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宮城県内唯一のワイナリー、自社栽培ブドウで醸造へ

産経新聞 9月20日(火)7時55分配信

 東日本大震災で山元町のワイナリーが被災し、現在県内唯一のワイナリーとなっているのが、仙台市太白区の「仙台秋保(あきう)醸造所」だ。昨年12月に最初のワインを発売し、現在は自社農園で栽培したブドウでの醸造を目指すほか、ワイナリーやブドウ農家などの担い手育成にも力を入れる。社長の毛利親房さん(48)は「ワイン文化を広め、地域と協力することで復興につなげたい」と話している。(上田直輝)

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 秋保地区は、5月の先進7カ国(G7)財務大臣・中央銀行総裁会議の会場となり、“仙台の奥座敷”ともいわれる温泉地だ。

 その秋保にある同醸造所には、約2ヘクタールのブドウ畑が広がり、12品種6500本のブドウの木が栽培されている。そのすぐ横に建つ店舗は、おしゃれなカフェのたたずまいで、ワインの試飲もできる。

 同醸造所は昨年12月、山形県や山梨県産のブドウで作った赤ワイン約6千本、ロゼワイン約2千本を生産。仙台市にある伊達政宗の霊廟(れいびょう)「瑞鳳殿」と宮城の自然をモチーフにデザインしたラベルを貼ったワインは、両方ともすぐに完売した。

 今年3月には、県内産のリンゴで醸造する「シードル」を2種類発売。甘口は南三陸町や亘理町のリンゴを使用し、辛口は仙台市などのリンゴで醸造した。また、ワインの醸造過程で出る「おり」と呼ばれる沈殿物でつけ込んだベーコンなども人気商品だ。

 そして今年は、平成26年4月に栽培を開始したブドウが収穫を迎えた。自社栽培のブドウを使った醸造が、まもなく始まる。

 毛利さんは震災時、仙台にある設計事務所に勤めていた。同事務所は津波で流された女川町の温泉施設「ゆぽっぽ」などの設計を手がけており、調査に訪れた際、変わり果てた町の姿にショックを受けた。

 震災をきっかけに、被災地の漁業関係者や行政、企業、大学など幅広く関わるようになった。そうした中「復興のために食べ物や特産品を応援したい。そのために地元のワインを造ろう」と思い立った。ワイナリーが増えれば、関連する産業が生まれ、雇用創出にもつながる-と考えた。

 旬のカキとワインをセットでPRしようと、自治体に提案したこともある。採用には至らなかったが、あるカキ漁師から「震災後、いいことがなかったがワクワクしたよ」という言葉をかけられ、背中を押された。

 一方、宮城のブドウの生産量は全国でも下から数えて3、4番目。山元町にあったワイナリーは被災し、技術を持った人もほとんどいない状況だった。だが、自ら土地を探し、気候面などに優れた秋保を選び、醸造方法などは、山形のワイナリーで学んだ。「諦めたら後悔する」。この一念でワイナリーの設立にこぎつけた。

 毛利さんは「ワインが新たな産業として、宮城に根付いてくれれば」と話す。県内では年内に山元町で、平成30年には川崎町や大和町でもワイナリーが設立される予定だ。川崎町や名取市、南三陸町でもブドウの栽培が始まった。ワインと各地の郷土料理との組み合わせをPRしようという計画も進んでいる。

 「ワインの一番の楽しみ方は、料理とのマリアージュ(おいしい組み合わせ)。宮城のワインと食べ物で東北全体を盛り上げていきたい」。ブドウ畑を前にした毛利さんが力を込めた。

最終更新:9月20日(火)7時55分

産経新聞