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世界が「オープンデータ」でイノベーションを競い合う

日刊工業新聞電子版 9月19日(月)17時54分配信

日本もコンテストでアイデア集まる

 「オープンデータ」という言葉をご存知でしょうか。政府や自治体あるいは特定の企業、業界内にとどまっているデータをインターネット上で公開し、すべての人が利用・再掲載できるようにしようという試みで、世界的な潮流となっています。これにより、防災や観光、交通、サービス関連といったアプリケーションソフトの開発を促し、行政の透明化・効率化、利便性の向上、企業活動・経済の活性化につなげる狙いがあります。

 2012年のロンドン五輪・パラリンピックの際にもロンドンの交通局で大々的にオープンデータが採り入れられ、都市の魅力を高めるのに一役買いました。今年のリオデジャネイロ大会でも、公共交通機関などのリアルタイムデータがウェブサイト(data.rio)で公開され、バリアフリーや交通・観光支援などさまざまなアプリの開発につながっているそうです。ちなみに、米国、英国のほか、日本政府もオープンデータ情報を公開しています。

<東京メトロなど公共交通で先行>

 一方、企業の試みとしては、2014年9月に東京メトロが国内の鉄道事業者として初めて実施した事例が有名。民営化10周年記念イベントとしてオープンデータ活用コンテストを開催し、全線で走行中の列車の位置や遅延情報などのデータを外部のソフトウエア開発者が使える形で公開しました。
 
 欧米、アジアからも含め281件もの応募があり、時刻表アプリや遅延予報アプリ、トイレに行くのに途中下車を効率化するアプリ、ベビーカーを押しているお母さんがどの入り口を利用したらいいか分かるアプリ、トンネルの列車からの立体地下風景を楽しめるアプリなど、思いもよらないアイデアに基づく作品が寄せられました。

 オープンデータはこうした公共交通機関での利便性がとくに高いようで、2015年9月には、公共交通事業者や情報通信技術(ICT)関連など30社・団体が結集し、「公共交通オープンデータ協議会」が発足しています。理事会社の東京メトロ、NEC、JR東日本、富士通のほか、全日空、日本航空、東京大学、ソニー、大日本印刷、NTT、日立製作所などが参加し、現在では41社にまで会員が拡大。オブザーバーとして総務省、国土交通省、東京都も名を連ねています。

 「オープン化によって多くのチャレンジが可能になる。データをオープン化してイノベーションを起こそう」。こう強調するのは、公共交通オープンデータ協議会の会長を務め、今やオープンデータの伝道者の顔も持つ東京大学の坂村健教授。同教授によれば、公共交通といった分野だけでなく、企業レベルでもオープンデータの活用法がいろいろありそうです。

<物流分野で優勝賞金200万円のコンテスト>

 その一環として、賞金総額420万円のオープンデータ活用コンテストをこのほど開催したのが、大和ハウスグループで物流システムを手がけるフレームワークス(静岡市駿河区)です。東京メトロに続き、坂村教授が所長を務めるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(東京都品川区)との共催。大和ハウスグループの物流にかかわる生データを利用した、物流や倉庫管理業務に役立つアプリなどが寄せられ、9月12日に結果発表と表彰式が行われました。

 そこで賞金200万円の最優秀賞に輝いたのは、「先輩!秘密の休憩場所を教えてください!」という神奈川県中小企業診断協会所属の中小企業診断士4人によるソフト。新米ドライバー向けに、先輩ドライバーの過去の運行データから、運行ルートでの休憩場所を事前に検索しておけるというものです。

 そのほか、ドライバーに負担の大きい長距離輸送を減らすため、複数拠点からのトラックの到達地点を算出し、同地点でトラックを乗り換えることでゾーン型配送を実現する物流管制センターシステムや、視覚障害者による倉庫内ピッキング作業の移動経路最適化システムなどが入賞しました。

 応募作品についてフレームワークスの秋葉淳一社長は「我々のシステムはどれだけ儲かる、コストダウンできるという視点が中心だったが、今回、ドライバーの休憩場所の情報や視覚障害者支援など、これまで気づかなかった視点を与えてもらった」と評価しています。ただ、「物流は特殊な領域だけにアプリ、研究とも応募がまだまだ少ない」として、来年以降もコンテストを続けていく意向も表明しました。

<「Xプライズ方式」で幅広い知恵を>

 さらに、審査委員長を務めた坂村教授は「ワシントンDCもニューヨークも、賞金ベースでオープンデータアプリを開発しようという方向になっている」と話し、DARPA(米国防高等研究計画局)のグランドチャレンジ、ロボティクスチャレンジのように賞金を出しながら幅広い層からアイデアや技術を募る、「Xプライズ」方式の開発コンテストの有用性にも言及しています。

 オープンであるということは、誰でもそれを使って自由にアイデアを形にできるということ。どうやら、インターネット時代にふさわしいイノベーション創出のあり方が、オープンデータや賞金コンテストに秘められていそうです。

日刊工業新聞デジタル編集部・藤元正

最終更新:9月19日(月)17時54分

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