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<パラ陸上>亡夫と感じたリオの風 女子マラソンの近藤寛子

毎日新聞 9月19日(月)1時20分配信

 【リオデジャネイロ飯山太郎】リオデジャネイロ・パラリンピック最終日の18日(日本時間18日夜)の女子マラソン(視覚障害)で5位だった近藤寛子(49)=滋賀銀行=は、2年前に競技生活を応援してくれた夫秀彦さん(当時49歳)を亡くした。一時はふさぎ込んだが、夫の「一緒にリオに行きたいな」との言葉を思い出して競技を再開した。天国の夫の後押しを感じながらリオの街を駆け抜けた。

 33歳の時、網膜色素変性症にかかった。右目はストローの穴ほど、左目は針の穴ほどの視野しかない。自宅にこもりがちになったが、2005年に視覚障害者マラソンに出合い、走りながら肌で風を感じることに楽しみを見いだした。元気を取り戻した妻を、秀彦さんは喜んで練習や合宿に送り出した。

 14年9月、秀彦さんは滋賀県栗東市の自宅で脳梗塞(こうそく)で倒れ、世を去った。近藤は外出中で最期に間に合わなかった。最愛の夫を亡くし、写真を見ては涙した。マラソンをやめることも考えていた中、次男に「お父さんのためにも走るべきでは」と言われた。

 秀彦さんは倒れる直前、「家族旅行に行きたいな」と近藤に話しかけた。練習で忙しい近藤が気のない返事をすると、秀彦さんは「それならリオに家族を連れていってほしい」と笑った。次男に諭されて夫の言葉を思い出し、練習を再開した。

 リオ大会代表の最終選考会だった今年2月の別府大分毎日マラソンで、3時間18分5秒の自己ベストをマークして2位となり、代表入りを確実にした。代表内定後、「別大マラソンで向かい風を苦にせず走れたのは、あなたが背中を押してくれたから」と秀彦さんの遺影に報告した。

 そして臨んだリオ。力を振り絞り完走を果たした。

最終更新:9月19日(月)1時20分

毎日新聞