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“王者”セブン-イレブンが合併を必要としないワケ

ITmedia ビジネスオンライン 9月19日(月)8時28分配信

 このところ、大手コンビニが店舗数1位の座を手にするために、“合併&出店争い”がよく話題になっている。中でも、合併に積極的なのはファミリーマート(以下、ファミマ)とローソンだ。

【コンビニ大手の店舗増減数(筆者作成)】

 一方、セブン-イレブン(以下、セブン)については、そういう話はほとんど聞かない。今までも、そしておそらくこれからもないだろう。なぜなら、合併など必要としない確固たる実績があるからだ。

 今やすっかり飽和状態となったコンビニ業界は再編の時代を迎えた。そんな中、セブンが1位であり続ける理由は何なのかを考えてみよう。

●統一した「ファミマ」、ダブルネームブランドの「ローソン」

 セブンについて考える前に、まずは他のコンビニチェーンの動きをおさらいしよう。ファミマはサークルKサンクスとココストア、ローソンはスリーエフとポプラとの資本業務提携を発表、すでに動き始めている。

 興味深いのは、看板を統一するファミマに対し、ローソンは「ローソンスリーエフ」「ローソンポプラ」など、ダブルブランドで展開していることだ。現在でも、ローソンは健康志向に特化した「ナチュラルローソン」や、「バリューローソン」と「SHOP99」を合併した「ローソンストア100」を展開・運営している。

 いままでのコンビニは「全国統一」のイメージが強かった。しかし、ローソンが実施するダブルブランド展開は、既存の各ブランドファンのみならず、オーナーの「おいおい。なんだか知らないが、本部が勝手に身売りなんか決めたら看板が変わっちまうよ」という、フランチャイズチェーンならではの悩みも一部解消することになるだろう。

 今回のケースからも、ローソンが単独ネームに対してこだわり過ぎていないことがよく分かる。今後もダブルネームブランドを継続していくのかどうかは分からないが、ローソンらしい策と言えるだろう。

●合併しなくてもセブンの出店能力が高いワケ

 では、合併・提携話のうわさなどこれっぽちも聞かないセブンの出店能力はどうなのか。

 先日、セブンが2018年に沖縄へ進出し、県内全域で300店規模の出店体制を目指しているという報道があった。

 セブンが2015年10月に初出店した鳥取県の店舗数が2016年7月末時点で10店にとどまっていることを考えると、沖縄の300店という数字がいかに高い目標であるかが分かる。理由の1つに、他県と陸続きである鳥取県と、島である沖縄とでは物流コストが違うということもあるだろう。

 以前の記事、「コンビニが増え続けなければならない本当の理由」でも述べたが、セブンは他のチェーンよりも物流コストを重視している。そのため、出店ペースが他社より遅れることがあっても、計画的な出店を元に物流コストを確立していくのだ。以下のグラフは、コンビニ大手3社の2015年8月から2016年7月までの店舗増減数を表したものだ。

 各社、似たようなタイミングで増減しているが、よく見るとセブンだけは年間で4回の突起がハッキリしている。会社で年4回といえば四半期。3カ月を一区切りに出店数や物流コストなどを綿密に計算し、算出された目標をクリアしているのだろう。

●帳尻合わせの出店ではセブンに勝てない

 それに対し、ファミマとローソンの大きな起伏は2月、つまり年度末である。実は、チェーンを問わず、コンビニの本部には新規店舗の場所を見つける専用の部署がある。推測ではあるが、セブンが四半期ごとに計画的な出店をしているのに対し、他のチェーンは(計画では年4回の区切りをつけているのかもしれないが)年度末に帳尻を合わせていると思われる。このグラフ1つとっても、セブンの出店能力が高いことを示していると言える。

 今では少なくなったと聞くが、筆者がコンビニ本部の社員だったころ、年度末の出店には散々痛い目を見てきた。目標の出店数をクリアするために、店舗物件もオーナー候補も慌てて決める。立地条件や近隣のコンビニ件数などよく調べもしないまま物件を決め、オーナー候補にこびを売るような感じで勧誘を行う。なんとか見つかったとしても、十分に教育が行き届いていないので、閑散期にもかかわらず大量に仕入れてしまう。もちろん売れ残ってしまう。仕方がないのでやけっぱちのセール……といった形で、すべてが後手後手に回っていた。

 “即席オーナー”の中には、コンビニをやる覚悟ができていないままの者もいる。コンビニに限ったことではないが、フランチャイズのオーナーになると、いいときもあればつらいときもある。「月に売り上げは1500万円ほどあって、自分の手取りは○○万円くらいだから、サラリーマン時代よりも多い!」と夢物語のようなことを想像している人が多いので、そうした人に「売り上げはものすごく悪いかもしれませんよ。そんなときはどうしますか?」などとネガティブな話ばかりすると、ケンカに発展するケースもある。

 こちらは別に意地悪でネガティブな話をしているわけではない。店をオープンする前には考えなければいけないことなのだ。最悪なケースを。実際、ある人は店をオープンしたものの、その地域で最低の売り上げでスタートしてしまった。後日、そのオーナーは「あのときの話はこのことを言っていたんだね」と筆者に漏らしていた。

●担当者は責任をとって独立するケースも

 年度末オープンを目指して、準備を進めていたものの

、オーナーが決まらないことも珍しくない。建物は完成しているのに、いつまで経っても開店しない店を見たことがある人もいるだろう。そのまま放置していると、本部は家賃を支払い続けなければいけない。そんな状態が続いていると、やがて上層部の堪忍袋の緒が切れてしまう。

店のオープンを決めた担当者を呼び出して、「どうなっているんだ!?」「いつオープンするんだ!?」と詰め寄ることに。

 最初のころは「はあ……」「来月には必ず」と言っていた担当者も、やがて逃げ場を失ってしまう。そのとき、どんな行動に出るのか。その担当者は責任をとって、自ら独立するケースもあるのだ。

 そんなブラックな職場なので、新規店の担当になりたい社員はほとんどいない。担当を決める会議では、誰もが下を向いて時間が過ぎるのをただひたすら祈っているのだ。「自分が担当になりませんように」「隣に座っている奴がなりますように」と。

 話がややそれてしまった。ファミマはサークルKサンクスと合併したことで、東京都の店舗数が1番になる(※2016年7月末の店舗数でセブンが2426店、ファミマ+サークルKサンクスが2614店からの推定)。それでもセブンに慌てた様子が見られないのは、混戦極まる東京都においても2015年8月から2016年7月までの1年間で103店舗増えているからだ。ちなみにファミマはプラス30店、ローソンはプラス38店だ。

 セブンとファミマ+サークルKサンクスの店舗数(2016年7月末)を見ると、188店の差がある。このまま、出店ペースが今と変わらなければ、数年後にはセブンが東京都のトップに再び返り咲くことになる。

 セブンが他社の合併・提携に目もくれないのは、少々無謀な戦略でも自分たちのドミナント戦略に自信を持ち、それを着実に実行してきた実績にほかならない。

(川乃もりや)

最終更新:9月19日(月)9時21分

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