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領収書不正の温床に 富山市議会政活費問題 

北日本新聞 9月18日(日)0時48分配信

 富山市議会で政務活動費の不正が次々と発覚している。責任を取って辞職したり、辞意表明したりした市議は20日間ほどで2会派8人に上る。自ら不正を認めたすべての事例に共通するのが、領収書の偽造だ。白紙の束を親しい業者にもらい、小切手のように使う議員さえいた。一般社会では考えられない不正を生んだ温床を、四つの観点から探ってみた。(地方議会取材班)


■モラル欠如
 政活費は、議員の調査、研究の費用として交付される。富山市議会では3カ月ごとに、各会派に所属議員分がまとめて支払われている。各議員は、活動にかかった費用の領収書を“証拠”として提出、引き換えにお金を受け取っている。

 今回発覚した不正は全てこの証拠を偽造していた。最大会派・自民党の会長も務めた中川勇元市議は、印刷業者の白紙領収書の束を持っていて、自ら金額を書き込んで架空の請求を繰り返した。不正額は2011年度からの5年間で約741万円に上る。

 自民では中川氏らベテランだけでなく、藤井清則氏、吉崎清則氏という当選1期組にも不正があった。民間出身の藤井氏は記者会見で偽造領収書で政活費を水増し請求した理由を問われ「この世界はこういうものかな、と思った。(やり方は先輩に)たぶん教えてもらった」。会派内にモラルハザード(倫理観の欠如)がまん延していたことを示唆した。

■身内審査の限界
 自民以外では民進党系会派・民政クラブでも、不正が発覚した。幹事長の針山常喜氏が領収書の偽造、改ざんを行い、会長の高田一郎氏とともに着服していた。

 資金管理を預かる幹事長と最終責任者の会長が自ら関与した不正で、会派内の審査は形式のみで、チェック機能は全く働かなかった。

 民政クの不正では、資料印刷代の水増し請求が年度末に集中していた。政活費は会派に対して前払いされ、年度末までに使い切れなかった分は、市に返還することになっている。針山氏は記者会見で、「少しでも残したほうがいいと思った」と語った。

 自民でも、ある議員は「年度末が迫ると会派役員から『早く使ってください』と言われる」と明かす。こうした「使い切り意識」が不正の温床になった。
■事務局の甘さ
 議会事務局では職員4人が、各会派から3カ月ごとに出される領収書などをチェックし、使い道を確かめている。市政報告会の領収書は、会場で配った資料を添付しているかなどを点検する。年度末は収支報告書にも目を通す。

 ただ、枚数も全5会派で年間5千枚に上り、細部まで点検するのは難しいと釈明する。さらに、領収書の宛名は長年の慣例で会派名だけ。添付資料で議員を特定できる場合もあるが、誰のものか分からない領収書が数多くあり、事務局も把握していない。

 久世浩事務局長は15日の総務文教委員会で「チェックにも甘いところがあった」「(不正が)起こらないだろうと性善説に立っていた」と釈明。再発防止に向けて、政活費の運用指針を明確化することが欠かせないという。

■低い透明度
」富山市議の収支報告書と領収書を閲覧するには、市役所に出向いて情報公開請求をしなければならない。議会事務局によると、全国の中核市47市のうち、報告書の公開に手続きが必要なのは7市しかない。

 さらに資料を入手するにはコピー代(1枚10円)が必要。例えば2013~14年度の自民会派分の全ての支出伝票と領収書をコピーすると、費用は約5万5千円。一般市民が気軽に支払える額ではない。

 そのため、いつでも閲覧できるインターネット公開を、全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士(55)は「当然必要だ」と強調する。「不正が常態化するなど富山市議会はかなり深刻」と指摘し、政活費の年間使用計画を事前に公開し、有識者や市民がチェックする仕組みも設けるべきだという。

北日本新聞社

最終更新:9月18日(日)0時48分

北日本新聞