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この文字は何と読むでしょうか? 難病の浦上秀樹さんが2020年に込めた思い

スポーツ報知 9月20日(火)6時4分配信

 ブラジルのリオデジャネイロで開催されていたパラリンピック大会が18日(日本時間19日)、閉会式を迎えた。次回開催となる2020年東京五輪・パラリンピックへ手足の筋力が減退する難病を患いながらも口に筆をくわえて文字を書く「こころ文字」作家の浦上秀樹さん(43)が、新作「東京」を制作しスポーツ報知に寄せた。こころ文字は、漢字の中にひらがなを盛り込み、字にもう一つ意味を持たせたもの。「東京」には、「東」に「なみだの」、「京」に「きせき」という言葉を入れた。浦上さんが、「なみだのきせき」に込めた思いを語った。(江畑 康二郎)

【写真】答えはこちら。浦上さんが解説する「東京」

 リオパラリンピックで、日本勢は金メダルを取ることができませんでした。涙した選手はたくさんいたことでしょう。でも、終わりは始まり。今回出場した選手には、4年後の2020年東京大会でさらなる活躍を期待します。

 東京大会に向けて、「東京」という作品を書きました。「東」の中に「なみだの」、「京」の中に「きせき」というひらがなを書き込んであります。合わせて「なみだのきせき」。分かりますか?

 奇跡は確実に存在すると思います。奇跡は一般的に考えられているほど不思議な出来事ではないように感じます。心の中で何を本気で信じるか。自分はどうなりたいか。人間の可能性は、本人が思っているレベルより、はるかに高いところにあります。パラリンピックでは、そうした奇跡を何度も見せてくれました。

 私は23歳で車イス生活になりました。でも病気になったおかげで、6年前に「こころ文字」に出会うことができた。自分を最大限に表現できる「こころ文字」。筆をくわえている間は楽しくて仕方ありません。毎日書いていても飽き足らない。

 歴史があってこそ今があり、今の積み重ねが未来を作る。今、この瞬間の選択が歴史を作り、未来を動かすのです。流した涙の跡には、何が生まれるのでしょうか。“軌跡”の先につながる“奇跡”を信じたい。「東京」には、そんな思いを込めています。(談)

 浦上さんは、1973年2月9日、埼玉県上尾市で生まれた。21歳だった埼玉工業大3年時に筋肉が減少していく進行性の難病「遠位型(えんいがた)ミオパチー」を発症。手足が動かしづらくなっていったが、大学に通い続け94年に卒業。その後、車いす生活を余儀なくされた。

 2010年、漢字の中にメッセージを入れた文字を書く文字職人・杉浦誠司さん(40)に出会い、「自分も書いてみたいと思った」。首から上の筋肉しか動かせないため、口で筆をくわえた。

 書道用の小筆に、菜箸(さいばし)をテープで付け足して、体と用紙の距離を調整。墨は紙の上に垂れないよう水分の少ないものを使用している。作品を人前で見せられるようになるまで1年かかった。6年間で333点書いた。制作過程は「まず漢字を選びイメージを膨らませる。心に言葉が浮かび上がってきたら、ひらがなで漢字の中にどう入れるか考える」。

 作品によっては、漢字の中にひらがなを探すまでに最長で半年かかる。だが今回の「東京」は、東京五輪、パラリンピックというテーマがあったため、着想に3時間、制作に4時間と「ダントツの速さ」で完成したという。「完成時にひらがなが想像以上にうまく書けた時や、それを見て喜んでいる人の姿を見る時がうれしい」と浦上さん。

 現在、沖縄や長野など全国各地で展示会を精力的に開催。16年前に結婚した利詠(りえ)さん(39)とともに、米ニューヨークでの個展開催を夢見ている。

最終更新:9月24日(土)10時24分

スポーツ報知