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「先見力」のある人たちには共通点が! 話題の本の「書評」を基に分析すると…

産経新聞 9月19日(月)10時35分配信

 将来予測ができる力を意味する「先見力」。筑波大の掛谷英紀准教授(メディア工学)は、書籍のカスタマーレビューを使って、先見力のある人とない人ではどんな違いがあるかを分析した。先の見えない時代。これからの時代を生き抜く力をつけるヒントになりそうだ。(平沢裕子)

 NPO法人「言論責任保証協会」代表も務める掛谷准教授は、これまでにも「先見力検定」や「高校生先見力懸賞論文」などを実施、先見力のある人材を見分ける方法について研究してきた。

 今回、書籍のカスタマーレビューを使う方法を思いついたのは、経済評論家、勝間和代氏の著書『お金は銀行に預けるな』(2007年11月)がきっかけだ。

 「預金をやめて投資をしよう」と呼び掛けた同書は出版当初、通信販売サイト、Amazonのカスタマーレビューでたくさんの人が評価の目安である星で5点満点を付けるなど高く評価されていた。しかし、2008年9月に起きたリーマンショック後、「同書の通りに行動して大損した」と、星1点の低評価のレビューが大量に出ることとなった。この現象に、掛谷准教授は「書評が先見力のバロメーターになると考えた」と話す。

 分析対象とした書籍は、『お金は~』と同様に、発売当初の評価は高かったが、後に評価が下がったもので、『1ドル50円時代を生き抜く日本経済』(浜矩子著、発売日=2011年1月)▽『2015年放射能クライシス』(武田邦彦著、2011年10月)▽『知らずに他人を傷つける人たち』(香山リカ著、2007年2月)-など11冊。

 このうち、『2015年放射能クライシス』の内容をかいつまむと、日本政府の方針通りに行動すると、4年後(2015年)も牛乳やコメの放射性セシウム汚染は収束しない▽和牛は食べられなくなっている▽小児甲状腺がんが急増-というものだ。しかし、農林水産省によると、2015年度にセシウムの基準値が超過したのは、野生のイノシシやシカなどごくわずかで、コメについても2015年度の基準値超は0・2%。コメの全袋検査をしている福島県に限れば、基準値超はゼロだった。和牛は全国でセシウムの全頭検査が続けられているが、2013年以降は基準値超はない。小児甲状腺がんについても急増したという報告はない。

 掛谷准教授は「本で議論していることの結論が既に出ているものを選んだ。これらの本の評価が再度上がることはない」とし、11冊の本について当初、高く評価していた人を「先見力なし」、低く評価していた人を「先見力あり」と定義した。

 本のカスタマーレビューから、「なし」を71人、「あり」を72人選び、これらのレビュアーの情報をコンピューターに入力。それぞれの違いを特徴として導き出した。

 その結果、「あり」の人がレビューしている商品は、本が74%(うち洋書が5%)▽DVDが12%▽音楽が8%。一方、「なし」の人は、本が61%(洋書は0%)▽DVDが16%▽音楽が5%。「あり」と「なし」の違いで特徴的だったのは、洋書を読むかどうか-などの点だった。掛谷准教授は「洋書を読む人の方が、より多様な情報源から多角的にものを見られるようになり、その結果、先見力がつくようになったのではないか」と分析する。

 さらに、レビューした本の内訳を見ると、「あり」はフィクションが、「なし」は思想書やビジネス書など大学の先生や評論家の書くものが多かった。これについては「フィクションは肩書では勝負できず、内容が全て。一方、思想書やビジネス書は著者の肩書で商売をしている面がある。とくに『なし』の人がレビューした本の著者は東大卒が多い。肩書に惑わされると本質が見えなくなるのではないか」。

 ネットに限らず、現在の日本では先見性のない議論があふれている。『お金は~』を例に出すまでもなく、先見力がないことで損をしても、誰も損失を補填(ほてん)してくれない。掛谷准教授は「先見力を身に付けることは、だまされて人生を台無しにしないために必要不可欠な要素。多角的に情報を得る、著者の肩書でなく内容で判断するなど、情報を読み解く力を身に付けることが、先見力を磨くことにつながるのではないか」と話している。

最終更新:9月19日(月)10時35分

産経新聞