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【先駆者・二ノ宮調教師 凱旋門賞見仏録】<上>99年エルコンドルパサー、日本馬初の2着は半年間の総力戦

スポーツ報知 9月20日(火)6時4分配信

 日本の悲願へ、マカヒキ(牡3歳、栗東・友道厩舎)が挑む凱旋門賞(10月2日、仏シャンティイ競馬場)まで2週間を切った。近年は毎年のように日本馬が挑戦し、今年からJRAが馬券を発売(インターネット投票のみ)するなどファンにも身近となった世界制覇の夢は、礎を築いた先人の挑戦から始まった。99年エルコンドルパサー、10年ナカヤマフェスタと2度の2着で日本を沸かせた二ノ宮敬宇調教師(64)。その激闘を「凱旋門賞見仏録」と題し、3回の連載で振り返る。

 1999年4月15日。フランスのシャルル・ド・ゴール空港に黒鹿毛の挑戦者が降り立った。前年のJRA最優秀4歳(現3歳)牡馬に輝いたエルコンドルパサー。日本ダービー馬スペシャルウィーク、有馬記念を制したグラスワンダーなどがいる黄金世代の頂点を日本で極めた名馬は、ただ一頭、海外へ舵(かじ)を切った。凱旋門賞本番が行われる10月3日まで約半年。「前哨戦を使っただけで日本に帰ることになるかもしれない」。異国での長く、厳しい戦いの始まりに、調教師の二ノ宮にはそんな覚悟も浮かんでいた。

 前年にジャパンCを制していたように、海外の一流馬との距離が着実に縮まっていた時代。しかし、世界最高峰の凱旋門賞だけは別だった。86年のシリウスシンボリ(14着)以来、実に13年ぶり4頭目の挑戦。海外初遠征の二ノ宮でなくとも手探りの状況に「当時は余分なこともたくさんしなければと思っていた」と振り返る。たとえば、フランスでカイバに入るのは日本とは異なる黒い燕麦(えんばく)。馬を思い、慣れ親しんだ日本の燕麦を半年分コンテナで日本から輸送した。

 オーナー、渡辺隆の多大な理解のもと実現した遠征は、まさに総力戦だった。用意された調教パートナーは全4頭。日本から連れて行ったハッピーウッドマンと、隆の父、渡辺喜八郎の預託馬のダニッシュフィールド、そして現地ではバルテックスとクレイブルックを購入した。「最終的に、1頭のために4頭とも犠牲になった」。現地ではレーシングマネジャーの多田信尊をはじめ、木村牧場スタッフの進藤浩三(途中から鳴島敏晃)、厩務員の佐々木幸二、根来邦雄らが日々の調教をサポートし、二ノ宮に、獣医師の永田廣、装蹄師・松沼勉は何度も日仏間を往復した。

 5月のイスパーン賞で2着のあと、7月のサンクルー大賞、9月のフォワ賞を連勝。蛯名正義を背に果敢に逃げた凱旋門賞は直線で後続を突き放し、ゴール前は迫るフランスのモンジューと一騎打ち。最後まで差し返そうとする勝負根性に、日本のファンはテレビの前で絶叫し、現地からは大きな称賛が寄せられた。「“チームエルコンドルパサー”で得た経験は本当に大きかった」。その年、一度として日本で走らずとも年度代表馬の座を手にしてから11年後の2010年。二ノ宮はナカヤマフェスタで再び日本馬の悲願に挑戦することになる。その裏にはエルコンドルパサーで築いた現地厩舎の支えがあった。(川上 大志)=敬称略=

 ◆エルコンドルパサー 父キングマンボ、母サドラーズギャル(父サドラーズウェルズ)。95年米国産。美浦・二ノ宮敬宇厩舎から97年11月デビュー。通算成績11戦8勝(うち海外で4戦2勝)。総収得賞金は4億5300万800円(うち海外で7692万2800円)。主な勝ち鞍は98年ニュージーランドT4歳S、NHKマイルC、ジャパンC、99年サンクルー大賞、フォワ賞。02年に腸捻転で急死。生産者兼馬主は渡辺隆氏。

 ◆二ノ宮 敬宇(にのみや・よしたか)1952年9月5日、神奈川県生まれ。64歳。78年に美浦・橋本輝雄厩舎で調教助手に。90年に厩舎開業。JRA通算成績は、6568戦658勝。重賞29勝。G1勝ちは98年NHKマイルC(エルコンドルパサー)、ジャパンC(同)、10年宝塚記念(ナカヤマフェスタ)、12年エリザベス女王杯(レインボーダリア)、14年阪神JF(ショウナンアデラ)、16年皐月賞(ディーマジェスティ)。

20頭目の挑戦 前哨戦のニエル賞を勝ったマカヒキの友道調教師が凱旋門賞への思いを強くしたのが、海外研修中だった99年に現地観戦したサンクルー大賞を快勝したエルコンドルパサーの存在だった。

 [マカヒキ、悲願達成へ20頭目の挑戦]

 「本番は生で見られなかったけど、レースぶりは注目していた。あれ(サンクルー大賞)があったから、海外のレースの中でも、より凱旋門賞に対する意識が強くなったかな」と友道師。マカヒキを担当する大江助手は05年、エルコンドルパサーがかつて拠点としたシャンティイのTクラウト厩舎で3か月間、腕を磨いた。翌年も再び当地に滞在し、ディープインパクトの凱旋門賞を観戦している。

 マカヒキは現在、遠征する日本馬を受け入れている当地の小林智厩舎に滞在して調整を続けている。二ノ宮師がエルコンドルパサーで切り開いた凱旋門賞への道。69年のスピードシンボリから数えて延べ20頭目の挑戦者として悲願達成を目指す。

最終更新:9月25日(日)21時4分

スポーツ報知

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