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<安保法成立1年>米との共同訓練に内容反映、強化へ

毎日新聞 9月19日(月)23時41分配信

 集団的自衛権行使を可能にし、自衛隊の役割を拡大した安全保障関連法の成立から19日で1年となった。政府は今後、米国との共同訓練に安保関連法の内容を反映させ、日米同盟による抑止力の向上につなげる方針だ。だが、新たな任務に対する反対論は根強く、国民への理解をどう深めるかが問われている。

 「(安保関連法は)自衛隊の任務と遂行能力を大きく拡大することを可能にした。米軍とシームレス(切れ目なく)に活動する自衛隊の能力を向上させる」

 米政府の政策決定に影響力を持つワシントンの主要シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で15日、稲田朋美防衛相は安保関連法の意義を強調した。

 安保関連法は、昨年4月に改定された「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)や2013年に成立した特定秘密保護法などと合わせ、平時から有事まで「日米同盟をより深化させる」(河野克俊統合幕僚長)という狙いがある。

 防衛省は約1年間の準備作業を終え、先月24日、安保関連法を反映させた訓練を解禁した。集団的自衛権行使が可能な存立危機事態や、後方支援の地理的制約を撤廃した重要影響事態などの想定が可能となり、10月以降の日米共同演習から取り入れられそうだ。

 政府は安保関連法が必要な理由として「抑止力の向上」を訴えてきたが、今年に入り、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射、中国の沖縄県・尖閣諸島周辺での活動はエスカレートしている。抑止力に対する懐疑的な見方もあるが、安倍晋三首相は12日、防衛省で自衛隊幹部を前に訓示し、「制度は整った。必要なのは新しい防衛省・自衛隊による実行だ」と強調した。

 一方で、重要な協力項目が進んでいない現状もある。日米間の後方支援の拡大に必要な物品役務相互提供協定(ACSA)の改定は、通常国会での審議日程が確保できないとして臨時国会へ先送りになった。平時の米艦防護を巡っては、どのような要件下で自衛隊が米軍を防護できるかについての調整が必要で訓練解禁に至っていない。与党関係者は「1年たっても始まらなければ、米側の期待も下がるだろう。作業を急ぐべきだ」と指摘している。

 自衛隊の国際協力活動の拡大も安保関連法の大きな柱の一つだ。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している施設部隊に対し、離れた場所に救援に向かう「駆け付け警護」や、他国軍と拠点を守る「宿営地の共同防護」の任務を付与するかが焦点となっている。政府は11月中旬に派遣する交代部隊に任務付与する方針だが、現地の治安は流動的だ。自衛隊に被害が出れば、政権を揺るがす事態にもなりかねず、派遣直前に最終判断する。

 南スーダンには約350人の施設部隊を半年交代で派遣しており、交代部隊として派遣される陸自第9師団は、今月14日に駆け付け警護などの実動訓練を始めた。駆け付け警護では、自分や管理下に入った人を守るためだけでなく、妨害する相手を排除する武器使用も認められるようになり、新たな武器使用基準への習熟が課題となる。

 また、民間人を誤射したり、本格的な戦闘に発展したりする可能性も指摘される。毎日新聞の今月の世論調査でも、駆け付け警護の実施に反対が48%で、賛成の39%を上回った。

 稲田氏は15日、ワシントンで記者団に「国民のみなさん、特に女性や若い方にしっかり説明することが重要だ」と述べ、安保関連法の広報に力を入れる方針を示した。【村尾哲】

最終更新:9月20日(火)1時3分

毎日新聞