だった建物。廃業して空き家になっていたものを、半年かけて仲間と改装しました」と、オーナーの本庄深さんが説明してくれた。
 海外旅行や国内をバイクで旅することが好きな本庄さんは、自らも旅人をもてなす宿を始めたいと、脱サラしてまずは鎌倉のゲストハウスで働き始めた。その際、外国人のバックパッカーから「箱根に行きたいけれど安く泊まれる宿がない」という声をたびたび聞き、箱根にゲストハウスを作ろうと決意。「賃貸で改装可、温泉付き、ある程度の広さがある」という条件で物件探しを始めた。  
 最初はインターネットで探していたが、条件を満たすものはなかなか見つからない。直接行ってみるしかないと、箱根をバイクで走っていたときに出会ったのが今の建物だった。開業資金の一部はクラウドファンディングを活用。仲間たちとともに壁を塗り、タイルを張って、2014年8月にゲストハウス「HAKONE TENT」が完成した。宿泊客が集まる1階のパブリックスペースは、「木と異素材を組み合わせた空間づくりがうまい」とほれ込んだデザイナーの東野唯史さんにデザインを依頼。古い建物の温かみと現代的なセンスが融合した、リノベーションならではの味わいを持つ空間ができあがった。カウンターは夜になると、手作りのピザやお酒を提供するバーに変身。コンクリートでしつらえたステージ風の一角ではライブなども行われる。
 客室は元々の和室を生かし、ふとんを並べて寝るスタイル。日本らしい体験を求める外国人に好評だ。そして、地下にあるのがTENT自慢の温泉。「バイク乗りにとって、道中で冷えた体を温められる温泉は旅の大きな目的の一つ。宿について、温泉に入って、お酒を飲んで寝る。そんなオールインワンの場所が理想だったんです」と本庄さん。

【写真】温泉に入り、畳にふとんを敷いて寝る――。そんな日本ならでは、 くつろぎのゲストハウスの様子

 現在は宿泊客の7割が外国人で、欧米のバックパッカーからアジアの大家族まで客層は幅広い。フランスから来ていた2連泊中の女性2人組にTENTの印象を聞くと、「伝統的できれいで、雰囲気がとてもすてき。スタッフもみんな英語が上手で対応がいいわ」と好評。最近はリピーターや、友達に紹介されて来る人も増えてきたという。
 理想とする宿の一つの形が実現できていると話す本庄さんだが、さらなるアイデアも温めている。「建物の構造上、ここでは6歳以下の子どもの宿泊は受け入れていないんです。いずれは小さな子ども連れの家族で泊まれるゲストハウスもつくりたいですね」

(文・写真 谷口絵美 / 朝日新聞デジタル「&M」)

朝日新聞社

最終更新:9月18日(日)9時10分

朝日新聞デジタル